第一部 第六章 ガッチン漁法
仕方なしで場所を決めてテントを張りだした。
俺のは軽量ジュラルミンのポールで出来たコンパクト型のドームテントだ。
簡単にセッティング出来て、コンパクトにたためる。
で、やはりと思ったが、ブルーシートで雄二は由宇の分と二つ、近くの張りだした木を使って、真ん中を木にくくり、屋根のようにして四隅をペグで止めた。
ペグだけは持ってきてたらしい。
「やはり、これか」
「そう、<バシャ>」
<バシャ>とは軍で使う簡易テント代わりのものだ。ポールとかいらないし、寒いときは地面につけてるシート側にに落ち葉とか土を乗せることで風は入って来なくなる。
この中でマットを敷いて寝袋で寝る。
まあ、前後ろは開いてるけど、それはそれで風情があるのかもしれない。
「<バシャ>はもっと材質の良いシートを使うと思うけど……」
「いやいや、ブルーシートは台風で瓦が飛んだ屋根でも代替えで使われるくらい丈夫なんだぞ。ちゃんと日本製を買って来たし」
そうなのだ。
実はブルーシートなんてと思われがちだか、日本製と外国製では値段だけでなく耐久性が違う。
日本製だと屋根の代わりにしても一年以上持ったりする。
こういう所は流石だな。
キャンプと言う視点では絶対に褒めたくないけど。
「あれ? 私が着替えしたら見えちゃうじゃん」
「「今更」」
俺と雄二が由宇に冷ややかに答える。
もう、身内扱い何で、とても女性には見えないわけだ。
マジな話。
良くある馴染みと恋愛とか、もっと互いに距離がある幼馴染とかでないと恋愛は無理なのでは無いか?
そう思ったりする。
俺に妹はいるけど、妹との恋愛とか妹がいない奴の幻想だとマジで思う。
「とりあえず、着替えるときは、こっちのテント貸してよ」
由宇が口をとがらせて俺に頼む。
「まあ、そりゃいいよ」
俺が答えた。
「とりあえず、罠を仕掛けて来るね」
由宇が笑顔で答える。
「今、狩猟していい時期じゃ無いよね」
俺も笑顔で返す。
「大丈夫」
由宇が笑った。
何が大丈夫か良く分からん。
猟師の孫がこれで良いのだろうか。
「いやいや、マジな話。こっちの三柱鳥居の山の方には入らないでくれよ。ガチで人がいなくなるから。助けれないんだから」
俺が真顔で由宇に話す。
「分かった」
由宇が流石に頷いた。
「とりあえず、川で魚とりだな」
雄二が川を見た。
透明度が高いせいか魚が泳いでるのが見える。
まあ、ヤマメなんで美味いんだが、もう夕方で薄暗いし、今から釣っても日が暮れてしまうだろうに。
などと思っていたら、そこそこの大きさの岩を持ち上げて、川の岩に叩きつけた。
「ガッチン漁法だと? 」
俺が唖然とした。
早速、四匹ほどヤマメが浮いて来る。
「それ、違法じゃねーか」
俺が慌てて、雄二に注意した。
「いやいや、命がかかってるサバイバル状況では仕方ないよ」
雄二が笑って誤魔化した。
「最悪や」
俺が唖然として呟いた。