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02 王都って綺麗だな

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「で、オリビア、第一王子とか王族、伯爵家の家族に復讐とかしたい? したいなら簡単だよ。彼らを物理的にひねりつぶすのは簡単だけどー-」


「ううん。そんなことはしたくない。そんなことしたって私の居場所ができるわけじゃないから」



 精霊さんはピカピカと優しく光って私の意見に同意してくれたみたい。良かった、精霊さんとは気が合う。



「そうだよね。だったら、外見をちょっと変えてオリビアだと分からなくして平民として暮らすことにする? 生活するだけなら何とでもなると思うんだよね。それともだーれも人の住んでない山奥か森の中で一人暮らしもできると思うよ」


「うーん。あんまり人がいないのも寂しいかも。できれば王都か大きな街の平民として暮らしたいけど、できる? たぶんあと5年位しか生きていけないから少しの間だけでいいのよ……」


「ああ、『治癒』で命を代償にしたんだね。そのことだったら大丈夫、光の精霊である僕の力で何とかなるはず。光の精霊は生命と精神を司るんだ。ちょっと待ってね……」



 あら。そうだったっけ。光の精霊は「癒し」と関係が有るからそうなのかな?



「はい! いまオリビアの生命力を操作して命の欠損、縮まってた寿命を元に戻しました。あと、寿命を対価に治癒を行う欠陥スキルを削除して魔力を対価に治癒を行える本物の『治癒』を加護として与えましょう。はい。できた」



 そんなことできるの! 確認を……私は慎重に「治癒」をごく弱い力で自分自身に掛けてみる。



 ああ、私の命の欠損が無くなってる。それに「治癒」を使っても命が削れた感じがない!



「ありがとう精霊さん……! 私、生まれ変わったみたい。ああ、これで人生をやり直せる!」



 私は光の塊の前に跪いて感謝を捧げた。




 五分くらい感謝を捧げ続けていると精霊さんからお言葉が。



「オリビア、感謝は十分に受け取ったからもう大丈夫。次は君の外見を変えようか。髪色と目の色、何色が好き?」


「精霊さんは何色が好きなの? 精霊さんの好きな色にしてほしい。精霊さんに好かれたいし、大好きだから!」



 私はニッコリと微笑んで問いかける。



「ふふふ! じゃあ、僕の好みで、髪は黒、目はブルーグレー。んで、髪の長さは肩口までのショートにしようか。この世界の常識だと貴族は背中や腰まで伸びる長髪が普通だけど平民は短いから丁度いいよね? ではさっそく。そーれっ!」



 精霊さんは私の目の前に全身姿見を作り出した。どうやって作っているのか見当もつかないけどその鏡は歪みなく汚れなくまるで私がもう一人そこに座っているように見えた。


 髪の毛と目の色が変わって髪の長さが短くなっただけで印象がガラリと変わる。これならぱっと見私だとは分からないんじゃないと思う。


 私の隣には精霊さんが宙に浮きながらピカピカと光っている。



「ねえ、精霊さん。精霊さんってお名前があるの?」


「名前か……僕には名前はないんだ。けど精霊さんって呼ばれるのは周りに人が居たりすると困るかもね。どーしようかな。じゃあ僕のことはアリスって呼んでくれる?」


「アリスね、分かった! アリス、これからどうするの?」


「そうだね。まずは地下牢から出よう。 オリビア、危ないからドアから離れてくれる? そうそう」



 アリスがその輝きを急激に増したかと思うと「ドン!」という低い音とともにドアが消滅した。



「……アリスすごいね。ドアが消えたというか、壁ごと消えてしまったんだけど。これはどんな魔法なの?」


「これはドアや壁をこの世界から消し飛ばしたー-消滅させる、そういう魔法だよ。これを使えばだいたいの敵は消し飛ばせるよ」


「アリスは強いって言ってたけどほんとなんだね」


「ふふ。そうだよ、僕は強いんだ。安心して頼っていいからね」



 私はアリスの後に続いてドアのあった場所を潜り抜けて廊下に出た。廊下には誰も居ないので地上へと続く階段を上っていく。登りきったところにドアがあったけどアリスがさっきの魔法で消滅させた。



