第二十八話
久々に戦闘回です。
ブクマが少しだけ増えました。
本当にありがとうございます!
何もねえ。草原に出た俺達はただ道を歩くだけだった。
スライムの1匹たりともいない。
これじゃあただ田舎道を散歩しているだけだ。
「トモヤ!足取りが重くなってるよ!さっきまでの元気はどうしたのさ!」
遥か前方からダリエスが叫んでくる。
「トモヤさん、頑張りましょう。ルクセールさんの為です!」
横からはティファが励ましてくる。
違うんだ疲れたとかそういうんじゃない。
「俺は……魔物と戦いたいんだー!!」
だだっ広い草原に、俺の叫びが木霊した。
「何言ってるのさトモヤ。こんな王都の近くで魔物なんているわけ無いだろ?大丈夫、ベルン峠に着けばきっと遭遇するさ。そういう場所だからね」
そうして俺達はさらに2時間は歩いた。
思ってたのと違う。最後の幻想とか竜の探求とかそんなRPGのイメージだったのに、これじゃあ謎のお散歩ゲームだ。
「ここが、ベルン峠の入り口だよ」
目の前にはかなり険しい山々が広がっている。立て看板があり、ティファによると『サンデラ方面』と『リスト方面』に向かう山道らしい。
いや、これ峠ってより山脈じゃねえか。こんな軽装で挑むのか?
「さあ、行こうか、サンデラ方面だよ」
「お前、場所は知ってるのか?」
「一度だけ、ルクセールさんと行ったことがあるんだ。秘密基地のような場所だよ」
俺達は山道をひたすらに登った。
しかし、魔物に出会う事も無く中腹辺りまで着いてしまった。
「魔物〜……どこだ〜……」
不思議と身体に疲れはないが、精神を削られてきた。
「トモヤったら、そんな簡単に魔物が……」
――ガルルルルル
この声は!?
「魔物か!?」
俺は期待に胸を膨らませ声の方を見る。
そこにいたのは巨大な体躯に獅子と山羊の双頭、そして尻尾が蛇の頭の魔物――所謂キマイラだった。
――グァオオオオ!!
――メェェェェェ!!
――フシャアアア!!
三者三様に咆哮を放つ。
「ちょっと待て!最初からこんなボス級の魔物が出るなんて聞いてないぞ!」
「トモヤ!勘違いしてるみたいだから訂正しとくと、魔物って物凄く凶悪で強いんだよ!僕も見たら逃げるようにしてたから戦うのは初めてだ!普通は討伐隊を編成して戦うんだ!」
「先に言えよ!」
これでは俺の思ってた魔王を倒すドラゴンなRPGではなく、モンスターをハントする狩猟生活のアクションゲームの方がしっくり来る。
取り敢えず剣を引き抜き構える。
「やぁっ!」
――ズドンッ!!!
ダリエスの一撃が獅子の首筋にヒットする。
爆弾の様な攻撃を食らったというのに平然としている。
しかし、獅子の顔には怒りの色が見える。
――グルァァァァ!!!ゴウッ!!
キマイラの獅子頭がダリエスに向け火を吹く。うわぁ、あのライオン打撃が効いてないな。
――ダッ!ヒュンッ!ザシュッ!
俺は地面を蹴り、ダリエスの方を向く獅子の首に向けて斬撃を放った。
深くは無いが手応えが有る!斬撃は有効だ!
――メェェェ!ドスン!
「うぐっ!」
もう一頭、山羊からの頭突きをモロに食らいふっ飛ばされた。
痛い。だが不思議なことにそこまでダメージが無い。ダリエスとの修行で得た『打撃耐性』が進化したかな?
「ティファ!回復はいい!温存しておいてくれ!」
「はい!」
取り敢えず回復は致命傷にだけ使いたい。
「ダリエス!お前の打撃だと有効打にはならんかもしれん!注意を引き付けるんだ!」
「不本意だけど、仕方ない…ねっ!!」
――ズドンッ!!
今度は山羊の頭に直撃する。
――メエエェェェ!!
お?効いてるのか?
「聞いたことがあるよ、この魔物は頭それぞれが別の耐性を持ってるらしい。山羊は斬撃、獅子は打撃に強いみたいだね」
「蛇はなんだ?魔法か?」
「かもしれないねっ!!」
――ダンッ!
ダリエスが後ろに飛び退り、直前まで居た場所に灼熱が降り注ぐ。
獅子は中距離、山羊は近距離か。蛇の奴がまだ何もして来ないのが不穏だな……
――バチチチチ!!
何だ!?
まるでスタンガンの様な弾ける音が鳴り響く。
見ると尻尾の蛇が口を開け、そこに雷の玉が発生している。
あれを放つのか!?
