第二十九話
ちょっと仕事の都合で更新の間隔が開きます。
ご了承下さい。
エルフェリア……人間の呼び名にするとエンシェントエルフらしい。
「ティファさん、エンシェントエルフって随分前に滅んだんじゃ無いんですか?」
「一応、そういう事になってます。エルフの国『エルムナード』は12年前、ラグノリアに攻め滅ぼされました」
「そんな……僕は『エルムナード』は疫病で滅んだって聞かされました……」
「今でも疫病が蔓延しているから国に立ち入る事が出来ないという話ですよね。表向きはそうなっていますが現実は違います」
急に重い話が出てきて俺はついて行けないでいる。二人だけで盛り上がっているが、そもそも俺はエルムナードって国を知らん。
「あの、お二人さん、取り敢えずルクセールのやつの所に行ってみないか?」
「ああ、そうだね。ここだとまた魔物に襲われかねないし……これだけ回収して行こうか」
ダリエスが何かを拾い上げた。赤い宝石の様だ。
「なんだそれ?宝石か?」
「これは魔石、魔物が体内で作り出す物だよ。魔物によって種類が違うんだ」
「売れるのか?」
「そうだね、冒険者ギルドに持って行けば換金できるよ。僕も実物はあまり見たことないから、これが幾らになるかわからないけど……」
なるほどな、でも討伐隊を編成するような大物なら結構な値打ちが有りそうだ。
ティファの告白によって魔物討伐の余韻は掻き消え、重い足取りでルクセールの隠れ家に向かう。幸運にもそれ以上魔物と遭遇することはなかった。
普通に歩いたら絶対にわからないであろう獣道を抜け、でかい滝の裏にそれはあった。
滝の裏には深そうな洞窟が続いている。あのおっさん、七番街の協会も地下だったけど、趣味なのか?それとも土竜の亜人とかか?
「ね?凄いでしょ、滝の裏なんてよく考えたよね!」
「いや、王道過ぎてなんとも……まあロマンはあるけどな」
「王道?僕は滝の裏の隠れ家なんて聞いた事もないけどね」
俺の世界の創作物では盗賊の根城や何かの神殿が滝の裏に隠されているなんて、テンプレートの様なもんだ。
この世界は物語とかが少ないのかもしれない。
――ピチャンッ
滝の裏だからか湿気が多く、鍾乳洞の様になっている。
元盗賊の隠れ家だった割に罠の類は特に無いみたいだ。
「そろそろ着くよ……あ、ほら!あれ!」
ダリエスが指差す先に木の貧相な扉があった。
疑ってた訳では無いが本当にあるとは……
――コンコン
「ルクセールさん!居ますか?」
ダリエスが所在を確認する。
――ギッ
木製のドアが軋みながら開いた。
「おう、よく来たなお前ら。来るんじゃないかと思ってたぜ」
ドアの向こうには見慣れた赤ら顔の神父が立っていた。
「おっさん、こんな時でも酒飲んでんのかよ?」
「馬鹿野郎、こんな時だからこそだ!王国聖騎士なんかに狙われちまったら王都で生きていけねぇ。せっかくあそこで平穏無事な暮らしを手に入れたってのに、どっかの馬鹿が密告なんてしやかったせいで……ヒックッ」
やけ酒か。まあ気持ちは分からんでもないけど、平穏無事な生活がしたいなら悪魔信仰なんてしなきゃいいのに。そのお陰で助かった俺が言うのも筋違いだが……
「密告……誰にされたとか、心当たりはあるんですか?」
「俺が悪魔神官も兼業してる事を知ってる奴なんてほとんどいねえからなあ。トモヤ、お前さんか?俺を密告したのは……」
――チャキッ
ルクセールが何処からか取り出したナイフを構える。
「おいおい待て待て!俺がそんな事をして何の得になる!?デメリットしか無いだろ!?」
「そ、そうですよ!ルクセールさん!」
――キンッ
ナイフが何処かに仕舞われた。と言うかさっきから抜刀も納刀も早すぎて見えないんだが……
「冗談に決まってんだろお前ら」
目が本気だったぞこの酔っ払い。
「まあいい、中で話そう。おや、ティファの譲ちゃんも来てたのか?何も話さねえから居ないもんかと思ってたぜ」
「あ、はい、こんにちはルクセールさん。ご無事で何よりでした」
ニコリと笑う彼女は余り元気が無い。これからエルムナードでの出来事を聞くわけだが大丈夫だろうか?
