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追加分です。ちょっと遅くなりました。こういう形で小出しにしていきます。
噂に聞いたよりも急峻な道であった。積荷も出来るだけ減らしてきたとはいえど決して少なくはない量で、運び屋に頼んだのは正解だったなと少年は思った。
衣服と日用品の入った布袋に、旅費の足しにと用意してもらった銀貨と銅貨の袋。
なにより、武具の一揃えが結構な重さをもっていた。盾なんかは、立てかけておいてもぐわんと音を立てて倒れるしで、そのたびに指の第二関節を少し痛めて持ち上げるくらいだった。
「あの爺さん、なんであんな張り切って作るかなあ。ここの鋼板地味に当たって痛いし。」
鍛冶屋の爺さんは、田舎に住んでいるにしては異常に腕はいいのであるが、それなりに請求された。
断ろうとして彼が向こうで買うと言ってから、もういっそう機嫌を悪くしはじめ、強引に取り付けた期日の3日前にやけくそで作り上げ、しわだらけの顔にくまを鮮明に、きっちり羊皮紙の書面を持ってきた。
頼んでもいないのに、だ。
そのような押し売りを受けてしまい、旅立つ前には予定よりも資金が減ったのであるが、このカブトムシの翅みたいな丸みをおびた青黒い盾は、そんなこともさも些末なことのように荷物の中でその重厚な存在感を示していた。
たまに表面の凸凹を撫でたり、叩いたりすると気分がどうでもよくなることがあるのが、目下のところ、こいつの唯一にして最大の利点である。
そうであることは何の問題もない面ではありがたかったが、彼にとってはつまらなくもあった。
ちなみに叩くと詰まった配管みたいな音がする。
「ま、別にいいんだけどな。」
少年は手を組み、親指同士をぐるぐる回した。相変わらず嫌な空である。雨でも降ってくるか、また別のものが降ってきてもおかしくない。
「旅代さん、次の宿ってのはどんなとこなんだい?前の宿みたいに盗賊と主人がグル、ってんじゃないだろうね。」
「まあ、それはないでしょう。多分。」
「多分って何だよ、それ。」
「実際に使ってみんことには分からんのですよ。この道もわたしはあまり通りませんし。」
しれっと言ってのける御者を、少年は細い目で見た。
「通らない道を旅人に紹介する?普通。」
「速いってんで、こっちを行かせてもらいましたが、ご不満でござんすか。ルート変更は追加料金になりやすが。」
少年はふうっと息を吐く。
「ま、いいけど。」
話題は途切れた。そうすると暇なもので、少年は空ばかり見ていた。この下にいるものをみんな陰気くさくしてしまう。本当に嫌な空である。