第二部 第二章 川探し
獲物だの何だのと言う話は不毛なんで、とりあえず、それ以上はしなかった。
とにかく、まずは生きる事が先決だ。
「しかし、ここは竹を割らんと水が手に入らんからな。ちょっと水が少ないよな」
俺が皆に話す。
「ワームがいるから、岩場とかに移る? 」
由宇が心配そうに話す。
昨日の話しかけて来た奴の事も気になっているんだろう。
「となると、まずは川を探さないと」
雄二が答える。
「谷になってるあたりを探してみるか? 」
俺が山の間の谷になってそうな場所を指差した。
「それしか無いかもな」
結果として、俺達は竹林を離れた。
ワームには良いけれど、水が少ないし安全だとは言い切れないからだ。
俺と由宇は鉈で、雄二は刀で警戒しながら谷の方へ移動する。
「でも、モンスターの十メートル級のが来たらこんなのじゃ勝てないだろうけど」
由宇がまた言わんでも良い事を言う。
そんなの分かってるけどしょうがないじゃん。
「言わんでも分かってるから勘弁してくれよ」
雄二も愚痴る。
「いや、だから、うちの家の直伝の猛毒を鉈や刀に塗る? 」
由宇がにっこりとほほ笑んだ。
「なぜ、そんなもの持ってきてんだ? 」
俺もドン引き。
「もしもの用心がいるから」
「どんな用心なんだよ」
雄二もドン引き。
「いや、刀を持ってきてるお前に言われても」
「これは素振りをしようと思って持ってきたんだ」
「刃を潰してないじゃん」
「潰してたら斬れない」
やはり、由宇とあまり変わらん。
「とりあえず、私だけは塗っておくね」
由宇が微笑んだ。
「やめたら? 何かあったらどうするのよ」
「いや、間違って俺達を斬ったら終わりだぞ。怖すぎだろ」
俺達が突っ込む。
が、しかし、由宇は聞いていない。
すでに瓶から棒で中身を拭って塗っている。
相変わらず、言う事聞かねぇし。
「まあまあ、お陰で助かるってあるんだし」
何というポジティブ。
だから、俺達から恋愛対象にならねぇんだよ。
まあ、俺達が獲物になってたのは笑えんけど。
愚痴りながら歩くが、とりあえず、雄二が炭鉱のカナリヤさんみたいに反応するんで、何かヤバいのは回避できて助かる。
こっちの能力は有難いな。
「雄二がいるから、毒の効果が試せない」
背後で由宇が囁くのが嫌だけど……。
とにかく、水場を探さないとまずいのは確かなんで、谷間に川があると助かるんだがな。
俺達がもくもくと歩いて谷間についた時は昼を過ぎていた。




