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第十二話

PVが400超えそうです嬉しくて禿げそうです。

これからもお願いします。

 神父のおっさんは、ここに来て一番の険しい顔をする。


 「まず、お前の武技、発動型スキルについてだ。『円月斬り』『散花』『狼撃』この3つだ」


 3つ?そんなに使えないはずだが……


 「『散花』と『狼撃』については、習得条件を満たしているだけだ。誰かに教えてもらえ」


 そう言うことか、全てが『円月斬り』のように閃く訳じゃないんだな。


 「続いて、常時発動スキル……『視力向上1』だけだ」


 視力向上、確かに、迫り来るナイフや拳を見極められる程、転移前の俺は強くなかったな。


 「魂スキルについては?」


 ダリエスが訊ねる。


 「魂スキル?なに言ってんだ?そんなもんねえよ、以上だ以上!」


 「そんな筈はないですよ!僕はこの身に受けたんです。彼の魂スキルを!」


 「ったく、これだから夢見勝ちな坊やは困るんだよ。いいか?魂スキルってのはな、『選ばれた一握りの才能』なんだ、簡単にポンポン出てくるもんじゃねえの」


 『選ばれた一握りの才能』、その言葉に俺の足下が崩れていくような感覚を覚えた。

 俺はどこかで期待していた。異世界に召喚され、自分が奴隷という事実に落胆した。しかし、眠れる力みたいな物があることが分かり、自分も特別な何かになれると思い込んでいた。

 ――だが現実は違った。

 魂スキルなんて希少なスキルもなければ、魔法適正だってない。ただの一般人だ、転移前と何一つ変わっちゃいない。

 結局ここでも、俺は町人Aから変われないのか……むしろ奴隷Aになった分ランクダウンだ。

 心の中で自分を嘲る。それでも心のモヤモヤは取れない。

 でも……確かに俺は一般人だが、ダリエスや初戦の盗賊と戦った時の力は現実に存在している筈だ。

 一度目のことはもうあまり覚えていない。勝手に身体が動いて、盗賊の男にとどめを刺した。

 二度目はもっと不思議だった。自分が別の場所にいるような感覚……俺とダリエスの死闘を俯瞰していた。

 あの二度は何だったのか、臨死体験のような物……火事場の馬鹿力だとでも言うのか?俺にはもっと異質な物のように感じられたんだ。


 ダリエスはまだ神父に噛み付いている。自分が手傷を負わされた相手が唯の一般人ということに納得できないのか、もしくは友人として庇ってくれているのか……


 「とにかく、この話は終わりだ。そこで呆けてるあんちゃんは唯の、一般人だ!」


 「そんな、そんな筈は無いんです……あの力は……」


 ダリエスも意気消沈といった様子だ。


 「はぁ、まあそう落ち込むことはねえ、グラディエーターとしてやってくならこれから幾つものスキルを習得するさ。その中で神々とやらに見初められれば『魂持ち』にだってなれるかもしれんぜ?後天的な魂の獲得はこれまでだってあったんだからよ」


