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第二十三話

病弱になっております。

日が開きますが投稿していきます。

評価や感想をお待ちしております。

 勇者トール、こんなに近くで見るのは初めてだ。

 光の膜の中、こちらを見る人影は僕とさほど変わらない年頃に見える。

 幼さの中に風格がある。

 この若さでグランドチャンピオンとなった彼が、これまでにどんな生き方をしたかを物語っているかの様だ。


 「大丈夫だった?君、元ガーディアンのダリエス君だよね?」


 僕のことを知っている!正直、飛び上がりそうになるくらい嬉しい。全グラディエーターの憧れであり目標、最強の闘士に覚えられているなんて……


 「は、はい!そうです!でもなんで僕なんかを?」


 「俺より年下なのにガーディアンになった君だからね。おかげで俺が打ち立てた最年少記録を破られちゃったよ」


 彼はにこやかに笑う。もっとクールな人かと思ってたけど、案外取っ付き易い人かもしれない。


 「貴方こそ、その年でグランドチャンピオンだなんて、前代未聞過ぎてその……凄いとか言う次元じゃないですよ!」


 「俺のは……ズルだからさ」


 彼の何処に卑怯な所があるんだろうか?


 「勇者として召喚されたから強いだけで、この世界の人々とは根本的に違う。努力や才能じゃないんだ」


 自嘲気味に彼は笑う。直後――

 ――ズドンッ!!バシュウウウ

 爆音と共に光の膜が消失した。


 「あのさ、君誰?僕を無視してダリエス君とお話とか、凄く勘に触ることしてくれるね?」


 トールは不死鳥を指差して僕に訊ねる。


 「君たちを襲ってるあの人、グラディエーターのトモヤだよね?」


 「え、ええ、そうです。あ、いや、正確にはその身体を乗っ取った悪魔です」


 こんな事を言って信じてもらえるんだろか……


 「なる程、召喚された人は魂か誓約を持つのかな……?僕と彼だけじゃわからないし、もう一人くらい会ってみたいな……」


 何か一人でブツブツと言っている。


 「あの、トールさん?」


 「あ、すまない、彼は悪魔に乗っ取られたんだったね。取りあえず彼を助けようか。あ、そこのお姉さんもね」


 トールの言葉と共にティファさんの身体が光に包まれ、血が止まり穴が塞がる。


 「あ、ありがとうございます」


 「いえ、構いません。こんなんでも勇者ですから。二人とも下がっていてください。」


 そう言うと彼は右手を空にかかげ、何もない空間から光り輝く剣を抜いた。

 不死鳥やラーナと同じ魔法なのだろう、だけど詠唱していない。


 「おい、無視するなよ人間。っていうか君から僕の大嫌いな傲慢で押し付けがましい神共の臭いがするんだけど?お前奴らの下僕の一人だろ」


 「やあ、悪魔さん、悪いけどその人から出ていってくれないか?俺はトモヤさんと話がしたいんだ」


 「はあ?クソ神なんかの下僕が僕に指図ですか?そういうの気色悪いんで死んでくれません?」


 やたらと食って掛かるな、不死鳥の奴。やっぱり神様と悪魔って折り合いが悪いんだろうか。


 「っく!ダークシールド!」


 突如不死鳥が防御魔法を唱える。

 ――ビシュッ!!

 奴の手から放射状に放たれた闇が突如何かに切り裂かれる。


 ――ズガガガガガガ!!

 物凄い勢いで闇の盾が削られていく。


 ――バシュウウウ

 闇魔法が霧散し、不死鳥の姿が見えた。

 左手が切断され、胴体や足にも多数の裂傷がある。

 速すぎて何も見えなかったけど、きっとトールのスキルか魔法なのだろう。


 「痛いなあ急に何するのさ……」


 そう言うと奴は、切断された腕を拾い上げくっつける。

 ――ぐっ

 左手が握り込まれた。もうくっついてしまった様だ。その他の傷も見えなくなり、服だけが破れている、


 「悪魔だけあって生命力は凄いね。ああ、自己紹介がまだだった。俺は坂上透サカガミトオル、この世界では『勇者トール』なんて呼ばれてる」


 「ああ、聞いたことあるよ。神共がやたらお気に入りの異世界人だろ?つまり君を通して見てる訳だ、クソ神共が。僕は不死鳥フェネクス、命を喰らい、永遠に生きる者だ。君もクソ神も全て喰らってやろう!」


 ――ヒュンッ!

 不死鳥……フェネクスが消えた。

 

 ――キンッ!!

 後ろからの斬撃を見ることも無くトールが受け止める。


 ――バシュ!!

