第二十一話
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【氷雪の魔術師】との試合から俺はすこぶる順調だった。
ここまで、4戦全勝、トータルの試合結果を見ればダリエス戦以外全て勝ったことになる。獲得ポイントは15ポイント、ランキングは1012位まで上がっていた。
「トモヤ、そろそろガーディアンに挑んで良いんじゃないかな?」
――ズドンッ!!
ダリエスが拳を俺に叩き込みながら言う。
「そう、だな!そろそろ良い頃合いか」
盾で拳を押し返した所で今日の組手は終わりにする。
青軍ガーディアンはダリエスより弱いみたいだし、だいぶ強くなった今の俺ならいけるか?
ちなみにダリエスは一足先にガーディアンを無傷で倒して999位で待っている。
ランキングが俺より低かった彼だが、ガーディアンの挑戦権はポイント1ポイント以上……つまりそのランクで勝てる事を証明すれば良いだけなので、本来もっと上の実力であるダリエスは先に行ってしまったと言う訳だ。
青軍も赤軍も最近は1000位のガーディアンが一定ではない。青に関しては言うまでもないが、赤も最近殺されてしまってからガーディアンの押し付け合いになっているという。
面倒に巻き込まれる前にランクアップしてしまおう。
「そう言えば、ダリエスは赤軍のガーディアンにならなくて良かったのか?」
「ならないよ。僕は弱いからね」
そんなことはないだろう。少なくとも、1000位のガーディアン相手に無傷ってのは900位台も余裕で戦えるって事だ。
「青軍にいた頃、最年少ガーディアンとか呼ばれて浮かれてたんだ。自分より弱い人を上に上げないことで守ってるつもりでいた。でも本当は、楽に勝てて褒めてもらえる立場に居たかっただけで、正義なんて何もなかった」
美少年と呼べる栗毛の少年は、自嘲の笑みを浮かべている。
それは俺も変に思っていた。たしかに上のランクの方が死ぬことも増えるだろうが、1000位台だって毎日数人は死んでる。
彼は怖かったのだ、上に行って通用しなくなる事が。
だから安全なガーディアンをやって、自分の尊厳を守っていたのか。
「みんなグラディエーターなんだ、命懸けで戦ってる。それを冒涜するような真似はもうやめるよ。僕も命懸けで上を目指す、トモヤと一緒にね」
ニコリと笑う。
「僕には魂スキルも魔法適正も……誓約スキルも無いけど、ランキングの上を目指して自分なりの特別を見つけて、今度こそ本当の意味で人を守るんだ」
その言葉には、誰かを救えなかった後悔のようなものが混ざっている。
きっと赤髪の少女のことを思っているんだろう。
忘れてしまっている俺にはどうすることも出来ず、ただ隣に立つ。
彼の可愛らしかった顔は、いつの間にか精悍な男の顔に変わっていた。
――後日
俺は青軍ガーディアンと戦った。特に言うことは無いような戦闘だったが、やはりと言うか俺は青軍ガーディアンを殺した……またあの声が聴こえたからだ。
「トモヤさん、ランクアップおめでとうございます!」
ティファが笑顔で祝福してくれる。
俺たちは下層三番街の店『ルーエ』にお邪魔していた。
テーブルを囲むのは4人、俺とティファ、ダリエスと何故かルクセールだ。
前はラーナがここに加わっていたらしいが、彼女は店で忙しそうに働いている。
16歳の割にしっかりとした面倒見の良い女の子だ。ん?以前真逆のことを考えた気がする……気のせいだな。
「それにしてもトモヤ、お前最近は鬼神のごとくって感じだな?」
ルクセールが蒸留酒を飲みながら訊ねてくる。
「そうか?確かに全勝してるけど、そんなに戦闘も変わってないだろ?」
「おいおい、5連続で殺害ってのはなかなかある事じゃないだろ」
「そうだね、僕もそれは気になってた。トモヤは最近、止めを刺しに行くよね、どうして?」
何故か責められるような構図になる。
「おいおい、勘弁してくれよ。元々グラディエーターってそういう職業だろ?今さら殺すのは良くないとかそういう話をするのか?」
「いや、ポイントも多いし殺害が悪い事とは思わない。相手だってそのつもりで来てるわけだからね。でも、トモヤの場合、今までがそういう戦い方じゃなかったからさ」
「もしかして、誓約が発動してんのか?」
ルクセールの顔つきが変わる。
「そんなことないよ、いつも通りの俺だ。誓約スキルって自我を失ったりするんだろ?なら発動してないと思うぞ」
正直わからない。
あの声は毎試合聴こえるし、俺は誓約スキルが何か忘れている。
ルクセールが俺から聞いた話だと鼓動がやたらと強くなって身体が勝手に動くそうだが、そんな事はなく、俺の意思で体を動かしている。
特徴が一致しないのだ。誓約スキルが変質したか?