 建物の外に出ると、そこは王城の一角。私は来たことないから初めて見るけどお城の北側にある中庭だった。地下牢に連れてこられたときは夜だったし動転してたから良くわかってなかった。

 時刻はよくわからないけど夜であることは間違いない。月明りでそれなりに明るい。脱獄して逃走するには条件は悪いような気がする。



「オリビア、こっから北のほうにあんまり人が入り込まない森があるからほとぼりが冷めるまで潜伏しよう。森までは飛んでいくからあっという間だよ」



アリスがそう言うと私の身体が空中にゆっくりと浮遊して上昇しだした!



「エッ アリス、大丈夫なの?!」


「大丈夫大丈夫、全部僕に任せて楽にしてればいいよ」



 私はぐんぐんと上昇していき王城はあっという間に眼下に小さくなっていく。




 上空から見る王都は月明りに照らされて神秘的な美しさがあった。都市城壁の外は耕作地、ところどころ森林となっている。


 王都は周囲を巨大な外壁で囲まれていて外敵からの侵入、攻撃を防いでいる。この王都は端から端まで歩けば一刻ほどはかかると思う。この外壁の中だけで10万人ほどの人が暮らしている大都市なんだ。




 私がジッと眼下の王都を見続けているとアリスが声をかけてくれた。



「オリビア、どうしたの?」


「うん。王都ってきれいだなって思って見てた」


「そうだね、綺麗だね。この世界は綺麗なものがいっぱいあるから僕も大好きだよ」


「うん。ほんとキレイ。伯爵家の家族や王族はあんなに意地悪で嫌な人たちなのに……」




 私たちはしばらくの間王都を上空から見下ろしてから北の森へと移動を開始した。









 王都の地下牢から脱出した後。私たちは王都北方の森に身を隠した。森に着いたときはこんなところで野宿するの大変だなーって思って覚悟してたけど。


 アリスは森の中にぽっかりと開けた草地に到着すると何もない中空に丸い窓を開けた。その丸い窓の中を覗くと結構明るくて広い空間が広がっている。なんて不思議な! そして私にこの窓から中に入れという。

 アリスが言うには、この窓は「精霊の世界」への入口なんだって。「精霊の世界」はこの世の中から切り離されていてどんな外敵も侵入できない安全な世界なんだって! すごい!


「精霊の世界」に入ると何もない平坦な世界だった。底が平坦な巨大なシャボン玉の中いるみたい。

さて、ここでどうするのかと思っていたらアリスが「オリビアが寝る場所を作るね」ってベッドを作ってくれた! なんの材料もないのに虚空から出現したんだけどアリスの能力だっていうからそんなものだと思うようにした。

 だって、ベッド以外にも水はおろか、食べ物だってアリスは作り出してくれた。こんな能力があるんだったら一生この精霊の世界に閉じこもって生活できるんじゃないかな。


 翌朝起きると、黒髪でブルーグレーの青年が隣のベッドで寝ていた。このことは昨晩の内にアリスから聞いていた。光の塊の精霊の姿だと退屈だから人間の体を作るけど、オリビアそっくりの男性にしておけば兄と妹って設定で便利だと思うからって言われていたんだ。




 その後三カ月の間は精霊の世界の自宅を住みやすいように整えたり、この北の森のぽっかりと開いた草地を綺麗に草刈して外柵を作り、小さい家を建てた。全部アリスの能力を使って。


 精霊の世界のなかの住居が充実して生活が安定してきたころ。北の森の家の庭にあるベリーを収穫してそれを摘まみながら四阿でお茶を飲んでいる時にアリスに聞いてみた。


 ちなみに、庭の柵も四阿もアリスが能力で作り出した。柵の内側はベリー園や果樹園、そして広い芝生と庭を散歩するための舗装遊歩道があちこちに伸びていて王宮や上級貴族の庭園顔負けの洗練された美しい空間になっている。アリスの好みらしい。自然のままの森よりも管理された庭園が好きなんだって




