第一部 第十章 近寄るもの
「とりあえず、焚火をするにしても、落ちてる木も霧で湿ってるぞ」
雄二が愚痴る。
「ああ、大丈夫だ」
大きめの落ちている木を拾って、表面をナイフで削った。
「ほら、中身は乾いてる。とりあえず、地面が濡れているから、削って乾いた木を並べて火床を作ろう。その上にいつもより長めに切ったガムテで着火剤作って、比較的乾いてる草や細い木を乗せて乾かしながら火を大きくしよう」
俺がナイフで削った木を濡れている地面に並べ出す。
雄二も由宇も同じようにしてくれたので火床が出来た。
後は比較的乾いてる小枝などを布のガムテを折りたたんだ着火剤であぶって乾かしながらくべていく。
時間はかかるけど、これしかない。
三人で、少しずつあぶりながら小枝や枯草を乾かしてくべて火を大きくしていく。
すこし太い小枝は、ナイフで濡れてる部分は削って薪としてくべて行った。
「やれやれ、霧が多いから、まわりが湿気てたんでうんざりしたけど、火をたいたお陰であたりの湿気も無くなって来たな」
雄二がほっとしたような声をあげた。
「とりあえず、火があるから動物は近づいてこないでしょ」
由宇も笑った。
「とにかく、夜が明けたら、すぐに入らずの山から出よう。ここに居るのはまずい」
俺が雄二と由宇に言うと二人が頷いた。
「とんだキャンプになったな」
「そりゃ、俺のセリフだ。本当だったら、オシャレなソロキャンプだったのに」
「でも、ソロキャンプなら助からなかったかもよ」
由宇が笑った。
「いや、ソロキャンプなら罠に子供のドラゴンなんか捕まらなかったろ? 」
「自分のした事を良く理解しろよ」
俺と雄二が突っ込んだ。
由宇がむくれて横を向いた。
「「いや、可愛くないから」」
俺と雄二が冷やかに答える。
「失礼ねぇ! 」
由宇が声を荒げたと同時に、ガサガサ音がこちらに向かって来る。
「え? 」
「何か来るぞ」
俺と雄二が身構えた。
「え? でも、これだけ盛大に火を燃やしてるのに、動物って来るのかな? ああ、そうか。爺ちゃんの話だと手負いのクマなんかは火に寄って来るとか言ってたっけ」
由宇が思い出したように呟いた。
「ふざけんな! 」
「早く思い出せよ! 」
俺が鉈を手に、雄二は釣竿を入れてるらしい竿袋を持っている。
だが、ガサガサと森をわけて出て来たのは動物で無かった。
「ええええと……」
由宇が困った顔をしている。
「ゴブリン……かな? 」
「そんな感じだな」
棍棒を持ったゴブリンらしいものが二体、焚火を見て寄って来た。
そりゃ、ゴブリンなら焚火してる奴は獲物だから逆に寄って来るよな。
ことごとく常識が違う世界にため息しか出ない。