「ティファ!下がれ!」
「は、はい!」
この中で一番魔法耐性が高いのは、スキルでも装備でも俺だろう。
なら俺が防ぐしかない。
――ダッ!ザザザァ!
俺は全力で走り、スライディングの要領でキマイラの後ろに回った。
「よう、この蛇野郎!」
――ザシュッ!!フシャアアアア!!
尻尾……と言うより蛇の胴体か?ともかく、身体を斬られ蛇が激昂する。
雷の照準を俺に合わせると――
――バシュンッ!!バチバチバチ!!!
「あがぁぁぁっ!!」
超高密度の雷が身体を貫いた。思っていたより火力が高く意識が飛びそうになる。
身体の至るところが焦げ、煙が上っている。
「トモヤさん!ライトヒール!」
ティファの迅速な回復により意識を刈り取られずに済んだ。
俺は間髪入れずに蛇にしがみつくと、その太い身体を両断するためスキルを放つ。
――スキル発動、『散花』!!
散花は縦横斜めに高速で4連撃を放つスキルだ。
――ズババッ!!ズシュッ!!フシャアアアア!!
蛇がまるで血の花を咲かせるように斬り落とされ、その動きを止めた。
――グルァァァァ!!メェェェ!!
前の二頭が怒り狂っている。そもそもこいつら、3つの命を持ってるのか?
蛇が死んでも怒り狂うばかりでダメージは無さそうだ。
――キィン……バスンッ!!!
聞いたことの無い音が鳴り響いた。
見ると山羊の頭が、文字通り木っ端微塵になっている。
「こっちもやったよ!トモヤ!」
ダリエスがやったのか?いや、他にいないけどさ。
あんな技食らったら人間も木っ端微塵になりそうだ。というか、ダリエスがスキルを使うのって初めて見た気がする。
――グルルルルッ!ダンッ!
残った獅子が巨体に似合わない大ジャンプを繰り出した。
――ゴウッ!!
辺り一体を全て燃やし尽くす様に炎が吐き出される。
まずい!ティファを守りきれない!!
「ホーリーベール!」
――パァァァァ!
突如ティファを中心に光の膜が現れ、俺やダリエスごと包み込む。
灼熱の炎はその膜を突破することは叶わず、獅子の着地と共に消え去る。
「ホーリーライトニング!」
――バシュウウウウウ!!
ティファが前に突き出した両手から極太レーザーみたいな物が放たれる。カメ○メ波か!?
光の波動は獅子の頭を直撃すると、その顔を焼き焦がし一撃で致命傷を与えた。
――ドスン……
全ての頭を失ったキマイラがその場に倒れ込む。
その巨体はみるみる光の粒となって消えていった。ラーナが消えた時の光景に少し似ているな。
「やったね!二人とも!」
「え?あ、ああ。やったな……」
いや、ダリエス。勝ったのは嬉しいだろう。だがそこじゃない!
「ティファさん……?攻撃魔法が使えるんですか……?」
思わず敬語になってしまった。
「はい……お恥ずかしながら……隠していてすみませんでした!!」
ティファが全力で頭を下げる。
と言うかダリエス……知ってたな?何だか凄い疎外感を覚える。
「なんで隠してたんだ?別に恥ずかしいことでもないだろ?ダリエスは知っているみたいだし……」
拗ねているのは自分でもわかってる。恥ずかしい25歳だ……
「ダリエス君には、フェネクスとの戦いの際に見られてしまいました。出来るだけ人目には触れさせたく無かったんです」
「それはまたどうして?」
「私の出自に関わる話です」
「出自って……そんなに大袈裟な話なのか?まさか滅んだ国のお姫様だったりしてな!」
なんだか暗いティファの空気を宥めようと冗談をかます。
――ビクッ
あからさまにティファが反応した。え?ほんとに?
「なんで、分かるんですかぁ……?」
なんかもう半泣きになっている。いや、そんな泣く事じゃないだろ!
「いや、悪かったって!そんな泣かなくてもいいだろ!?」
「今まで必死に隠してきて……それなのにトモヤさんたら冗談みたいな言い方で当てちゃうし……隠してきた意味って何だったんでしょうか……」
今度はあからさまに拗ねている。
「ごめんってほんと!でもほら俺のはただの当てずっぽうだし、実際どんな国だったのかとか話してくれよ!な?」
ティファはこちらをジトっと恨みがましく見てくる。
いや、俺は何も悪い事してないだろ!?
ダリエスの奴までやれやれって感じで俺を見てくる。何なんだ!
「はぁぁぁ……」
彼女は大きな溜息をついて言った。
「私は……エルフの古代種、エルフェリアと人間のハーフです……」
エルフって良いですよね。




