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毎日投稿するの自体が、結構大変な作業なので、ストックは多いに超したことはありません。
でも、やっぱり物語を描いていく途中で書きたいことが増えてくるので、その都度選んで取り入れていきます。そこに時間使っちゃうんですよね。
今回は前の続き。聖都の構造がわかります。
建物の中に入ると、奥に貼られた大きな紙が目についた。
『聖都見取図』とある。
「世界一幸福な街へようこそ。神の祝福を受けたこの地は、風光明媚な名所、美酒美食に芸術の数々、あらゆる文化的魅力にあふれています。この聖都があなたに最高の思い出を導くでしょう。だと。観光用か。」
いろいろと地図から矢印が引いてある。その行き着く先には装飾で囲まれたインクの小窓があって、その中に絵や文字が書き込まれていた。
役に立ちそうだ。エイルは手帳に簡単に地図を写すことにした。
聖都は上空から見て円形の城塞を四つ重ね合わせた形状になっている。都市に巡らされた水路は海岸から渦を巻くようにして中心に向かって伸びていて、それを横切るようにいくつもの橋が架かっている。城壁に囲まれた範囲ごとに一つの地区が有り、それぞれに特色がある。
門をたたえる外側の地区は外部との接触が多く交易の拠点となるため食品街、問屋、市場、商店街などが連なる。少し内側に入れば歓楽街、宿場街や広場、教会や集会場がある広い空間になり、それより奥の城壁をくぐれば行政区画、公的機関や軍の土地である。閑静なことから高級住宅地として開発された地区もある。特に白塔のそばにある一番街特別区には、むかし勇者を送り出したことで知られるはじまりの王家の直系子孫である『聖王』の宮殿もあり、国王の名の下に政令の公示が行われるという。
聖王軍の結団式もここの庭園で行われることが有名で、国中の人々が注目する行事となっている。一方でその中を拝むことができるのは、兵士になった者のみである。
「絶対に、なってやる。」
エイルは強く筆墨を握りしめ、地図を書きあげた。この地図が正しければ南東にある八番街が最も近く、そこから北に向かって次の門を抜け、五番街で宿を探すのがよいだろう。その途中で必要なものがあれば買い足せばいい。幸い露店は数多く出ているようだし、片道分の資金もそれなりに残っていた。
別の船が入ったか、建物の中がにわかに騒がしくなった。人波に乗って外に出れば、港でも見た大きな門の前に出た。
無限に続くように見える城壁に縦縞のように入る無数の出っ張りが日の光をはね返す。こちらに向かって若干傾いて見えるのは、その大きさ故か。大扉の上に架かったアーチ状の装飾の上にはおぞましい顔をした石像が鎮座する。かつて神仙の時代に防壁として築かれたと傍らに立てられた看板は謳っているが、あながちそれも嘘とは思えないほどだ。
近づけばそれが全て巨大な結晶岩を組んでできていることに驚いた。人が二人縦に並んでようやく、同じくらいだろう。昼間は開いたままになっている鉄の大扉も人が一人中に入れそうな厚みをしている。
「これじゃ、悪魔が襲ってきても、びくともしねえなあ。」
こんなに頑丈な壁が町中に巡っているとは、すぐには信じがたい。でも町中に入ればそこから影が伸びるせいか、一足先に宵闇を迎えたふうに薄暗くなっていた。エイルは少し門から離れたところで壁に背を向けて手帳を見る。
『八番街』で間違いない。大通りに面する店の正面に飾ったランタンやキャンドルの明かりが光の筋をつくっていたのが、地元の祭りに似ていて少し懐かしさを覚えた。
エイルの背中が突如叩かれた。
「よお。」
見知らぬ少年が、エイルの後ろに立っている。エイルが口を挟む前に彼は矢継ぎ早に繰り出した。
「あんた、聖王軍の選抜、受けにきたんだろ?」
果たして少年は誰なのか。注目です。