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第二十四話

今日はもう一話投稿できたら良いなと思ってます。

 ここは……どこだ?

 俺、何やってたんだっけ?


 「目覚めましたか?契約者様」


 その呼び方をする奴はあいつしかいない。


 「悪魔……お前がいるってことは……」


 「はい、貴方はまだご自分の心象世界にいます。あと、私の事はベルゼとお呼びください」


 誰が呼ぶか。


 「おい悪魔、ラーナはどうなった?」


 「彼女ならもう帰りました。契約中の疑似人格は消去され、今は普通の人間として暮らしています。あと、私の事はベルゼとお呼びください」


 そうか、やっぱり消えてしまったんだな……

 俺の胸にやるせない感情が湧き上がってくる。


 「何日経った?」


 「何日かはわかりません。心象世界は時間感覚が曖昧ですので……ただ、貴方はコロシアムという所で900位台に昇格したようです」


 は……?


 「何を言ってるんだ?俺はその心象世界とやらにずっと居るんだろ?」


 「はい、その間に愚かな我が下僕、フェネクスが貴方の身体を乗っ取り好き勝手やっていたようです」


 なんだと?あのクソイケメン鳥……!焼き鳥にして食ってやろうか!?


 「それで、今も俺の身体はフェネクスのボケが使ってるのか?」


 悪魔が何やら不服そうな表情をしている。


 「何故私の下僕である不死鳥を名前で呼び、私を悪魔と呼ぶのですか?」


 「呼び分ける為だ」


 「でしたら私のこともベルゼとお呼びください」


 さっきからあえて無視していたが、何故そんなに呼び名に拘る。


 「ああ、もうわかった!……ベルゼ、これでいいか?」


 「はい!契約者様!」


 「ならお前もトモヤとか適当に呼べ。契約者様、なんて長すぎだしいちいち呼ばれると恥ずかしい」


 「では、トモヤ様と……」


 ベルゼは頬を赤らめる。なに照れてんだこの悪魔!

 不覚にもその美しい顔に見惚れた俺は慌てて話題を元に戻す。


 「それで!今はどうなってる!」


 「はい、ティファという少女がフェネクスの存在に気づき、戦闘状態になったようです。更にそこにダリエス、そして勇者トールが現れ、フェネクスは撃退されました」


 ティファが気付いてくれたのか!ダリエスもありがとな……って勇者トール!?

 異世界の勇者でグランドチャンピオンだろ?なんでそんな奴が……


 「どうやらトモヤ様に話があるとのこと。恐らく召喚についての事ではないでしょうか」


 「お前、やけに外の状況に詳しいよな、それに召喚とかについても知ってるのか……」


 「貴方が寝ている間、寝顔を見ているだけでは暇だったので……」


 ふふっとベルゼは笑う。

 何やってんだこいつ。


 「他に何かないか?」


 「そうですね、フェネクスは貴方が誓約についての記憶を失った事にして上手く立ち回っていた様です」


 なるほど、誓約を忘れていれば多少の違和感は見逃されるってことか。


 「現在は貴方の主人の家で色々と話をしているようですね。すぐにこちらの世界から旅立たれますか?」


 「ああ、どのくらい眠ってたのかも気になるしな」


 「そうですか、残念です。トモヤ様は心象世界に自由には来られないので……」


 「そうなのか?」


 「はい。それと最後に一つ、愚かなフェネクスのことを許してやっては頂けないでしょうか?」


 はあ?何故俺があの鳥の事を許すんだ?


 「彼も貴方の為に動いたのです。どういう事かは起きてから理解できるかと思います」


 「本気で乗っ取るつもりではなかったと?」


 「はい、ですからどうか……」


 「約束はできない。どうなってるかわかってからだ」


 「ふふっ、ありがとうございます、トモヤ様」


 女神っぽい美しい笑顔を向けられる。腐っても元女神か……


 「それでは、またお会いできる時を楽しみに待っております。力が必要になったらお声がけ下さい」


 お声がけってそんな簡単に力を行使できないだろうが……


 「大丈夫、強く『生きたい』と願って下さい……そうすれば……いつ……」

 ……ん?なんか……ベルゼの声が遠くに……


 

 「……つまり……ということ?」

 「……ああ、彼は……」


 話し声が聞こえる。ここは……


 俺はゆっくりと目を開けた。

 見知らぬ天井、何処かわからないが綺麗な部屋だ。心象世界でベルゼが言っていた様にルドガーの屋敷に来ているのか。

 久しぶりに感じるフカフカベッドの寝心地に、このまま起きたくないという衝動に駆られる。

 だって異世界来てからこんなフカフカの布団で寝てないしな!毎日獣の皮で寝てるし!いいじゃんか!