 突然トールの身体から光が放出される。


 「ぐっ!?」


 フェネクスは咄嗟に後退するが、光に触れた部分が焼け焦げる。


 「さっきから何なんだい?君は」


 「ん?ああ、『無詠唱』。唯のスキルだよ」


 「へえ、お気に入りさんは随分と優遇されてるんだね?じゃあこれも『無詠唱』とやらで受け止められるかい?……ダークグラビティフィールド!」


 ――ブオオオオ

 トールの立っている場所に黒い空間が作り出される。中がどうなっているのかはわからない。


 「流石に君でもこれはキツいだろう?人間は何倍もの重力に耐えられる程、頑丈じゃないからね」


 ――キンッキンッキンッ!

 甲高い音が聴こえ、黒い空間に光の線が刻まれる。


 ――ガシャァァン!

 黒い空間は砕け散った。


 「確かにすごい魔法だけど、俺には効かないかな」


 フェネクスの顔は驚愕に彩られている。

 ――フッ

 音もなく今度はトールが消えた。その瞬間――

 ――ザシュ!


 「かはっ」


 トールの光る剣がフェネクスの心臓を貫いた。速すぎて僕には結果しか見ることが出来ない。

 トールは剣を引き抜き、膝をついたフェネクスを見下ろす。


 「終わりかな?悪魔さん。早くその人から出て行ってくれよ」


 「この……クソ下僕野郎が……!」


 フェネクスは手を胸に当てると立ち上がった。


 「今ので『1回死んだ』じゃないか、どうしてくれんだよクソ下僕野郎……」


 「ああ、そういうタイプの不死なのか。じゃあ死ぬまで殺し続けてあげよう。それが嫌ならトモヤさんから出て行ってくれよ」


 「舐めるな下僕が……!ぐっ!?」


 見えない程の速度でもう一度フェネクスの心臓が貫かれる。


 「これで2回、あと何回なんだ?」


 そこからは一方的だった。フェネクスが再生してはトールが刺す。何度か反撃を試みるフェネクスだったが、トールには一切の攻撃が効かず結局殺される。はっきり言って人間同士の戦いではない。

 そしてちょうど12回目の攻防が始まった――


 「はぁっはぁっこのっ下僕野郎!」


 フェネクスは憎悪に満ちた表情でトールを睨む。


 「息が切れてるね、悪魔さん。そろそろ持ってる命は使いきれそうかい?」


 「黙れぇ!!もういい、存在ごと消し飛ばしてやる!!ダークメテオレイン!!」

 

 薄暗い夕闇に、それよりも黒い点が無数に浮かび上がる。

 聞いたこともない魔法だけど、きっとあの無数の黒点が全て魔法だろう。だとすると僕たちだけじゃなくこの辺り一帯が危ない……!

 

 「まずい!どうにかしないと……!」


 「大丈夫、二人とも俺の後ろに下がってて」


 どうするつもりなんだろう?

 

 「ふっ」


 軽く息を吐くと光の剣を横薙一閃――

 ――ズドドドドドドン!!

 剣閃から放たれた光と落ちて来る闇の相殺による爆発が幾重にも巻き起こり辺り一帯を照らす。昼間のような明るさだ。

 無数の黒点はトールのたった一振りによって、全て撃ち落とされた。

 

 「これでおしまいだよ」


 ――キンッ!!

 鋭く甲高い音が聴こえた。


 「がっ、あがっ……」


 勇者から不死鳥まで20メートルはある。

 彼はその場から一切動いていないが、不死鳥の胸……心臓部分に巨大な穴がポッカリと空いている。

 

 「下僕の癖に……!よく……も……!」


フェネクスが左手を胸にかざす。


 ――ドクンッ

 既に無くなった筈の心臓から鼓動が聴こえた。

 まだ再生できるのか!?

 するとトモヤの背後からどす黒い霧のようなものが立ち上る。


 『勇者トール、覚えたからな……』


 夕闇に紛れてそんな声が聴こえた。

 

 「逃げたか……」


 「トモヤさん!!」


 ティファさんが駆け寄りながら崩れ去るトモヤに回復魔法をかける。

 彼女はどれだけ高位の魔術師なのだろう。光魔法すら扱える様だし。


 「トモヤさん!起きてください!」


 「大丈夫、彼は寝ているだけです。契約した悪魔が休眠状態になっているから起きないんですよ」


 トールはにこやかに笑う。


 「あの、助けていただいてありがとうございました。ですが、あの悪魔がもし逃げなければトモヤさんごと殺してしまうところでしたよね?」


 ティファさんがトールに訊ねる。その目は怒りの色を帯びている。


 「その時は俺が治してました。逃げてくれて良かった。それに貴方も彼を治せるでしょう?」


 「そう、ですね……すみません、助けて頂いたのに……」


 「いえ、こちらも何も言わずに勝手をしてすみませんでした。取りあえず、どこか休める所を探してトモヤさんを寝かせましょうか」


 「あ、それなら、ルドガー様のお屋敷にどうぞ。今屋敷の主人は外交に発たれておりませんので……」


 僕らは、トモヤを背負ってルドガー宅に向かうのだった。

 

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