第一部 第九章 霧の中
その子供のドラゴンは俺達を見つけると、俺達の周りに炎をまき散らした。
「ちょっと! 」
「ヤバイ、下流の森が燃えている」
由宇と雄二が叫ぶ。
その時、俺達が揺れた。
ズシン、ズシンと足音がする。
「な、何だこれ? 」
俺が展開についていけない。
「あ、あそこっ! 」
三柱鳥居の背後に二十メートル近い黒いものが現れる。
「なんじゃ、こりゃあああああ? 」
「まあ、親かな」
「そうだよね」
雄二と由宇が冷静に答える。
とりあえず、慌てて、俺達は荷物をまとめ始めた。
すでに対岸と下流は火事になっている。
マジな話、一旦、三柱鳥居の中に飛び込むしかない。
「行く場所が一つしかない」
「仕方なかろう」
俺と雄二が片づけながら言いあう。
残念ながら、俺の一人用テントは諦めるしかなさそうだ。
ポールとか解体している暇がない。
「な、ブルーシート最強だろ? 」
鉈で縛ったヒモを切りながら雄二が笑う。
「やかましいわぁぁぁ! 」
俺が叫びながら、その場を離れて、山に突入した。
その寸前ででかいドラゴンの火炎攻撃で河原が炎上して石が真っ赤になってる。
やべぇ、あれを食らったら助からん。
全力で、山の中で草などに絡まれながら走った。
で、気が付いた。
あのドラゴンは三柱鳥居の内側には攻撃してこない。
何か理由があるのか?
「こっち側は攻撃したら駄目なのかな? 」
雄二も気が付いたらしくて俺に聞いてきた。
「いや、知らんけど、それっぽいな」
走りながら、おれが答えた。
「あーあー、でも入っちゃったよ。入らずの山」
「仕方ないでしょ」
俺の愚痴を由宇が諫める。
「やばい山なのは分かるな」
雄二があたりを見回した。
すでに夏なのに闇夜に霧が立ち込めてあたりが見えなくなってきた。
それと同時に異様な湿気だ。
本当に日本なのか?
「ゲッゲッゲッ」
「キキキキキキキキキ」
異様な動物の叫び声が霧の向こうから聞こえる。
やばいのは分かるが、あのドラゴンのがやばいので走るしかない。
最悪だ。
ちょっとした広場に出て、雄二が地面に耳をつけた。
「もう、大丈夫じゃ無いか? 」
「うん、追っかけてきてないね」
雄二が呟くと由宇がその場にへたり込んだ。
俺もとりあえず、座り込む。
流石に疲れた。
「とりあえず、どうする? 」
「火を焚いて動物を寄せないようにするしかないね」
由宇が答えたので、そうすることにした。
とりあえず、基本ではあるし。