第二十六話
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それから俺達は幾つかの情報を交換し、透は自分の家に帰っていった。
勇者様は15歳にして家まで持っているらしい。
「それにしても、トモヤが無事でよかったよ」
ダリエスが言う。
「本当に良かったです。フェネクスに乗っ取られている時のトモヤさんは、何だか怖かったですから」
まあ殺しながら笑ってる奴なんて異常者だもんな。
「そういえば、心象世界から帰るとき、ベルゼの奴が何かおかしな事を言ってたんだよな。フェネクスの奴を許してやれ、帰ればわかるからって」
「うーん、わからないけど、多分ランキングの事じゃないかな?」
「そうか?なんか違う気もするが……」
「明日、ルクセールさんの教会に行きませんか?私も患者を見たいので。それにトモヤさんもラーナちゃんとの戦いから5戦も戦っているんです。スキルに何か変化があるかもしれませんよ?」
「ああ、そうだな、試しに行ってみるか。あとラーナの顔も見ておきたい」
「はい!ルーエには顔を出しましょう!」
そうして俺達は休むことにした。
ダリエスが自分の家に帰ってしまって、ティファと二人きりだった事で無駄にドキドキとしていたが、フカフカのベッドに横になると余りの心地良さに一瞬で意識を刈り取られてしまった。
僕はトモヤ、ティファさん、トールさんと別れ帰路についていた。
それにしてもティファさん、何でトモヤに光魔法を使えること秘密にしたんだろうか……
あんなに強いなら何か秘密があるんだろうけど……
僕は少しモヤモヤした気持ちを抱えながら主人の待つ家に帰るのだった。
――翌日
「ふああああ」
漫画のようにでかい欠伸をして俺は目覚めた。一瞬どこかわからなかったが、すぐにルドガー邸だと理解する。
「あ、おはようございます、トモヤさん!」
ちょうどドアを開け入ってきたティファが俺を見て微笑む。
「ああ、おはよう」
「朝食、出来てますよ!ダリエス君ももう来てます」
早いなあいつ。俺はフカフカのベッドを抜け出しティファについていく。
ルドガー邸は思ったより豪邸だった。と言うよりこれはもう城って感じだ。
豪華絢爛な装飾が施され、廊下の幅だけ見ても俺の住んでた1DKくらいの広さがある。
「すっげえな〜」
「ルドガー様は侯爵ですので、お屋敷もそれに見合った物になっているんです。昔はこの家に住むことを凄く嫌がられたんですよ?私はもっと質素で手狭なくらいの家がいい!!って」
ティファは昔を懐かしむように笑いながら話す。
本当に昔は今と別人のような奴だったんだな。
「奴は何の仕事をやってんだ?」
「外交が主ですね。諸外国との交渉ごとや、国家間規模の闘技大会の運営を行っています」
へえ、この世界にもオリンピックみたいな物があるんだな。
「国家間大会は国の威信を示す一大イベントなので、ルドガー様の他にも数名、侯爵の以上の方が取り仕切っています。あ、着きました。ここが食堂ですよ!」
俺の身長の2.5倍はありそうなどでかい扉がある。こんなにでかくする意味ってあるのだろうか。庶民にはわからん。
――ギギッ
重そうな扉を開くと、これまただだっ広い空間の中央にやたらと長い机が置かれている。
既に数人の使用人が食事を始めていた。奴隷である俺を見て嫌そうな顔をする奴も数人いるが、まあそんなの慣れっこだ。
その中の一席には見慣れた少年の姿があった。
「よう、ダリエス、早いな」
「おはようトモヤ、君が遅いんだよ」
テーブルの上には俺達分の朝食が並んでいる。
硬めのロールパンみたいな物と、卵料理にサラダ、スープがある。如何にも朝食って感じだな。ベーコンが欲しい。
俺達は席に付き食事を始めた。
「それにしてもダリエス、お前もどこぞの貴族の奴隷だろ?こんなとこで食事してて良いのかよ?」
「大丈夫さ、ちゃんと許可は取ってあるし、僕はグラディエーターだしね」
「理解のある主人なんだな」
「そう言えばこの前話したときはフェネクスだったんだ……ティファさんにはもう言ったけど、今度家においでよ。僕のご主人様を紹介するからさ」
「えー、行くのか?」
「なんでだよ、フェネクスの時はノリノリだったくせに」
「あいつ、俺のこと全然わかってないのな。貴族の屋敷に呼ばれるだけで億劫だ、ぶっちゃけ行きたくない」
「トモヤさん!せっかくのお誘いを断るんですか?ならトモヤさんは1人牢屋でお留守番ですよ?」
うぐっ……ティファが居ないと街に出られないんだ。修練場に行ってもいいがダリエスが居ないと訓練の相手が居ないんだよな……
「わかったよ、じゃあ透の件が終わったらな」
「そっか!うん!それでいいよ!」
ダリエスの奴はとても嬉しそうだ。友達が居ないって言ってたしな、強くて大人びていてもまだ子供って事だ。
「おや!おやおやおや!?」
なんだ?
