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第二十七話

 悪魔崇拝がバレたらヤバイって言ってたのに、見事に密告されてるじゃえねか。

 

 「ルクセールさん、どこに行かれたんでしょうか……」


 俺達は教会を離れ下層街の危険地帯、五番街を歩いている。

 今更チンピラ程度に負けることはないし、国の目が行き届かない五番街は内緒話をするのに都合が良い。


 「王国内で隠れるとしたらこの五番街ですかね……」


 「だがそれは王国聖騎士達も考えるだろうな。あと定番なのは下水道か……」


 よく、ファンタジーもので逃げ隠れする時は下水道を利用することがある。


 「うーん、それは無いんじゃないかな。病気の蔓延や罪人の逃走を防ぐ目的で、下水道は完全に王国の管理下に置かれているんだ」


 なるほど、中世的な世界観の割に綺麗だと思ったが、下水道すら完璧に管理されてるわけか。通りで臭いがしない訳だ。


 「僕に1つ、心当たりがあるけど行ってみるかい?危険な場所だけど……」


 「可能性が有るなら行くべきだろうな」


 「そうですね、ルクセールさんを見つけないと、あの人は本気で悪魔を崇拝してる訳じゃないですし。それにスキルを調べられなくなるのは困りますよね!」


 その通り、ステータスが確認できないRPGなど不便極まりないからな。


 「場所はラグノリア領北にあるベルン峠だよ。昔聞いたことがあるんだ。ルクセールさんは元盗賊でベルン峠を根城にしてたって」


 「人に歴史あり、ですね」


 おっさんは昔盗賊だったのか。何となくあの生臭坊主感に頷けるな。


 「なあ、ダリエス。俺たち奴隷ってこの王都から出られるのか?」


 「申請は必要だけど、奴隷単体でなければ出られるよ。本来奴隷は行商を手伝ったりとか、色々と仕事があるからね」


 そりゃそうか。


 「申請には爵位を持つ人の認可状が必要なんだ」


 「あ、トモヤさん……ご主人様はまだお帰りになりません……」


 あの野郎、外交だかで家を留守にしてるんだったな。

 爵位を持つ知り合いなんていないぞ俺には。


 「そこで僕の出番だね。僕のご主人様に頼めばすぐにでも用意してくれる筈さ!今から一緒に行こうじゃないか!」


 ダリエスのやつが物凄いドヤ顔で胸を張っている。ああ、友人を呼べるのがほんとに嬉しいんだな。


 俺達は、ルンルンで歩くダリエスの後に続き、上層街まで戻ってきた。

 結局、こんなに早くダリエスの主人とやらに会わなければいけなくなってしまった。憂鬱だ。


 「着いたよ!ここが僕のご主人様の家さ!」


 ババーン!と音がしそうな勢いで紹介された割に、目の前には普通の家が建っていた。

 日本にあれば4LDKくらいの少し大きい一軒家って感じだな、庭は結構広いが。

 元貴族のダリエスの主人ってくらいだからルドガーの様などでかい家に住んでるもんだと思っていた。


 「ただいまー!」


 おう、思いの外普通に帰るんだな。

 

 「お帰りなさいダリエス……あら、そちらの方々は?」


 「紹介するよ!僕の友達、トモヤとティファさん!」


 「「始めまして」」


 俺達は揃って挨拶をする。


 「まあ!ダリエスのお友達ですか?いつも彼からお話は聞いています。どうぞどうぞ、上がってください!」


 完全に初めて家に友達を連れてきた小学生のノリだ。

 俺達はリビングの様な部屋に通され、ソファに座る。

 この家に使用人は居ないみたいだ。本当に貴族なのか?


 「改めまして私、リーリエット=ラグノリアと申します。この国の第三王女です。リーリアとお呼びください」


 「「王女様!?」」


 ティファとハモってしまった。


 「はい、王女です」


 目の前の女性はニコリと優しい笑顔を俺たちに向ける。

 ティファとは違い、黄金のような金髪を持ち、翡翠色の瞳の女性だ。年齢はわからないけど、俺より少し下くらいだろうか?

