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第八話

PV200超えました!とても嬉しいです。

これからもよろしくお願いします。

 「さて、そろそろ《タルタロス》に戻ろうか」


 日が傾き始めている。思わぬトラブルに巻き込まれた事で随分と時間を使ってしまった。


 「そうですね。明日の第二試合、勝ってください。怪我しても私が綺麗に治します!」


 「ああ、頑張るよ。怪我はしたくないけどね」


 「あ、そうだ。後で、今着てる服私に預けて下さい。明日までに直しておきますから」


 「せっかく買ったのに1日で穴空いたからな。おばさんは丈夫って言ってたけど防御力は期待できないみたいだ」


 「そんなことありませんよ。その服の防刃性能が高かったから傷が浅くて済んだんです。マルタの服に感謝しなきゃですよ!」


 そうなのか、すまないおばさん。


 帰り道、何気ない会話をしながらふと考える。明日も生き残れるのだろうか。異世界に来て3日、既に二度の死線を超えた。3度目は死んでもおかしくないのだ。

 明日も明後日も、この子の隣を歩けるように生きるんだ。

 ――ドクンッ

 鼓動が大きく鳴った気がした。


 翌日、やたら早く目が覚めた。少しでも向上系スキルが身に付かないかと筋トレをする。

 ――カッカッカッ

 足音だ。こんな朝早くに誰だ?


 「よう、グラディエーター。朝早くから鍛練とは、良い心がけじゃないか」


 鉄格子の前に現れたのは、管理部長トランゼンだった。


 「何だ、おっさんか」


 「何だとは何だ、お前にいい話を持ってきてやったんだ。お前、この独房だと暇だろ?」


 「まあ寝る以外これと言ってやることはないな」


 「そこでだ、お前が赤軍の訓練場を使えるように手配しておいた。奴隷とは言ってもグラディエーターだからな、その権利がある」


 訓練場か……他のグラディエーターから情報も得られるかもしれない。


 「だがな、グラディエーターの中には貴族や軍隊の奴等もいるんだ。奴等の中には奴隷をいたぶるのが趣味みたいな奴も大勢いる。そういうのに絡まれたくなかったら朝早くにでも行ってくれや」


 だからこんな時間に来たわけか。


 「わかったよ、でもこれはどうするんだ?」


 ――ジャラ

 俺は足に付いた鎖を持ち上げて見せる。


 「おう、喜べ、グラディエーターとしての登録が完了した。《タルタロス》の中に限りお前は自由だ。部屋は独房のままだがな」


 「本当か!?やっとこの半径三メートル生活とおさらばできるんだな?」


 「やっとって、たった二日とちょっとじゃねえか。忍耐が足りんな。……もちろん《タルタロス》から逃げようとすれば奴隷紋が発動するからな?」


 「逃げるなら初日にやってるよ」


 ――ガチャッ

 トランゼンが鉄格子越しに何かを投げる。足下に転がったそれは恐らく足枷の鍵だろう。

 ――ガシャンッ

 昨日ぶりの自由だ。これからはこの足枷をはめられることも無いんだな。


 「付いて来い、訓練場に案内してやる」


 トランゼンの後を追って弧を描く廊下を歩いて行くと、地下に続く螺旋階段があった。


 「この奥だ。闘技場の真下に作られた広大な訓練施設だ、好きに使って赤軍の為に戦え、いいな?」


 「ありがとうおっさん」


 「そのおっさんっての止めろよ、俺は昔は結構なグラディエーターだったんだぞ?」


 「俺はその辺の事情なんて、何も知らないんだから仕方ないだろ。とにかくありがとさん、早速使わせてもらうわ」


 「ったく……試合前にあんまり身体を酷使するんじゃねえぞ?期待してるからな、青軍のクズ共をミンチにしてやんな!」


 そう言ってトランゼンは去っていった。温厚そうなおっさんなのに、青軍に対して言葉悪すぎるよな。管理部長としてのキャラ付けか?

 さて、訓練場とやらに行ってみますか。


 長く暗い螺旋階段を降りる。


 「すっげえ……」


 思わず声が出た。

 よく何個分とかで使われるドーム球場くらいの広さはあるだろうか。

 客席とかが無い分、より広いかもしれない。

 そんな広大な敷地には、壁があったり山があったり、一見するとアスレチックのある公園だ。

 でも鋭い棘が突き出ていたり、至るところに血が付着していたりと殺伐とした空気を醸し出している。

 早朝だが、人はそこそこいるみたいだ。よく見ると奴隷が多いな。

 おっさんが言ってた事が関係してるんだろう。


 ――ズドンッ!!