俺達はルクセールの隠れ家へと案内された。
貧相な木の扉の奥には何の変哲もない狭っ苦しい部屋があるだけだ。
「ここが隠れ家なのか?おっさん、もうちょいマシなとこに住めよ」
牢屋暮らしの俺に言われたか無いだろうが……
「こっちだこっち」
――ガコンッ
ただの地面だと思っていた場所が急に開く。隠し扉か……
教会にあった落とし扉と違ってかなり精巧に造られている。よく見てもそれが扉とは分からないだろう。
そして現れたのはまた梯子だった。
本当に土竜の亜人なのか……?
俺達は更に地下へと潜った。
何故かこの地下室は上の部屋より明るくなっている。
天井にあるのは……電球か?
「これは魔石を使った『魔光灯』だ。その辺の奴らを狩って作った。松明みたいに切れることも無いし便利だぞ」
さらっと説明された。
ルクセールの奴、外に居た魔物を一人で狩れるのかよ!
実はめちゃくちゃ強いんじゃないか?
地下室は物凄く広い空間だった。
梯子を降りた先には巨大な広間がある。なんとなく七番街の教会に似ている造りになっている。
その中央広間から何本か続く廊下にはいくつもの部屋があるみたいだ。
「こんなとこに一人で住んでたのか?」
「いや、昔は大所帯な盗賊の頭領だった。この拠点を根城にして、貴族や商人を殺し、略奪を繰り返しては馬鹿騒ぎをしてたな」
懐かしそうに話しているがやってる事は外道だなおっさん。
「まあ40年以上前の話だ。俺以外の仲間は全員捕まって処刑されたよ。俺は素性がバレなかったから一人王都で優雅に暮らしてた訳だ。ついに年貢の収め時って事なんだろう」
「まあ確かに、自業自得ではあるな。仲間に呼ばれてるんじゃないか?」
「と、トモヤ!」
「いいんだ坊主、本当の事だからな。それで?そんな俺の所に何をしに来たんだ?」
「目的は2つだ。1つはスキルを調べること。もう1つは……おっさん、この密告に『聖銀教会』が絡んでるって言ったら、何となく心当たりは付くか?」
「ほう……聖銀教会……奴らか……まあ浅からぬ因縁はあるな。何処から聞き付けたのか知らねえが、悪魔との契約法を教えろと煩かった奴らだ。もちろん知らねえと断ったが……」
「なるほどな、いま俺たちは奴らをぶっ潰そうと思ってるんだが、協力してくれないか?……あんた強いんだろ?」
「めんどくせえ、と言いたいところだが、俺もこのまま泣き寝入りしてちゃ地獄で待ってるあいつ等に笑われちまうな……良いだろう、協力してやる」
よし、すんなり協力を受け入れてくれた。おっさんは戦力的には十分だろうし、スキルも逐一調べられるからな。助けてやるんだから金は払わないけど……
「ルクセールさん、今でも戦えるんですか?」
「おいダリエスの坊主よ……舐めんじゃねえ、老いぼれた今でもお前ら若造なんて一撃でぶっ飛ばしてやれるさ」
「そ、そうですか、それはとても頼りになりますね……」
おお、ビビってるなダリエス。俺も同感だ。
「さて、次はスキルだったか?と言うかその前に……トモヤ、お前さん、記憶が戻ったか?」
そう言えば話してなかったな。
俺はフェネクスが起こした一連の出来事についてルクセールに話した。
「……なるほどな。悪魔に乗っ取られちまってた訳か、だせえなお前」
「うるせえよ酔っ払い!」
「まあいい、そういう事なら調べてやるさ」
俺たちは奥の部屋にあった簡易祭壇でスキルを調べる事にした。
簡易祭壇ってのはアタッシュケースみたいな箱に祭壇のミニチュアが入った様な物だ。
これで良いならあんな大きな教会いらないだろと思ったが、まあこれもロマンなんだろう。
「お前さん、少し見ないうちに随分スキルを覚えたな」
「え?そうなのか?」
ぶっちゃけ寝てたから全然わからん。
発動型
円月斬り 狼撃 散花 飛突 五月雨 シールドバッシュ リフレクトマジック
闇魔法
ダークシールド2 ダークボール1 ダークレイ1
常時発動型
全能力向上2 全耐性2 闇魔法適正2
誓約
『生への渇望』
うん、ツッコミどころが多すぎてどうしたらいい?
