第一部 第八章 異変
そうして、由宇は鳩の羽根をむしると軽く産毛を焚火で焼いて、捌いていく。
確かに手慣れてるわ。
これもまた串打ちして塩コショウして焼き始めた。
「本当は熟成させた方が美味しいんだけどね。夏だから痩せてるしな」
由宇がブツブツ言う。
素直にスーパーで肉買ってバーベキューしたかったよ、俺は。
こんなのキャンプじゃ無くてサバイバルじゃん。
「ふむ、身が美味しい」
すでに雄二は焼けたヤマメを食べていた。
「待て待て、飯はまだ出来てないぞ! 」
コッヘルで火にくべたばかりだ。
「まあ、味見だから」
雄二が言うと、由宇も食べだす。
「やっぱり、自然の中で食べると美味しいね」
由宇が笑った。
「いやいや、おかずが無くなるだろうに」
俺が必死だ。
キジバトもドンドン焼き始める。
ご飯だけで食べる気なのだろうか。
「勘弁しろよ。白飯だけで食えないよ」
「マヨネーズつけたら良いじゃん」
雄二が特大のマヨネーズを出して来た。
「うおおおおい。何で、キャンプで貧乏飯を食うんだよ」
「でも、自然の中で食べてるから美味しいよ」
由宇が笑った。
「マヨネーズは正義だぞ」
マヨラーの雄二が胸を張る。
「全然変わんねぇな」
俺も流石に苦笑した。
真っ暗な山の中で久しぶりに皆で笑った。
何だかんだ言って、この三人でずっと遊んできたんだ。
半年ほど大学で離れてたので、懐かしくもあった。
「キィィィィィィィィィィィッ! 」
何か鋭い叫び声が山の三柱鳥居の方から聞こえた。
「は? 」
俺が聞いたこと無い叫び声に驚いた。
「ああ、三柱鳥居の下にかけたくくり罠に何かかかったのかもしれない」
由宇がズボンの埃を手で払いながら立ち上がった。
勿論、山に入るのでスカートなんて履いてない。
「え? そんなとこに仕掛けたのか? 」
俺が呆れて呟いた。
「三柱鳥居の下の方だから別に問題ないでしょ」
由宇が笑う。
が、その時、対岸に叫び声のするところから炎が吐き散らされた。
「「「は? 」」」
俺達が唖然として、それを見る。
川の向こう側の林が燃えている。
何だ、これ?
それと同時にバタバタと羽ばたく音がした。
三柱鳥居の方を見ると、信じがたいものがくくり罠に足を取られながら飛んでいる。
「あ、あれ? 」
「嘘、ドラゴン? 」
雄二と由宇が絶句した。
そこに1メートルも無い子供のドラゴンが居た。
俺達は信じられない顔でそれを眺めていた。