でもこの前調べた時はやはり休眠状態だった。誓約は発動していないと見るべきだろう。
そんな考えを巡らせ俺は適当に話を流す。
「勝たないと金ももらえないし、一番わかりやすい勝ちだからな」
何時もの店で祝勝会を終え、俺達は帰路に着く。
ルクセールはすぐ七番街の方へ行ってしまったから3人だ。
「早いもんだね」
ダリエスが口を開く。
「僕がトモヤと戦って、牢屋でティファさんと出会って、そこからもう2ヶ月近く経ってるんだよ」
そうか、そんなになるのか。2ヶ月で多くの戦いを経験した、良くここまで生き延びたもんだ。
「今度さ、二人とも僕の主人の家に来ないかい?」
「ダリエスさんのご主人様ですか?」
「そういやダリエスってどこに住んでるんだ、2ヶ月一緒に居たのに知らないんだが」
「それは今度連れてくから内緒だ。すごく良い人だよ、僕の自由外出を許可してくれてるし、奴隷なのに試合も選ばせてくれる」
どっかの顔も見せないおっさんとは大違いだな。そういやルドガーって生きてんのか?まあティファが普通にしてるって事は生きてるんだよな。
「良いご主人様なんですね、では今度、トモヤさんとお邪魔します」
「うん、是非!じゃあね!二人とも!」
そう言うとダリエスは中層の居住区へと走っていった。
あっちの方、行ったことないな。ダリエスはあの辺に住んでるんだろうか。
二人だけになる。何だろう凄く久しぶりな気がする。
最近は専らダリエスとの訓練で地下に籠っていたし、外に行く時も基本3人だ。
男同士話しやすいから、ついダリエスとばかり話してしまうし……
会話がない。
あれ?こんな感じだったか?ティファとは普通に喋ってたと思うんだが、何も言葉が出てこない。
チラリと隣の彼女を見る。
白金の髪が月明かりに照らされ輝いている。
少し俯く彼女の瞳は吸い込まれそうな薄紫色をしている。
よく見るまでもなく美少女だ。2ヶ月も一緒に居て今さら意識するのもおかしい話だが、何故だろう、ドキドキしている。
「トモヤさん」
急に声をかけられ、その澄んだ声に思わずたじろぐ。
「な、なんだ?」
どもるな俺……カッコ悪いだろ。
「改めて、ランクアップおめでとうございます」
「うん、ありがとう。ティファのお陰だよ、怪我しても綺麗に治してくれるからな」
「そう、ですか。それなら良かったです」
間が持たない。
彼女は少しだけ先を歩く。
「トモヤさん」
俺は前の彼女に聞こえるようにさっきより少しだけ大きく返す。
「なんだ?」
今度はどもらず言えた。
振り向いた彼女の目は月明かりを吸って淡く光る。
――タッ!
ティファが俺に飛びついてくる。なんだ急に!?
――ドクンッ
俺は焦った、これはあれか?愛の告白とかそう言う――
――ピシャッ
え?
「あなたは、誰ですか?」
俺の胸に1本の刃が突き立てられる。
少女の目には強い光が宿っていた。




