第十六話
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熱い、闘技場から俺たちのところまで結構な距離があるが、【緋色の魔女】が放った炎がこちらの肌を焦がしている気さえしてくる。
『出たー!!『獄炎の牢獄』!!初戦からここまで10戦!!全てこの技で敵を逃げられなくしてから屠っております!!』
10戦……俺より後にデビューして俺の倍以上試合してるのか、なんつうハイペースだ。
【ファットボーイ】は慌てることなく鉄球を回し始める。なるほど、あの鉄球を投げつけるのか。某ロボットアニメのジェット付きハンマーみたいなもんだな。
――ビュンッ!!
【ファットボーイ】が鉄球を放つ。豪快な風切り音がここまで届く。
必殺の鉄球が大量の炎の壁を貫き、【緋色の魔女】を探し当てる。
魔女はその場から1歩も動くことなく刺突剣を前に突き出すと、鉄球を『ピタリと止めた』。
は?明らかにおかしな光景に目を疑う。
――キンッ!ズドオォォン!!
軽々と弾かれた鉄球が奥の壁に直撃し観客席を揺らす。試合が長引くと観客席が崩れそうだな。
「あれは、魔力で刺突剣を強化しているね」
ダリエスが目を細めて言う。
「300位台の魔術師ならみんな使う方法だけど、1000位台でそれが使えるのは正直規格外だと思う。他にも向上スキルが複数あるんじゃないかな、恐らくは魂持ちだね」
確かに、こんな人間離れしたファンタジーな戦闘は初めて見た。
ダリエスの破壊力はファンタジーだが、動きそのものはそこまで現実離れしていないと思う。
だが片手であの質量を弾くのは物理法則を無視しすぎている。
「挑戦されたくないなあんなのに……」
「僕もゴメンだね……」
魔女が空いている左手を前に突き出す。
ボボボンッ!
掌から炎の玉が3つ放たれ、螺旋を描きながら【ファットボーイ】に向かう。
【ファットボーイ】はその巨体に似合わぬ速度で炎の玉を避ける。
しかし、炎の玉はそれに合わせ軌道を変え……
ボシュッ!!
『ぎ、ぎぃやゃああああ!!!』
【ファットボーイ】の右腕に炎が巻き付き、その腕が溶け落ちた。彼の傷口はマグマのようになり、血ともマグマともわからない何かがこぼれ落ちている。
火力が高すぎて炭化する前に溶かしてしまったのか……あれはもう助からないな。
溶けた腕から火が上がる。男の悲痛な断末魔が会場中に響き渡る。ティファはその恐ろしさにきつく目を閉じ耳を塞いでいる。
ダリエスも目を逸らしたいのだろうが、必死に見つめ何かを研究しているようだ。
会場では燃えさかる男を見て大歓声が上がっている。やはりここの観客は異常者ばかりだな。
魔女は未だに続く断末魔を背に歩き出した。せめて止めを刺してやれば良いものを……
こうして一方的すぎる試合は終わった。
俺達は何時ものようにルーエに来ている。
「はぁ~……なんも参考にならなかった~……」
「トモヤはどうしてこんなに落ち込んでるの?」
ラーナが項垂れる俺の頭をツンツンと突いている。
「近い内に戦う相手がやたら強くてね……ちょっと勝ち目が見つからないんだよ」
「あんな炎、どうしろって言うんだよ」
触れば即溶ける。そんなのありか?
「あれは……魔力の炎です」
珍しくティファが口を開いた。あまり戦いについては話したがらないんだけどな。
「きっとあの赤軍のグラディエーターさんは魔力耐性が低すぎたんだと思います。魔力耐性を上げればあそこまでの被害は受けずに済む筈……です」
「簡単には言うけど、どうやって上げろって言うんだ?」
「最も簡単なのは魔法をその身に受けることです」
そうか、ダリエスとの稽古で打撃耐性が付いたように、受けた攻撃に対応する耐性スキルが覚えられる訳か。
「確かに、下位のグラディエーターは魔法と戦う機会って殆ど無いもんね……」
ダリエスが頷く。
「ですのでトモヤさん、魔法をたくさん受けましょう!」
「簡単に言うけど、どうやって魔法を使えるやつを探すんだよ……あっ」
居たじゃないか、すぐ近くに、魔法が使える奴が。
「ラーナ!」
「何?トモヤ」
むしゃむしゃとサンドイッチを食べる少女はこちらを無垢な目で見つめてくる。
「お前、いつも何か食べてるよな」
「そんなことないよ!?女の子に食いしん坊みたいなイメージを勝手に付けないの!」
間違ってないと思うが……
「そうじゃなくてな、俺の稽古に付き合ってくれないか?」
「どうしてラーナちゃんなんですか?」
「ああ、それはこいつが……」
「わー!わー!わー!トモヤストップ!」
「なんだよ、あ、そう言うことか、すまんな」
カウンターには店長もいるからな、バレるのが怖いんだろう。
俺達は店を出て三番街にある空き地に向かう。以前探索をして見つけた穴場スポットだ。
「ラーナは風の魔法が使えるんだよ、だからこいつに頼もうかと思ってな。他に攻撃魔法が使える知り合いなんていないし」
「そう言うことだったんですね!ラーナちゃん、凄いです!」
「えへへ、それほどでも~」
ラーナが照れたように頭をかく。
「威力の調整は出来るけど本当に良いの?かなり痛いとは思うよ?」
「ああ、気にするな、どんどん打ち込んできてくれ、ラーナが疲れたら休憩でいいからな」
「トモヤ、なんだか変態みたいだね、ラーナちゃんに痛め付けられたいみたいに見えるよ?」
「ばっ!違うわ!何時も何時も何でそう俺に変なレッテルを貼りたがる!」
ダリエスの奴にはいつか復讐せねばなるまい。
「わかった、じゃあ弱めの魔法から行くよ?エアロブラスト!」
ゴウッ!ドスンッ!
