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恒久の巫女   作者: 天哉
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第6話 太陽神ビンヌスゥイ

たす…けて…お願い…

私の視界がだんだんぼやけ、暗くなっていく。

「何だこいつ!まるで潜水艦みてぇじゃん!」

「でもさー、ちょっとやりすぎだよぉ…」

私が口から、鼻からポツポツと泡が出る。

泳げない、からって…酷いよ…このままじゃ…わたし…

「…おり…」

だ、れ?

小さな手が伸びて来た。

「いお…」

聞き覚えのある声…そして、ああ…この娘は見覚えがあったな…確か…

「庵!!」



はっと気が付き目を覚ますと夢を見ていたと分かった。起き上がると真っ白な布団がかけられたベッドに、同じ色をした服を着ていた。しかも布団に着いている髪を見ると綺麗に三つ編みにされ、色はいつの間にか元の黒に戻っていた。床は石で出来たタイルのようなもので、だった。赤い縁の窓には薄暗い背景にいくつも水滴が付いていた。

ここは何処だろうと辺りをキョロキョロ見回していると、ガチャリと音がした。

「あ、おはよ庵ちゃん。」

信乃が部屋に入ってきたが、庵は驚愕した。信乃は出会った時に着ていたケープのようなものを着用しておらず、黒色のインナーのような服を着ていた。お陰で体つきが分かるのだが、その胸元には2つの膨らみがあった。

「しっしし、信乃さんって女性だったんですかあああ!!」

「ああ、そうだ…ってアタシを男だって思ってたの!!?」

二人は驚きのあまり大きな声で叫んだ。庵に関しては叫んだ後、口を魚のようにパクパクさせていた。

「あ、そうだ。庵ちゃんが倒れた後さ、髪色が戻ったりこしたんだけど…それは置いといて。ここに運んだんだけど、まーったく起きないし雨に濡れていたからさ風邪引くと困るから眠っているままお風呂に入れたり着替えさせたりしたんだ。だから、服変わってるでしょ?」

「わわ、有難うございます!」

「例は良いって!アタシ、助けられた身だしさ。その返しと思ってよ。そーだ!かっこ良かったよ!あの時。光ったと思ったら目と髪の色が変わったと思ったらばーって光を放って蜘蛛をやっつけちゃったからさ!」

庵は、やっぱりあれは夢じゃなかったんだ…と実感した。

自分が自分ではないような気がしたのに、本当に自分が言葉を放ち、蜘蛛モドキを滅したのだ。そんな不思議な感覚に陥っているとノックが聞こえた。

「そろそろ入って良いか。」

男性の声だった。

「ああ、ごめんチュウギ!入って入って!」

ガチャリと音を立てドアが開いた。部屋に入ってきたのは背が高く、三白眼が特徴的な男だった。漢服に良く似た黒と青が使われた服を着ていた。

「あ、はじめまして。あの、チュウギさんであってますか?」

庵は真っ先に挨拶をした。そしてチュウギが口を開いた。

「そうだ。俺がチュウギだ。しかしそんな固まった言い方しなくて良いし呼び捨てでも構わない。どうせ俺らは旅をする仲になるからな。」

「あたしにも敬語使わなくってだよ!そんで、チュウギはあたし達の様に日本…アキツシマから来た人間『魂人』ではなくってここの住人、『島人』なんだ。」

ここにも生を持って生まれ育った人がいたんだと思う一方、旅をすると聞いてどういう事か二人に尋ねた。

「すまない、説明してなかった。八宝玉計画の大まかな事は聞いてるな?」

「うん。」

信乃からはこう説明された。

転生したフセの霊力を持つ者とティーダの玉を持つ者で、フセを恨み変異をもたらす者禍国の者を倒す計画。

「フセはもう1つ、死んだ理由が。あるがそれは死ぬことにより一時的にだが襲う目的を無くすためだ。現にフセは恨まれていただろ?」

「成る程!えっと…チュウギ、質問なんだけど…八宝玉計画でさティーダの玉の事なんだけど、八って数字が付くから…玉を持つことが出来るのは八人なの?」

庵は気になっていた事を聞いた。

信乃が庵を助ける際に、玉を取り出した時を思い出しながら。

「そうだ。玉は全部で八つある。玉はフセが込めた霊力を持ち、自分自身で力となる持ち主を決めるんだ。姿形を現して主を待つ玉、姿を現さず、主を見つけたその時に現れる玉もある。」

そうなんだ。と納得した。もしかしたらこの説明からすると 、信乃以外にも玉の持ち主がいるかもしれないと思い、チュウギに話してみると、こう答えが帰って来た。

「そうだ。現に俺も玉の主だからな。」

そう言うと、羽織っていたものの懐辺りから玉を取り出した。信乃のオレンジ色をした玉とは違い、透き通った青い色をしていた。

「玉の主は今のところ、あたしと言ってた三人組…じゃなくって従者の一部…ああっとそれとチュウギだよ。」

信乃も自分の玉を腰に着けていた巾着から取り出した。色は違ったが、どちらも中央に太陽を型どったものが描かれていた。

「綺麗…でも、太陽?」

「ここには太陽の神が最高神、生命力を与える存在として祀られている。巫女は霊力で神から力や言葉をもらえる存在だ。フセの霊力を持つその玉を介して神の世界…オボツカグラから俺らに力を与えてもらうシステムになっている。」

そう言うとチュウギは手に持っていた巻物の1つを広げた。そこには赤、オレンジ、黄色、緑、青、紫、紅色の翼を持ち白い光を纏う鳳凰のような鳥が描かれていた。

「これが…神様?」

「そうだ。これが太陽神ビンヌスゥイだ。」

こんなに美しく、気高いオーラを放つ神様だったんだ。と、庵はとても感心した。

「凄い神様なんだ…フセもそうだけど、私達は何かとっても偉い人達から力を貰っているんだ。この力があればその禍国の人を倒せるかも」

と、言い掛けたが「それは違う」とチュウギに遮られた。

「庵、違うんだ。」

そしてゆっくりチュウギが語り始めた。

「禍国の奴がどうしてフセを恨んでいるのか…計画の裏の顔を話さなければならない。だがな庵、少し気分の悪い話になるかもしれんが良いか?」



しん…と急に部屋が静かになった。信乃さんの方はとても神妙な顔をしていた。チュウギの方は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

私がフセの力を持って、それが目覚めたからこそ絶対に知らなければいけない事だって直ぐにわかった。真実を知るのは少し怖い…けれども、これを知った私だからこそ出来る事があるんだ。そう思ったら体の底がふつふつと沸いた。もう待っているだけの自分、本当を知らない自分じゃいられない…いちゃいけないんだ。

「…良いよ。私に聞かせて!その歴史、計画の事を!!私がフセの力を持って生まれて来たのにもきっと意味がある事だってのも納得出来るかもしれないから。」

私はチュウギと信乃さんの目を真っ直ぐ見た。これを知って、私にどんな事が起きようとも、私には頼もしい人がついているから、きっと大丈夫と心の底から想いながら。


私が死ぬ前にアズから言われた事を思い出した。「酷い目に遭うかもしれない。だから少しは人の行動や言葉に気を付けて欲しい」

アズが私を必要…大切だから言ってくれた言葉。

ここには私を必要としている人がいる、私は必要な人たちだからこそ周りの目や言葉を気を付けて酷い目に遭わない、遭わさせない。この人たちや、私自身を守れるように。必要とされてるからこそ自分も強くなるんだ。

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