表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恒久の巫女   作者: 天哉
1/34

第1話 巫女へ贈る彼の地の歌











巫女は異界の地、ひとつの島に国々をつくった。

だが、それは大きな大きな誤算だった














柔らかな日差しが、部屋の窓から降り注ぐ五月。少女・伏見庵はお気に入りの髪飾りである真紅に染まった組紐を手に取り、長い黒髪をひとつに結い上げた。紐には両端に青い玉が付いている。庵はその二色が織り成す色合いが大好きだ。

庵はランドセルを背負って玄関に行き、靴を履いて学校へ行こうとした。

「庵、ちょっと良いかな?」

母が声を掛けて来た。

「うん、なぁに?」

「それがね、お姉ちゃんがお弁当忘れて行っちゃって。まだ間に合うと思うから届けてくれる?」

「うん。分かった!じゃあいってきます。」

お弁当を受け取り、ドアを開いて朝の街へ出た。

「お姉ちゃーん!」

数分後、庵は姉に追い付いた。声を掛けられた姉が振り向いた。庵が手に持っていた物を見て、自分が忘れ物をした事に気が付いた。

「あっ!庵、私の届けに来てくれたの?ありがと。」

「うん。忘れ物、気を付けてね。」

「分かった分かった。じゃ、庵も遅れないで学校行なよー。」

そう言い残すと姉は通っている中学の方向へ駆けていった。庵は遠ざかって行く姉の背を見つめていた。すると、とんとんっと誰かが肩を叩いて来た。振り向くと、そこには幼なじみであり、クラスメートの玉川梓が立っていた。

「おはよ、庵。久しぶりだね!」

ゴールデンウィーク明けの木曜日。二人は久々に顔を合わせた。

「あっおはよーアズ!そう言えば旅行、楽しかった?」

「うん。とっても。そうそうお土産があるから学校に行ったらあげるね!」

「えっ?本当に!ありがとう。」

二人はそんな日常の会話をしながら小学校へ向かった。

小学校に入ると、早速児童達が「おはよう」「元気だった?」「眠い…」など声を掛け合ったている様子が目に入った。庵と梓は玄関へ行き、靴を脱いで上履きを履いた。

「そうだ庵、あんたクラスで変な噂が立ってる事知ってる?」

唐突に梓が言ってきた。しかし、庵はその噂と言うのは何なのか全く知らなかった。

「え、誰の?もしかして私達のクラスからカップル誕生した!とか?それか、学校の怪談は本当にあった!とか…」

「…庵、まさか本当に知らない…と、言うか分からないの?カップルならその前に誰々が凄い仲良いって話が出るでしょ。後、学校の怪談って…」

庵は学校生活の中でありそうなイベントを頭に思い浮かべていたが、梓の表情を見て自分が思い付いたものではない。むしろ、これは絶対に庵に関係する噂だと察した。梓によると内容はこういう物だった。「テイが庵のストーカーをしている」

テイとは庵達が四年生へ進級すると同時に編入してきた少女だ。テイは常に冷静沈着で何を考えているか分からない子だ。おまけに、毎日着けている小さなウエストポーチに何か話し掛けている。それでクラスの中でも、ド級天然の庵と「トップ・オブ・ファンシー女」という謎の王座を張り合えるのではないかと言われる位の不思議ちゃんである。そんなテイが庵の後を、こっそり追いかけているのを目撃した人が何人かいると言うのである。移動教室では庵の後をつけたり、図書室に行こうとした時も後をついていったり、はたまたトイレに行く時にもついていったのを目撃した人が何人かいたらしい。それらを踏まえて「テイは庵のストーカー説」が誕生したのだった。

「だからちょっとは気を付けなさいよー。」

「えぇ…そんな…別にテイちゃんは私に直接悪さとかしてきてないし大丈夫だと思うけど。それに話したりした事ないから…」

「庵、そこなの!!人を盲信し過ぎなのよ。しかも何考えてるか分からない子なのよ!?庵が何をされるかたまったもんじゃないわ!」

梓は突っ込み気味に、そして保護者のような言い回しと態度をとった。

プレートに「4-2」と書かれた教室へ入った。そこにはいつも通りわいわいガヤガヤと賑やかな光景が広がっていた。庵は早速窓際の自分の席に行った。後ろの席に目を移すと、テイが座っていた。テイはいつも通り鋭い目をし、今日は校庭を見つめていた。

「あ…おはよう!テイちゃん。」

庵は挨拶をした。実はゴールデンウィークに入る前に席替えをして、庵とテイの席が近くなっていたのだ。庵はテイとはほとんど話すことは無かった。なのでほぼ初対面のような挨拶をした。するとぼそっとテイが呟いた。

「…フセ」

「えっ?今何て言ったの?」

呟いた言葉は、庵には何を言ったか分からなかった。すると、テイが口を開いた。

「…いや。何か伏見庵、君が私の知り合いに似てたからついその名が出ただけだ。」

と、何処か誤魔化すような解答をした。

「庵ーちょっと来て!さっき言ってたお土産渡すから。」

「うん、分かった。じゃあまた後でね、テイちゃん。」

そう言うと庵は梓の席へ向かった。テイは庵を目で追いかけた後、また校庭を眺め、ポーチを優しく撫でた。

登場人物のデザインはpixivにて公開&更新中

1 庵

https://www.pixiv.net/artworks/103195343

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