 「そう、ですよね……取り乱してすみませんでした……」


 ダリエスが頭を下げる。俺の事でこんなにも落ち込むなんてな。

 彼と会ってまだ一日なのに、本当にいい友人になれそうでよかった。これで軍閥が同じなら最高だったんだけどな。


 「さあ、帰った帰った!今日は早いが店仕舞だ!ガキは帰って飯食って寝な!あんちゃんはどうする?酒でも飲んでくかい?」


 明らかに作ったようなテンションで肩を組まれる。


 「……お前はここに残れ、一人でだ。話がある」


 耳元でドスの効いた声がして、思わず身体が縮こまる。

 何だ急に……


 「今日は、ありがとうございました」


 「ダリエス、下層の診療所って知ってるか?」


 「うん、わかるよ……」


 「そこに先に行っててくれ。ティファもおぶって連れてってくれると助かる」


 「良いけど、トモヤはどうするのさ?」


 「俺はちょっと酒でも飲みたい気分なんだ。流石に期待した魂スキルがありませんでした、ってのは落ち込むしな。おっさんと一杯やったら追いかけるよ」


 「わかったよ、ごめんね、僕が過度に期待させてしまって……」


 「いや、お前のせいじゃないぞ、俺は元々管理部長のおっさんに言われて期待しまくってたんだからな」


 「ありがとう、トモヤは優しいね。じゃあまた来ます、レクセールさん」


 そう言うと、ダリエスはティファをおぶって階段を上がっていった。レクセールって言うのかこの神父。


 「すまねえなあんちゃん、あの子とはこれからも良い関係を保ってくれると嬉しいんだが……」


 急にレクセールが保護者みたいなことを言い出した。


 「ああ、別に構わないよ。言われなくてもそのつもりだしな、まあ軍閥が違うから戦うことにもなるのだろうが……」


 「ありがとよ……さて、本題だ。ちょっと付いて来い」


 酒盛りの相手をしろって訳じゃないらしい。俺はレクセールの後に続き祭壇の裏手、神父が立つ側に回る。


 「ここだ」


 そう言って彼が指差す先、祭壇の裏には落とし扉が隠されていた。

 ――ガコンッ

 落とし扉が開けられると、埃とカビの混ざったような臭いが鼻を突いた。

 扉の下には梯子が続いており、さらに地下に潜れるようだ。


 「なんだよこれ?物置か?」


 「んな訳あるか。良いから付いて来い」


 俺は木製の拙い梯子を慎重に降りる。途中木が腐ってたりで落ちそうになったが、何とか下までたどり着けた。


 ――ボッ

 レクセールが壁のランプに火を灯す。

 目の前の異様な空間に言葉が出なかった。

 上と同じように中央に祭壇がある。部屋自体は上の三分の一程度しかない。

 だが一番の違いは、祭壇上に飾られる紋章がドクロを模した禍々しい物だという事だった。


 「悪魔崇拝……か?」


 「おう、あんちゃんわかってるじゃねえか。これが、俺が神父と名乗らない本当の理由だ。教会業務が国にバレたってこれっぽっちも困らねえが、これはバレると火炙りだろうからな」


 なるほど、悪魔崇拝はこの国で禁止されてるのか。そりゃそうだよな。

 だがこんな場所に連れてきた理由はなんだ?


 「いいか、お前さんの持つ力ってのは確かに存在している。だが魂スキルって訳じゃねえ。お前さんのは『誓約スキル』、悪魔に魂を売った者が得る特殊なものだ」


 悪魔に魂を売る?俺がいつそんな真似をした?


 「お前さん、異世界人なんだろ?さっき坊主が言ってたよ。それでな、この世界に来るより前かその直前、誰かに会わなかったか?」


 誰か、ルドガーに起こされるよりも更に前、駅のホームで俺は……


 「会ったな……綺麗なお姉さんだったよ」


 「そうか、それが悪魔だ」


 あの人が悪魔だった?俺はてっきり異世界の女神様かと思っていた。確か……


 「何かを約束したんだ。必死だったから覚えてないんだけどさ、誓うかって言われて、無我夢中で……」


 「それが誓約だ。今から何の誓約かを悪魔に訊ねる」


 「それって危険じゃないのか?」


 「大丈夫だ、神々の天啓の悪魔版だ、危険なことはない」


 「そうか、わかった。じゃあやってくれ」


 レクセールは俺の言葉に頷いて祭壇に立つ。よく見るとネックレスも黒い物に代わっている。


 「悪魔よ、古の支配者たちよ……契約者たるかの者に、闇の洗礼を授けよ」


 レクセールのネックレスと祭壇の紋章が紫の光を放つ。

 以下にも禍々しい雰囲気だ。


 ――やがて光が収まった。


 「なるほど……小僧の話に合点がいった」


 「どうだったんだ?」


 「お前さんの誓約スキルは『生への執着』だ」


 記憶がフラッシュバックする。

 ホームから落ちたあの時、女神のような悪魔はこう言ったんだ。なぜ忘れていた。


 『あなたはどんな苦難にも耐え、決して生きることを諦めずにいられますか?』


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