「ぅぐぉあ!?」
何だこれ、アホみたいに痛いぞ……!!
ダリエスの拳と同じかそれ以上だろ!
「ご、ごめんね!?これでも一番弱い魔法なの!」
「だ、だ、大丈夫だ……続けてくれ……」
それからは毎日、来る日も来る日もラーナに魔法で痛め付けてもらった。決して嬉しくはないぞ、辛いだけだった。
1週間後、俺はレクセールのところに来ていた。
「お前さんもよく来るな、スキルがそんな一朝一夕で身に付くわけねえだろ?」
「とりあえず、試しに見てくれ」
「銀貨5枚」
くっ、高えよ!じじい!
「ほら、これでいいだろ」
銀貨を言われただけ渡す。
「毎度あり!でもお前、前回と変化がないからって返金はしねえからな?」
「わかってるよ、頼む」
何となく確信はあった。ここ数日、ラーナの魔法に打たれた際の痛みが減ったのだ。恐らくスキルが習得できている。
「お前さん、すげえな2つもスキルが発現してるぞ」
「2つ?1つじゃないのか?」
「1つは武技、リフレクトマジック、盾のスキルだな。魔法を跳ね返す希少なスキルだ、使える奴には心当たりがあるから紹介してやる。もう1つは常時発動型、魔力耐性2だ」
魔法反射スキルか!物凄い便利なものを手に入れたらしい。これは魔女との戦闘で役に立ちそうだ。
それに魔力耐性が1じゃなく2だったのも嬉しい誤算だな。まさかラーナとの修行でここまでの効果があるとは思わなかった。あの子のお陰でなんとか生き残れる道が見えてきたな……
ルクセールの教会を後にした俺は、奴の紹介で六番街に来たのだが……
「リフレクトマジックが使える奴ってあんたか、ランバルト」
「おうよ、昔はよく魔法使い共と死闘を繰り広げたもんだよ。【魔法破りの鍛冶師】なんて呼ばれてな」
「あんた、もとグラディエーターなのか?」
「まあな、この街じゃ珍しくもねえさ。何にせよ、教えてやるよ、リフレクトマジック」
俺は店の外に行きランバルトから新たなスキルを学んだ。
「それにしても、トモヤの次の相手って噂の魔女なのかよ。下層街でも大分有名になってるぜ」
「そうなのか、でもまあできる限りの魔法対策は積んだからな、死なないよう努力するよ」
「本当に『出来る限り』か?お前さんの装備じゃ、いくら魔法耐性を高めようが一発で溶けて無くなっちまうぞ?」
まじかよ、普通ゲームとかでは魔法耐性があれば武器防具には影響しないだろ!
「そこでだ、俺からプレゼントがある。同じスキルに目覚めたよしみだ」
ランバルトが壁に掛けられた盾と鎧を外して持ってくる。
「これは魔力鉄鋼を使った盾と鎧だ。魔力の炎には高い耐性を示すと思うぜ、今のお前なら鎧を来ても普段と同じように動けるだろ」
確かに、腕力向上や速度向上を覚えたから今なら鎧が着れそうだな。
「良いのかよ?これ、結構希少な装備なんじゃないのか?」
「気にすんな、お前はちゃんと代金を支払ってくれるタイプのグラディエーターだからな。死なれちゃ困るんだよ」
「ランバルト……ありがとよ……大事に使わせてもらう」
「ああ、良いってことよ……金貨15枚だ」