 王女と言うだけあって物凄い美人だし気品の様なものを感じる。


 「あの、失礼ですが、どうして王女様が王宮ではなくこの様な家に住んでおられるのですか?」


 ティファが訊ねる。確かに他の貴族の家に比べて質素だよな。


 「ああ、そんなに畏まらないで下さい。ダリエスと接する時のように自然体で構いません。私は、王宮が苦手でして……それに使用人さんたちに全てを任せる様な生き方をしたくないのです」


 「全部自分でやりたいってことか?」


 「と、トモヤさん!」


 ティファが驚いた様な顔でこちらを見る。良いじゃないか、自然体で良いって言ってくれてるんだし。


 「本当に気にしないで下さい。気を遣われるのって本当に苦手なんです。自分の事も満足に出来ない王族が、国民の為に何が出来ましょう?私は国民と同じ立場に立って政をしたいと願っています」


 ふふっと王女様は笑った。


 「ダリエスとはどういった成り行きで?」


 「彼が幼い頃から共に過ごしてきました。言うなれば、弟の様な存在でしょうか。エルムセリス家が貴族落ちしたと聞いて、すぐ様ダリエスを引き取ったのです」


 エルムセリス家、そんな名前だったのか。


 「リーリアには本当に感謝してるんだ。僕の夢だったグラディエーターにもしてくれたし、こうして自由に外を歩けるしね。むしろ貴族だった頃より自由だよ」


 「そうだったんですね。それでダリエス君はいつもご主人様の事、自慢したがってた訳ですか。でもグラディエーターは危険ではありませんか?」


 「私もまさか、ダリエスがこんなにも早く強くなるとは思っていませんでした。本当は危険なグラディエーターには反対するつもりだったんですが、弟の夢を奪ってしまっては姉失格ですから」


 人間出来たお姫様だなあ。

 俺もこんな人の所に召喚されたかったもんだ。仲間と出会えた今となっては不満もあまり無いけどな。


 「あ、ごめんリーリア。僕たち、ちょっと急いでるんだ。今から王都外出立許可証を発行してくれないかい?僕とトモヤの分」


 「あら、外に用事なの?」


 「ちょっと人を探さないといけないんだ。北のベルン峠まで行ってくるよ」


 「そう……きっと、お世話になった人なんでしょうね。わかりました、ちょっと待っていて下さい」


 そう言うとリーリアは2枚の紙を取り出しスラスラと何かを書いた。当然俺には読めないがな。


 「出来ました。これが出立許可証になります」


 彼女は俺に押印された書状を手渡す。


 「ダリエス、ベルン峠には魔物も出るのだから、本当に気をつけるのよ?」


 「わかってるよ、大丈夫心配しないで!」


 魔物?魔物って言ったか?

 キター!久々のファンタジー感!

 遂に俺も魔物討伐デビューか!


 俺達はリーリア邸を後にした。


 「それにしても、ダリエス君のご主人様が王女様だったなんて……」


 「驚きました?でも、気取った所が無くてとても良い人でしょう」


 「はい!とても優しそうで、凄く王女様って感じでした!トモヤさんの乱暴な言葉遣いも気にされてない様でしたし」


 ジッとティファがこちらを見る。


 「なんだよ、気にするなって言われたろ?向こうの厚意を無下にするのも良くないと俺は思うぞ?」


 「トモヤは誰に対しても無礼なだけだよね?」


 誰か無礼だ。

 俺達は他愛もない話をしながら城下へと降りていった。


 ここが、王都ラグノリアの北門か。

 目の前にあるのは巨大な城塞の門。やはり門の向こうはどデカい堀になっていて、橋は跳ね上がるようだ。戦時はこれで籠城するのだろう。

 橋の向こうには広大な草原が見える。

 ああ、ファンタジー感をひしひしと感じる!

 胸が高鳴る!

 これが俺の求めてた異世界転移ってやつだよ!


 「トモヤ、何をニヤニヤしているの?気持ち悪いよ?」


 なんとでも言え。俺は今、向こうの世界で毎日のように妄想していた異世界に、遂に足を踏み入れるんだ!

 俺達は門脇の詰め所で出立許可証を提出し、念願の大草原へと踏み出すのだった。


次回、初の魔物戦です。

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