 何だ!?大砲でも撃ち出したような音がした……聴いたことないけど……


 ――ズドンッ!!

 規則的に聴こえて来る。爆弾でも使ってるんだろうか。

 俺は気になって音の方へ歩いていく。

 音の発信源へ向かう途中、何人かのグラディエーターとすれ違ったが、皆青ざめた顔をしていた。


 ――ズドンッ!!

 そこは訓練用のカカシや、サンドバッグみたいな吊るし等が置いてあるスペースだった。

 

 ――ズドンッ!!!

 発信源に近づいた分、さっきより大きな音になっている。

 激しく揺れたカカシの側に一人の少年が立っていた。

 彼はこちらに気付くと、汗を拭いながら歩いてきた。

 な、なんの用だ?


 「あなたも、訓練に来たんですか?」


 思ったより幼い、声変わり前のような声で話しかけられた。


 「あ、ああ……お前もか?」


 「はい、鍛錬は早朝に限ります!……嫌な輩も居ませんし」


 その言葉に首を見ると、少年には奴隷紋が刻まれていた。

 

 「お仲間、ですね。あなたはグラディエーターになって長いんですか?」


 「いや、つい先日なったばかりだよ。まだ2ポイントしか持ってない」


 「そうなんですか、よかった、物凄く強い人だと緊張してしまうので」


 少年は照れたように笑う。緑の瞳に短い栗毛、整った顔立ちをしていて育ちは良さそうに見える。それでも奴隷なんだよな……


 「僕はダリエスと言います、家名は失ったので名乗れません……」


 訳ありみたいだな。こちらも自己紹介をしよう。


 「トモヤだ。よろしくな、ダリエス」


 「はい、よろしくお願いします!嬉しいです、僕、グラディエーターになってから友人が出来なくて……良ければご友人になって頂けませんか?」


 「友達か、良いよ。その代わりその敬語は無しだ」


 「でもトモヤさんは年上だし……」


 「良いんだ、友人なら気兼ね無い方が良いだろ?」


 「はい……うん!わかったよ!トモヤ!」


 うんうん、そのくらいの方が気楽で良い。


 「ところで、さっきのすごい音は何だ?」


 「すごい音?さあ、僕はただ打ち込みをしてただけだから聴いてないよ?」


 打ち込み……ダリエスの手にはバンテージがキツく巻かれている。まさかとは思うが……


 「ダリエスは素手で戦うのか?」


 「そうだよ、短剣を勧められたんだけど、僕どうしても刃物って苦手で……」


 「そうなのか。打ち込み……見せてくれないか?」


 ――パアアアア

 と音が聴こえそうなくらい彼の顔が明るくなる。


 「見たいの!?うん!いいよ!こっちに来て!」


 腕を引っ張られ、先程激しく揺れていたカカシの元へ移動する。

 嫌な予感しかしない。恐らくさっきの轟音は……


 「じゃあいくよ!」


 ――スゥゥゥ

 ダリエスがゆっくりと息を吐く。


 「はっ!」


 ――ズドンッッ!!!

 カカシから跳ね返った衝撃波がこちらにも届く。そこそこ近いとは言え、殴った衝撃波が斜め後ろの俺に届くってどんな威力だ。

 

 「ど、どうかな……?」


 モジモジとこちらを上目遣いで見てくる。小動物のようで可愛らしいが、そのか細い腕にはバカバカしい程の力が秘められているんだ。


 「凶器だな。うん、確かにお前は素手で良いと思う」

 

 「そ、そうかな?そうかな!?」


 えへへっと笑う彼はまるで女の子のようだ。


 「どうしたらそんな威力が出せるんだ?」


 「うーん、毎日の鍛錬の成果かな。でも僕、先天的に腕力向上2を持ってるんだ」


 「明らかにそれじゃねえか!いや、もちろん鍛錬は大事だけどな?って、腕力向上"2"?」


 「知らないの?常時発動型のスキルには数値があって、数値が高い程効果も高まるんだよ」


 教えといてくれよティファさん……

 

 「ちなみにダリエスは何位なんだ?」

 

 「丁度1000位だよ」


ダリエス君はちゃんと「君」です。

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