第9話 旅立ち
「ねえ、これからどうするの?」
ここに来て三日目。窓を見ながら庵が突然チュウギに聞いてきた。それもそのはず。二日間雨が降り続き、家から出られない状態だったからだ。雨がやっと止んだ今日、外に出て動けるようになったので、これから何をするのか聞いてみたのだ。大体の予想はついていたが。
「そうだな…ここを出て、まずは玉を持つ仲間を見つける。そしてフセと関わりの強かった国へ行く。」
「やっぱり、旅に出るんだね。」
玉を持つ者は現在四人。他に玉を持つ者を探し、計画に協力してもらわなければならない。
そして、1つ気になった。
「フセと関わりの強かった国…?」
「その国は、と言って、フセととても仲の良かった王族がいる。その王を信用し、計画の鍵となるものを残した。だから行くんだ。」
三人はこれから家を出る支度に取り掛かり、必要最低限の荷物をまとめ、かばんに詰めた。
庵はここに来た時と同じ服装に赤マントを羽織った格好になった。そして、信乃からとあるものを渡された。それは剣専用のベルトだった。
「流石にずっと持ち歩くのは大変かと思って、作ってみたんだ。」
さっそく剣にベルトを付け、肩から腰に斜めに掛け、背負った。
「おーっ!いいじゃん。似合ってるよー!」
「うへへ…ありがとう信乃ちゃん。これ、大切に使うね。」
「そろそろ出るぞ。」
と、チュウギが声を掛けた。
「ああ、忘れ物もないし、アタシは大丈夫。」
「私も。いつでも行けるよ。」
そう答えると、三人はさっと玄関に向かった。そして外に出て、チュウギが家の鍵を閉めた。もう、もしかしたらこの家に戻ってくる事はない。三人はそんな気がした。何故なら、きっと果てしなく長い旅が始まろうとしていたからだ。
「じゃあ…いってきます。」
庵は決意を示すかのように、挨拶をした。
『お早う御座います!情報モーニングです。』
『えーっと速報です。今朝5時30分頃、XX県〇〇市の山に、「子供の手のようなものが埋まっている」という通報があり、警察によって調査された所、女児の遺体が発見されました。そしてその女児は、先日から行方不明となっていた、玉川梓ちゃんだと発覚しました。警察は、同地域にて起こった伏見庵ちゃん殺害と関連性が高くなったとみて、更に調査を進める方針です。』
XX県〇〇市。その日の朝、彼女達が通っていた小学校の教室はどこも静かだった。亡くなった二人に黙祷を全校生徒が捧げていたからだ。
特に二人が在籍していた4年2組の教室は痛々しい空気が流れていた。すんすんとすすり泣く児童もいた。二人の席には一輪の花が刺さった花瓶が置いてあった。
『黙祷をやめて下さい。それでは、先生が来るまで静かに待ちましょう。』
黙祷が終わり、児童達が少しずつ声をあげた。「なんで…なんで…」「え、何があったのあの二人…」と動揺の声が聞こえた一方、「何で伏見が殺された次の日からアイツ、学校来てねーの?」
と庵の隣の席を指しながら男の子が言った。庵の隣は、不思議ちゃん扱いをされていたテイだ。だが、肝心の本人は何処にもいなかった。それを聞いて、二人の男の子が集まって来た。
「おいオメー噂聞いてねぇのか?転校したんだよ。て・ん・こ・う。」
「は~?マジ?アイツ、伏見のストーカーっぽい事してたから、てっきり自殺でもしたんじゃね?って思ってんだけど。」
と、この言葉を聞いた女の子達が反発した。
「何いってんの!?ばっかじゃない!!」
「そんな事言うなアホ小林!!いやバカ林!!」
女の子達は泣きながら、ある者は怒りながら強い口調で言った。
「そんなに言うなクソ女ども!!」
「そーだそーだ!!うるせーぞ!!こいつらの冗談かもしれねーのにムキになるなよ。」
と、他の男の子も口出しをしてきた。お陰で先生が来るまでとんでもない口論になった。