第十三話
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――誓約、俺はあの瞬間誓約を交わしたのか……あの美しい悪魔と……
悪魔に魂を売る行為がどれだけ危険なのかは分からない。だが、少なくとも今の俺の身体に異常が起きてるとは思えない。
「誓約スキルは、使うことで何か代償を支払うのか?」
「そうだな、先ずは魂と誓約の違いから話すか……」
レクセールの話を纏めるとこうだ。
魂は神のスキル、それぞれの神が自分の気に入った人間に魂を分け与え力を貸す。神の力の片鱗を行使でき、代償は無い。何ともお得なスキルだ。
誓約は悪魔のスキル、悪魔の力を必要とする人間を見つけ、誓約を持ってその魂を奪う。人間は奪われた魂を対価に悪魔の力を得る事ができる。発動の度に対価を支払うが、その効果は大きい。
「お前さんが契約した悪魔は恐らく、ベルゼ……冥界の女王と呼ばれる、元女神だ」
ギリシャ神話の冥界の女王……ペルセポネ?ハデスの嫁の?
「それってザクロの実を食った奴か?ハデスの嫁の……」
「ん?ベルゼは神話上では独身のはずだ。それにザクロってなんだ?彼女は元々生命を生み出す女神だったが、主神の怒りによって冥界に落ちた。その後悪魔となり、冥界を支配するに至った訳だ」
俺の世界の神話と違うんだな、名前が似ているだけか。
「根源的には悪じゃない。お前さん、死にたくないと願ったろ。だから死を遠ざけるためにベルゼが現れたんだ」
確かに電車に轢かれそうになった時、死にたくないと願った。つまりベルゼって元女神は俺を助けるために現れたのか?
「勘違いすんなよ?結果的にあんちゃんのことを助けちゃいるが、相手は悪魔だ、魂スキルのように便利な訳じゃねえ。実際、誓約の力を使って死んでいった奴等を大勢見てきた……悲惨なもんだったよ……」
そりゃ悪魔との契約だもんな、リスクはある。だけどそれを使わなきゃ生き残れないなら仕方ない。
「で、スキルの発動条件ってなんだ?」
――ガタッ
レクセールが身を乗り出す。
「わかってんのか?使ったらいつか死ぬんだぞ?』
「でも非力な俺は使わなきゃ生き残れない」
しっかりと目を見据えて言う。
「はぁ、わかった、覚悟はしてんだな。発動条件は強く『死にたい』と願うことだ」
『死にたい』?『生きたい』ではなく?
「あんちゃんが死にたいと願う魂そのものをベルぜが食らい、生きたいという魂を直接ぶち込んでるんだ。元は生命の女神だからな……」
結局、俺の持ってた物は命を削るものだった訳だが、それでも特別であることに変わりはない。
きっとこの頃の俺は浮かれていたんだろうと思う、やっと自分が特別になれた事に……
――レクセールの教会を後にした俺は下層街で迷っていた。
「考えてみたら俺、治療院の場所知らないじゃんか……」
下層は中層と上層を合わせたくらいの広い面積があるらしい。中層だって一日で全然歩ききれなかったのに、その倍近くある街の中から1つの施設を見つけられるのか?スマホがほしい……
「あの、この辺りに治療院ってありませんか?」
道を行くおばさんに声をかける。
「ええ?……ああ、ティファちゃんのとこだろ?三番街にあるよ」
俺の顔を訝しげに見た後、納得したような様子だ。奴隷だからか?
「三番街って言うのは?」
「なんだい、あんた貴族落ちかい?今いるのが七番街、あっちにずっと歩いて行けば三番街だよ、途中の五番街は治安が悪いから気を付けなね」
「そうか、ありがとう」
とりあえず言われた通りに進む。しばらく歩いたところにアーチの様な物があり文字が書かれている。読めないが。
商店街みたいだな……
教会のあった街より店が多い気がする。中層のバザーより露店が多く、少々怪しげな雰囲気だ。
きっとここが隣町……六番街と言うことだろう。
この距離をあと4回分歩くのか、随分遠いな。
――ぐうううう
盛大に腹が鳴った。
ダリエスとの試合が朝一であって、今は昼過ぎか?体内時計的には午後一時って感じだ。
俺は手元の小銭を見る。銅貨12枚、飯を食うぐらいはあるだろ。
立ち並ぶ露店の中で、旨そうな匂いがする方に自然と足が向く。
――ぐいっ!
急に腕を引っ張られる、誰だ?
