第四部 第八章 薬師
その修験者の格好のエルフと日本人達は俺達の十メートル先で並んだ。
皆が白い長髪の白い髭の仙人みたいな日本人を前に出した。
エルフの修験者さん達がこちらを警戒するように見ている。
「お前達が噂の二階堂の縁のものか? 」
エルフの修験者さんが俺達をじろりと見た。
「「この人です」」
俺と距離を置いてから、雄二と由宇が俺を指差した。
こいつら、巻き添えになりたくないって意思表示が凄すぎるだろ。
「時は来た」
それを聞いて、真ん中の仙人みたいな日本人が涙を流した。
「ひょっとして二階堂家の約束に関する事か? 」
俺が呟いた。
「可能性あるな」
雄二が頷く。
「嘘っ! とんでもないところから、解決の糸口が来たって事? 」
由宇が驚いた。
「ありえるな」
俺も驚いてる。
白髪の仙人さんはずっと涙を流し続けている。
「おめでとうございます」
「先生、おめでとうございます」
ちょっと寂しさが詰まったような感じだが、まわりのエルフ達が白髪の仙人に祝いの言葉をかけた。
「ああ」
白髪の仙人が涙を拭った。
「何だ、お前の剣山の薬師じゃ無いか」
いきなり背後から非常食さんに声をかけられる。
後ろを振り返ると、非常食さんが鹿のモンスターを三匹背負って立っていた。
「うわぁ、穫れたね」
由宇が仙人そっちのけで鹿のモンスターに向かう。
「ああ、お前が五月蠅いから、あまり傷つけないように仕留めたぞ」
非常食さんがやれやれと言う感じで鹿のモンスターを降ろした。
「じゃあ、あそこの木に一匹ずつぶら下げてよ。私が解体してくから」
「分かった分かった」
由宇に言われて、しぶしぶと言う感じで木の方へ非常食さんと由宇が向かった。
「待てっ! 先生を無視するなっ! 」
修験者の格好をしたエルフが怒鳴る。
「いやいや、二階堂家は俺だけだから、俺が話をしますから」
俺が答えた。
「おお、二階堂家からも人を出してくれたのか」
仙人さんがそれでさらに感激して涙を流している。
何なんだ、この人。
あれ?
何か微妙に言ってる事のニュアンスがこの間の奴等と違う。
「こないだの約束を話しかけて来た連中では無いよな」
雄二が呟いた。
「そんな感じだな」
俺も雄二の意見に同意した。
でも、あの時の連中は単なる使いだった可能性もあるしな。
その辺は良く分からん。
「で、薬師はいつも剣山の上の方にいるのに、何で出て来たんだ? 」
非常食さんがさっさとツルで鹿の逆さ吊りを三つ作ると、こちらに寄って来た。
「ちょっと、吊るしただけで行くなぁぁぁ! 」
向こうで由宇が騒いでる。
「二階堂の縁者が来たと聞いたので先生をお連れしたのだ」
まわりのエルフの修験者が説明して来た。
「ほう、噂の二階堂の約束の主か? 」
非常食さんがナイスな質問をしてくれた。
「は? 」
でも、仙人さんは不思議そうな顔をしていた。
やっぱり、外れか?




