第五部 第十四章 マーライオン
「待て待て、じゃあなんで燃えたんだ」
雄二がマーライオンの話に疑問を感じている。
つまり、ゲロ吐いたのは攻撃の為では無いかと思っているのだろう。
「いや、あの当時、兄貴は酔っぱらうと誰彼とも無くタバコに火をつけてあげる癖があったから」
和弘おじさんが本当に呆れた顔をした。
何という、迷惑な親父なのだろう。
「ああ、あの変な猪みたいな牙を酔っぱらってるからタバコと勘違いしたのかもしれませんね」
俺が和弘おじさんの言いたい事が何となく分かって、ため息をつきながら答えた。
悲しい。
特にマーライオンの後にライター使って家でも火事にした事があるしなぁ。
「つまり、ゲロ吐いてタバコと間違えて火をつけて焼けたと言う事ですか」
由宇が一際大きく呟いた。
おいおいおいっ!
のっぺりとした顔さんが殺気立ってきた。
「ふざけるなっ! あれは毒なのだ! 我は騙されたのだ! 」
「いやいや、身内の人達が吐いたと断言してるんだから、ゲロを吐いただけだと思いますよ」
由宇がきっぱりと断言した。
「きぃぃぃぃいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいい! 」
凄まじい声を出して、のっぺりとした顔がこちらに向かって来た。
「いやいや、迷惑なんですけど」
俺が由宇に愚痴る。
「頑張れっ! 」
由宇が俺に声援を贈る。
駄目だ、こいつら戦う気ねぇや。
仕方ないからバーベキューで使ってた火のついた木をこちらに向かって来るのっぺりした顔に投げつけた。
顔のやけどがトラウマになっているなら、これが効くはずだからだ。
「ぎぃぃぃぃっ! 貴様っ! 」
のっぺりとした顔が怯んだ。
「トラウマと言う奴はなかなか治らないからな」
俺が呟きながら、別の大きな燃えている薪を手に取った。
ひょっとすると、雨の中で攻めて来たのも、勝手に信じてた毒の火炎攻撃を警戒していたのかもしれない。
「まあ、性格悪い事……」
由宇が後ろでさわさわと呟く。
「いやいや、お前に言われたく無いわぁ! 」
本当に緊張感無いもんな。
とにかく、この状況をなんとかしないといけないのだし。