「お兄さん、お腹空いてるの?なら家においでよ!」
見ると俺の横を一人の少女が歩いていた。
年齢は15歳くらいだろうか、燃えるような真っ赤な髪の毛が特徴的だ。ちょっとつり目がちの美少女だな。
異世界に来てから可愛らしい年下に出会うことが多い、ダリエスは男だが。
運命を司る神がいるなる、俺をそっちの道に引き摺るのは止めていただきたいものだ……
「おい、客引きなら止めてくれ、俺は大して金も持ってない」
治安の悪い街の美少女とか、悪質な客引きか美人局だろうと勘繰ってしまう。
「大丈夫!うちは良心的な値段だよ!お腹一杯食べて銅貨5枚!安いでしょ?」
「悪質なのは大抵安い安い言うもんだ。大体なんで俺なんだよ、奴隷紋が見えないのか?」
あっちの世界もそうだった。夜の繁華街を歩けば『オニイサン、ヤスイヨヤスイヨ!』って、大抵悪質な風俗店だ。
「お兄さん、グラディエーターでしょ?ならお金あるかなって」
「何で知ってるんだ」
「風の噂ってやつだよ!それに私の家、三番街だからさ、五番街を通らなきゃいけなくて、ボディーガードってやつ?ご飯は無料にしてあげるから!」
タダか。それはいいな、それに……
「お前、ティファって女の子の治療院を知ってるか?」
「え?ティファ先生?知ってるよ、家のお隣だもん!」
キタコレ!これで迷わずたどり着けるな。それにティファの顔見知りなら恐らく平気だろう。
そうだ、飯代が浮くなら武器を買うか。下層なら買えそうだよな。
「ティファの所に連れて欲しいんだ。はぐれちまってな。あとお前、この辺で武器屋とか知らないか?ボディーガードしてやりたいのは山々なんだが、この通り今は丸腰で……」
「武器屋?それならこの六番街にいいお店がある!安いし品質は確かだよ!あと私はお前じゃなくてラーナ!」
「ラーナ、俺はトモヤだ。そしたら案内頼めるか?」
「うん!」
俺はラーナと言う少女に手を引かれるまま武器屋へと向かった。
それにしてもこの子、見た目の割には幼いというか……ダリエスよりも年齢が下に感じるな。
――カランカラン
まるで喫茶店のような扉を開け中に入る。
壁には大小様々な刀剣や弓、鎧が掛けられていて、如何にも異世界の武器屋といった感じだ。
「おじさーん!お客さんだよー!」
ラーナが叫ぶ。するとカウンターの奥からかなり大柄の浅黒いおっさんが出てきた。
身長2メートルはありそうだ……
「おう!ラーナの嬢ちゃんじゃねえか!どした?」
「この人がね、あ、グラディエーターなんだけど、剣が欲しいんだって」
「なに?グラディエーター?」
浅黒いおっさんが俺を上から下までジロジロと眺める。
「金は、持ってなさそうだな」
ルクセールと言い俺ってそんなに金無さそうに見えるか?いや、無いけども。
「どんな剣だ?長剣か?短剣か?それともタルワールみたいな曲刀か?」
「そうだな、無難に直剣が良いかな。長さは俺に合いそうなやつを頼むよ、長剣スキルが使えるくらいで」
「そうか、ちょっと待ってな」
そう言うとおっさんは奥に引っ込んだ。
「ランバルトさんはね、強面だけど凄い良い鍛冶職人なんだっ!お金が無くても必要な人には分割で売ってくれるよ!」
ローンが組める武器屋か……いいな。
世話になりそうだし武器屋じゃなくてランバルトさんと呼ぼう。
すると奥からランバルトが戻ってきた。
「これなんかどうだ、オーソドックスなブロードソードだ。重みはそこそこあるが幅広の刀身は頑丈で歯こぼれもしにくいぞ」
試合で使った錆びた長剣に比べると物凄い頼りになりそうだ、ピカピカの刀身に心が奪われてしまう。
「どうだい?長使いにはいいと思うがね」
「でも、お高いんでしょう?」
思わず通販番組みたいなことを言ってしまった。
「そうだな、銀貨15枚、これでも破格だぞ?」
「所持金の100倍以上だ……」
「ま、だろうな。だが、グラディエーターならすぐ稼げるだろ?」
「そんなまさか、初戦のファイトマネーなんて銅貨25枚だぞ?」
「そりゃおめえ、相手があり得ないほどの雑魚か怪我の治療代だろうよ」
なるほど、それでか!てっきり物凄い低賃金のブラック職業かと思ったよ!
「いいぜ、ファイトマネーからの支払いで」
「それはありがたいけど、俺が死んでしまったらどうするんだ?」
「その時はその剣を回収するだけよ、剣にはそれぞれ銘が入ってるからな、持ち主が死んだら作り手の元に戻るって寸法よ。作り手も死んでたら弟子か、国庫行きだけどな。だからなるべく折るんじゃねえぞ?」
「わかったよ、しっかり支払い切ってやるさ」
借金残して死ぬのも後味悪いからな。
「おめえさんが死なねえように盾もおまけしてやる。あんまり筋力は無さそうだからこのスモールシールドだな。小さいが防御力は優れてるし軽い、持つよりも腕につけてやると扱いやすいぞ」
「おまけ!?ありがとよ!ランバルトさん!」
「ああ、銀貨10枚だ」
ちゃんと金は取るのかよ……
こうして俺は異世界初の武器を手に入れ、ラーナと店を後にするのだった。
神官のの天啓や囁きは、下級の神、悪魔がスキルの詳細を教えてくれる特殊なスキルです。
魂スキルの場合は何故神に選ばれたのか、誓約スキルについては何故悪魔が呼ばれたのかまで細かに教えてくれます。
便利ですね。




