第一部 第三章 ブルーシート
「何だか、異様に荷物が少なくないか? 」
俺が二人の装備を見て思う。
取り立ての免許で親の車を借りて、山道を行く予定なのだが、二人の服装が軽装過ぎる。
「いや、寝袋はあるよ」
「テントは? 」
「これ」
雄二がブルーシートを出した。
「ブ、ブルーシートじゃん」
「これでテントみたいに出来るんだよ」
雄二が目を輝かせた。
「いや、何をするのかは分かるけど、キャンプ用品でやってくれよ」
俺がうんざりするような顔で雄二を見た。
すでにキャンプが浮浪者みたいな感じになって来た。
「ええ? これで大丈夫って雄二が言うから私もブルーシート何ですけど」
由宇も同じように答えた。
キャンプの雰囲気台無し。
ブルーシートだと?
「だって、これ、解体する時にも重宝するんだよ」
由宇が笑った。
駄目だ、本気でサバイバルになっている。
「キャンプってのは自然との一体感を感じるものであってだな。さらに、こう、オシャレでスタイリッシュで無いといけないと思うんだ」
俺がこんこんと二人に諭す。
「いやいや、ブルーシートで全部済むんだから、これはこれで、スタイリッシュでしょ」
由宇が真顔だ。
やばい、こいつらセンスが絶望的なのでは無いか。
「コール〇ンとかのメーカー品をを使ってるより、俺達にはブルーシートとかのが似合うと思うんだ」
雄二の確信をついた一言で反論ができない。
「ダッチオーブンなんかより、肉を木に刺して塩コショウでしょ」
由宇がそれに同意する。
ああ、駄目だ。
絶対、俺達、オシャレなんて無理だ。
その言葉に反論できない。
「鍋なんか、中華鍋で十分だろうに」
雄二がさらにとどめを刺した。
ああ、さらばオシャレキャンプ。
まさかのブルーシートに中華鍋。
コッヘルとか持ってきたのに、中華鍋に頷いてしまう自分が悲しい。
「後は米と小麦と調味料で十分だろ。正直、米と小麦はドングリで良いぞって先生からは言われたんだ」
雄二が笑った。
ちなみに先生とは雄二の祖父で、俺達にとっても古流の武道の先生だったりする。
「ああ、そう言えば、先生って昔、山籠もりしてたんだってね」
「この辺は早くからマテバシイが出来てるから、それを食べるだけで十分って言われたけど、米と小麦くらいはと思って持ってきたんだぞ」
雄二が胸を張った。
「いやいや、おかずは? 」
「山で取れば良いじゃん」
由宇が笑った。
もう、涙が止まりません。
キャンプはどこに行ったんだ?
これ、サバイバルじゃん。
「スーパーに途中で寄るなよ。米と小麦粉は十分だからな。味噌も調味料もあるし」
雄二が先に止めて来た。
俺の心を先に読むとは、さすが幼馴染。
「多数決だから、二対一でこれで決まりね」
由宇が笑った。
ドンドンと話が変わっていく。
絶対にキャンプじゃねーよ。