発動型スキルについては何も言うまい、あとで覚えよう。
魔法適正が出来ている……しかも闇魔法3つ付き。
そして全能力向上と全耐性……
ん?『生への渇望』?『生への執着』だった筈だが……
何よりもティファとダリエスが驚いていない事に驚きだ。
「トモヤの聞きたいだろう事を、いくつか先に答えるね」
「ああ、助かる」
「全能力向上は、腕力、速度、視力、魔力、運とかの向上系スキルを全て取得した時に発現するんだ。次に全耐性だけど、これは打撃、斬撃、刺突、魔力の4つの耐性を同じく全て取得した時に発現するよ」
つまり纏めスキルって事だな。
「でもこんな短期間で習得できるものじゃない筈だ。トモヤは確かにたくさんの死線を超えてるけど、それにしたって早すぎるよ。やっぱり異世界人だからなのかな?」
「いや、これはフェネクスとかいう悪魔のせいだな」
ルクセールが割り込んで補足してくる。
「恐らくは悪魔との同化期間が長かったせいで、お前さんの潜在能力が開花しちまったのさ。悪魔のやつ、恐ろしく強かったんだろ?」
うん、とダリエスが頷く。
ベルゼが許してやれと言っていたのはこういう事か。
あの焼き鳥野郎に乗っ取られた事でレベルが急激に上昇したと。
いや、許さんけどな。
「誓約スキルについては、次の段階に進んだって事だと思うぞ。トモヤ、お前さん、ベルゼに会ったんだってな。恐らくそれによってスキルが進化したんだろう」
「そういやベルゼが別れ際に言ってたな。『強く生きたいと願え』とか」
「恐らく、名前の通り、死への恐怖ではなく、生への渇望がトリガーになったんだろう」
「ふーん、なんか色々と実感わかないな」
まあ実際、ずっと寝てたんだから実感があるわけ無いのだ。
「次はダリエスの坊主だな」
発動型
砲打 尖脚 蹴閃 護方陣
常時発動型
腕力向上3 速度向上1 視力向上1 魔力耐性1
「この前とあまり変わらないや」
「そうなのか?」
「魔力耐性が増えたくらいかな」
「ふうん、そういやダリエス、お前なんでスキル使わないんだよ」
「もっと上に行ったら使うつもりだけど、打撃耐性の無い相手に使ったら確実に殺しちゃうからね、自分が危なくなるまで使う気はないよ」
確かに、さっきの魔物の頭の吹っ飛び方を見るに、人間なら即座にミンチだろうな。
「ついでにお嬢ちゃんも調べとくか?」
「はい、お願いします」
意外だ、ティファは自分のスキルを隠したがると思っていた。
ルクセールが祈りの言葉を唱える。
「こ、こいつはすげぇ……」
「どうした?」
発動型
なし
回復魔法
ライトヒール3 ルクスヒール2 エリアヒール2 キュアオール2
光魔法
ホーリーライトニング2 ホーリーブレス3 ホーリーアローレイン3 ホーリーベール3
常時発動型
魔力耐性4 魔力向上5 光魔法適正4 回復魔法適正4
な、なんだそりゃ……完璧なまでに光魔道士だな!
それにしても向上や耐性の4や5っていうのは初めて見た。
「トモヤ、まだ終わりじゃねえ。もう一つある」
誓約スキル
『痛みを喰らう者』
ティファに、誓約スキル……?