「あなた!【轟運の奴隷】殿ではありませんか!?」
誰の事だよ。
キョロキョロするとダリエスが俺を指差す。
謎の二つ名、俺の事なのかよ。
不本意ながら応答する。何だよ轟運って。
「誰だ?あんた」
「失礼しました。私、ルドガー侯爵直属のグラディエーター、スミス=リッケンバードと申します!」
スミスと名乗った男は、とても綺麗なお辞儀で挨拶をして来た。
「スミスさん、いらしてたんですね」
ティファが笑顔で応対する。
「ご無沙汰しております。ティファ殿」
「この方は赤軍の200位ガーディアン【清流の騎士】スミスさんです」
へえ。って200位!?めちゃくちゃ凄い人じゃないのか?
「どうぞ皆様、お見知りおきを。【轟運の奴隷】殿には同じくルドガー様に仕える闘士として、ご挨拶しておきたいと思っておりました。【轟運】などと言うからもっと軟弱な殿方かと思っておりましたが、いやはや立派に闘士になられたようですな」
「そ、そうですか、ありがとうございます」
「同じ赤軍として軍閥戦では共に戦いましょうぞ!それでは、お食事中失礼致しました」
スミスは立派なカール髭を指先で弄りながら自席へと戻っていった。
元気なおっさんだったな。それにしてもガーディアンか、ダリエス以外に初めて見たな。
「スミスさん、とってもお強いんですよ!」
「【清流の騎士】って位だから水魔法を使うのか?」
「そうですね、アクアウィップ……剣先から水を出して鞭のように扱う魔法を得意とされてます」
中距離戦を得意とするタイプか。
色んなグラディエーターが居るんだな、上位に行けばそれだけ強い奴とわんさか当たるのか……すごく嫌だ。
朝食を終えた俺達はルクセールの教会に向かった。
廃墟のような建物から地下へ潜り教会に辿り着く。
「おーい、ルクセール?いないのかー?」
普段なら祭壇前の椅子で豪快に酒を煽っているが、今日はその姿が見えない。
「トモヤ!こっち!」
「どうした?」
見ると、地下の悪魔崇拝用の祭壇への扉が開かれている。
なんだ?ルクセールの奴、地下に行ってるのか?
仕方なく俺達はカビ臭い地下祭壇へと潜る。
「おーい、ルクセール?」
祭壇の前に誰かいる……ルクセールじゃない。
「お前たち、ここの悪魔神官の知り合いか?それとも悪魔信者か?奴は何処にいる?」
目の前に居るのは銀色の鎧を纏い、青みがかった銀髪の女性だった。
その手にはフェンシングで使うようなフルーレが握られている。
「俺達はただの闘士だ。奴隷だから教会に行けずここで世話になっている」
「なるほど、この部屋が何のための施設か知っているか?」
「それは――」
「いえ、知りません。この地下についても、今日初めて見つけて驚いている所です」
ダリエスに遮られた。
「そうか……」
銀の騎士は未だに俺達を疑っている様だが、一先ず剣を収める。
「申し遅れたな。私は、王国聖騎士が一人アレミラ=リッケンバードだ」
「お、王国聖騎士!?」
なんだ?そんなに凄い奴なのか?いや凄そうだけど……
ん?リッケンバード?
「あんた、スミスって人の縁者か?」
するとアレミラと名乗る騎士は露骨に嫌そうな顔をする。
「それは私の愚かな父の名だ。家を捨て、グラディエーターに成り下がった。しかも今は……いやこれはどうでもいい話だな」
因縁深そうな言い方だな。
「す、スミスさんはとても素晴らしいグラディエーターですよ!是非試合を見られると宜しいかと!」
ティファが反論する。
「なんだ?お前たち、父の知り合いか?奴の戦ぶりなど、昔はよく見たものさ。今更何の参考にもならん」
話しぶりからすると王国聖騎士とやらは200位のガーディアンより強そうだ。
透には及ばないんだろうが、それでも指折りの実力者なのだろう。
「そのような事はどうでもいい話だ。それより、ここの神官、ルクセールという男の居場所を知らないか?私が来た時には既に逃げおおせた様でな」
「さあ、俺達も今来たところだ」
「ふむ、もし見つけたら気をつけろ。奴には指名手配が掛かっている。密告があったのだ、罪状は悪魔崇拝」
バレちまったのかよおっさん……