 そう自分に言い聞かせながらも顔を声の方へ向ける。


 「あ、彼が起きたみたいだよ」


 聞いたことのない声、見知らぬ黒髪の少年が俺に気づく。


 「トモヤさん!」


 ――ガタッ

 ティファが椅子から勢い良く立ち上がり、こちらに駆け寄ってくる。


 「大丈夫ですか!?どこか、痛いところか、不快なところはありませんか!?」


 「ああ、むしろこのフカフカの布団でずっと寝てたいよ……」


 「はい、今日は存分にお休みください!ご主人様も帰ってきませんので!」


 主人は帰ってこない……なんとも背徳感のある言葉だ。

 などとやましい事を考えていると――


 「おはようトモヤ。良くも僕の腕を貫いてくれたね?」


 ダリエスが席を立ち、こちらに来て怒りの表情で寝ている俺を見下ろす。


 「ま、待て!それはフェネクスの奴がやったんだろ!?」


 「あれ?トモヤ、寝てる時のこと覚えてるの?」


 「あ、ああ、ベルゼの奴から大体は聞いたよ」


 「なーんだ、それじゃあ君をいじめられないね」


 つまらなそうな顔をしてダリエスが席に戻る。本気で怒っている訳ではない様だ。


 「赤羽智也さん、始めまして。僕は坂上透と申します、2年前、この世界に召喚されて以来勇者をやっています」


 黒髪の少年が丁寧に自己紹介をしてくる。

 俺も、寝たまま自己紹介というのは礼儀がなってないと思い、フカフカベッドに後ろ髪を引かれながらも起き上がる。


 「ご丁寧にどうも、赤羽智也だ。数カ月前にこちらに召喚された。職業は不本意ながら奴隷だ。改まった喋り方はしないでいいよ。年齢は俺が上でも身分は奴隷だし、この世界での実力は君の方が断然上だからな」


 「……わかった。俺はこの世界に来てから異世界人……俺たちの世界から来た人間に会うのは初めてなんだ。出来れば情報の擦り合わせをしたくて……」


 「それは俺もだ。透の話を聞いて、会って話がしたいと思っていた。まさかグランドチャンピオンの君にこんな早く会えるとは思わなかったよ」


 まあティファ達を助けてくれた辺り、俺を探していたんだろうが。


 「それと、俺の友人二人を助けてくれてありがとう」


 「いや、智也さんに用があっただけだから、気にしないでほしい」


 名前はさん付けで呼ぶのな。別にトモヤでいいのに。

 ダリエスといつも一緒にいるせいか、向こうであった年功序列的な意識がほぼ無くなってしまった。

 もし向こうに帰る日が来てしまったら、取引先でやらかして会社を首になりそうだな。

 絶対に帰りたくないな!


 「それより智也さん。貴方はどうやってこちらに呼ばれたんだ?」


 「ああ、ありきたりだけど電車に轢かれてさ。ベルゼって悪魔が現れて契約したらこんなことになってた。まさか奴隷になるとは思わなかったけどな」


 「俺とは……違うんだな」


 「透はどうやって呼ばれた?」


 「俺は……神に願ったんだ。こんな世界に居たくない、どこか別のところに行きたいって。こっちに来る直前、交通事故で両親と妹が死んだんだ。俺の座ってた所だけ無事で、みんなぐちゃぐちゃになってた。俺は絶望したし世界を憎んだんだと思う。何もかも忘れたくなって神に願ったらこっちの世界に来てた」


 2年前……事故……もしかして……


 「多分だけどニュースになってたよ。居眠り運転のトラックと正面衝突して乗用車の一家が全員死亡って……」


 確か、一緒に乗ってた長男は行方不明になっていたはずだ。車から放り出された可能性があるとして捜索したけど見つからなかったとか。

 なるほど、異世界に転移してたなら見つからない筈だ。


 「でも、智也さんの話を聞く限り、俺も死にかけていたのかもな……神にさえ願わなければ家族と同じところに行けたのかも……」


 透は悲痛な表情を浮かべる。

 

 「最低なことに、俺は異世界に転移出来て喜んだんだ。あの事故は夢だった、こっちの世界で生きるんだって。貴方に会うまで、妹や両親の事を心の奥に封印していた自分が恥ずかしいよ」


 そんなもんだろ、人間なんて。仕方ないのだ、大きすぎる悲しみには殆どの奴が耐えられない。

 現実逃避をしなければ心が壊れてしまう事だってあるんだ。

 だがそんな偉そうなことは言えず、俺はただ黙って俯く透を見ていた。

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