「アリスって、どうして私を助けてくれたの? なにか目的とかあるのかな? やりたいこととか?」


「オリビアを助けたのはオリビアを気に入ったからだよ。僕もオリビアとこうやって暮らすのは居心地がいいしお互い様さ。オリビア、一緒にいてくれてありがとう」



 なんとなくわかってたけど、アリスが私にかなり好意を持ってくれている。心がほっこりと暖かくなって幸せな気持ちになってくる。私って凄く幸せだ。



「目的とか、やりたいことはこの世界で穏やかに、楽しく過ごすこと。たまには人の街に繰り出して買い物とか、お食事とかしたり、旅行してもいいかな?」


「ふふ、アリス兄さん、ありがとう。私を妹にしてくれて。私も凄く幸せなんだ」






♢♢♢♢♢






「オリビア、そろそろ出発しようか」


「はーい、ちょっと待ってね、よし準備出来た!」



 私は髪の毛を綺麗にブラッシングして身なりを整え終わると黒髪でブルーグレー瞳をした青年に向かって返事をした。



「お兄ちゃん、お待たせ!」



 私は王都北方にある森の中にある住居から出ると黒い石板を取り出して住居の入り口を閉鎖した。

 今日は二人でこの北の森から一番近い街に行く。



 私たち二人はふわりと空中に浮きあがると森の木々のはるか上空に上昇して街の方向に移動を開始した。私が空を飛べるのは空を飛ぶことができる魔法を恩恵として与えてもらったから。もちろんアリスからだよ。



「……オリビア様、オリビア様、道中の安全は我らにお任せを。我ら、どの様な敵がいたとしてもオリビア様とアリス様をまもってみせますぞ!」



 横をみると私たちに並走するように飛んでいる二羽の白い鳥が話しかけてきた。



「あら。あなたたち来てくれているんだね、ありがとう。よろしくね!」



 この白い鳥はアリスがそこらに居たカラスを眷属にして色を白く変えて恩恵を与えた連中でソコソコ強いらしい。普段は庭の周囲で家の警備をしてもらってるけど私たちが街に行くにあたってついてきてくれるみたい。

 アリスが言うには「コイツ等はいくらでも替えが利くし便利に使いつぶせるのが良いところだ」なんて冷たいこと言うもんだから私が優しく扱ってあげることにしている。この子達は私が優しいことが分かっているから懐いているんだと思う。




 街の傍まで来たところで地面に降りると街へと続く街道を二人して歩き出した。白い鳥たちはつかず離れず私たちの周りを飛び回っている。アリスが「お前たち、姿を隠しなさい」と指示すればスウッと姿を消していった。認識阻害の魔法だって。鳥なのにすごーい。



 街道を進むと街の外壁が見えてきた。街への入り口には門番の兵士が。門を通る時はジロリと見られたけど特に呼び止められたりはしなかった。私たちみたいな歩いてくる旅行者や歩行者からは通行税を取らないけど荷馬車や荷車からは積み荷に応じて通行税を取ることになっている。



 私たちは町に入ると商業ギルドを目指した。目的はお金を稼ぐため。少しはお金がないと街で買い物もお食事もできないから。

 アリスと色々と話し合った結果、簡単にお金を稼ぐならアリスが能力で作り出す品物を販売するのが早かろう、となった。今日持ってきたのは陶器製のコップとガラス製のコップ、ガラス製の容器に入った砂糖と塩。

 いちおう、サンプルなのでそれぞれ4つづつ、大きめのリュックに収納してアリスが背負ってきている。


 商業ギルドでサンプルを見せて、これを買い取ってくれる商人を紹介してほしいといえば二店舗紹介してくれた。



 商人の店舗の場所を教えてもらったのでそのうちの近い方エスコフィエ商会に行ってみる。この商会は王都に本店があって各領都に手広く支店を持っている大商会だ。私も令嬢時代は何回かお世話になったことはある。お母様がまだ健在だった時だけど。



「こんにちは~商業ギルドからの紹介で来ました。商品の買い取りのご相談なんですけど、ご担当の方はいらっしゃいますか?」








読んでいただきありがとうございます。

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