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第十一話

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 俺は今、王都ラグノリア下層街に来ている。ティファとダリエスも一緒だ。

 数時間前のこと……


 「スキルを調べるったって俺達は教会には入れないじゃないか」


 「そうだね、教会には(・・・・)入れないね。でも別に、神々の天啓を受けちゃいけないなんてルールは無いよ?下層街にね、教会っぽい施設があるんだ。やってる本人はあくまで有料のお悩み相談所として営業してるんだけど、まあ実質、奴隷のための教会なのさ」


 「闇医者が居るように闇神父も居るわけか……」


 ちらりとティファを見る。


 「ごめんなさい、トモヤさん……私知らなくて……」


 今にも泣き出しそうな顔になる。


 「いや!責めてないよ!?むしろそうやって施設を利用できない人間に手を差し伸べる人って凄く偉いと思うし!!現に俺は助かってるしな!!」


 慌ててフォローする。危なかった……泣かせてしまうところだった。なんかダリエスの奴がニヤニヤと見てる気がするが気にしない。


 「あ、下層街に行くなら、私の用事も済ませて良いでしょうか!どうも今患者さんが2人ほど居るらしいので……」


 「もちろん良いですよ!僕もトモヤと二人より、美しい女性がご一緒して下さる方が、心が休まります」


 ガキのくせに何言ってやがる。こいつ、もともとは貴族だったみたいだし、女性を立てるみたいな教育受けてんのかな。

 少なくとも俺より女の子に耐性がありそうだ。


 そんなこんなで下層街に来たのだが……


 「ダリエス〜!!お疲れ様〜!!」

 「今日の試合、結果聞いたよ!ご苦労さまだったねえ!」

 「ダリエス兄ちゃん、格闘技教えてー!」


 栗毛の少年はどうやら下層の人気者らしい。


 「1651位の身の程知らずを叩き潰してやったんだってな!よくやった!」


 その身の程知らずがここに居るんですが……


 「ごめんね、トモヤ。みんな悪気は無いんだ、お金が無いと試合も見れないから、君の顔知らないんだよ」


 「別に構わないよ、身の程知らずなのほ本当だしな。それにしたってお前は人気者だな?」


 「うーん、多分奴隷闘士なのにガーディアンになったから……かな?ここの人達は、一歩間違えれば奴隷にされるくらい貧しい人も多いんだよ。だから僕に親近感が湧いてるのかもしれない」


 「奴隷って奴隷狩りとかでなるんじゃないのか?」


 「それもあるけど、一番多いのは税金の未納による奴隷落ちかな。僕もそのタイプだよ。奴隷にも二種類いて、完全に所有物として強制労働させられるタイプと、与えられた役割においてのみ使役されるタイプがいるね。僕ら奴隷闘士は後者ね」


 俺の中で奴隷の扱いは前者だな。人身売買で買われ、強制労働させられたり、性的な奉仕をさせられたりするイメージだ。

 そういう意味では、殺し合いを強制させられる以外は至って普通に暮らしている気がする。


 「それってどういう基準で決まるんだ?」


 「うーん、本人の資質にもよるけど、金で買われた奴隷は前者、奴隷落ちは後者が多いかな。トモヤは異世界からの召喚って特殊な立場だから後者なんだろうね。呼び分けるために前者を一般奴隷、後者を職業奴隷ってみんな呼んでる。正式な名称や社会的立場はどっちも奴隷だけどね」


 職業奴隷……ゲームのジョブ欄が奴隷とか、そんな感じか?嫌だなおい。


 「ん?奴隷落ちは買われるんじゃないのか?」


 「うん、そこが大きな違い、奴隷落ちは、納税義務を全う出来ない国民を王国が奴隷として貴族に分配するんだ。本来の所有権が国にあるから過度な体罰や性的な行為は認められないんだよ。まあ裏で破ってる貴族も多いどね。ちなみに所有権を譲渡された貴族が認めた場合、職業奴隷から解放されるんだ」


 「なるほどなぁ」


 ランキング一位を取ったらってのはそういうことか。


 「あ、着いたよ」


 話していたら随分と奥まった所まで来ていた。またチンピラに襲われたりしないよな?こっちにはガーディアン様がいるから襲われても平気か。


 「本当に、ここなのか?」


 目の前にあるのは廃墟……としか言いようのない木造の建物だった。

 壁に穴が空き、屋根は半分無くなっている。

 これは、人が住んでるわけないだろ……


 「こっちこっち!」


 ダリエスがさっさと進み、1つの扉の前で立ち止まる。

 

 「ここだよ!通称『奴隷教会』!」


 ――ギギギッ

 古びた木の扉が開くと、すぐ目の前に下り階段が現れた。

 なるほど地下か。


 ――カッカッカッ

 ダリエスが入り口にあった松明を持って先に進む。


 「平気か、ティファ?」


 「は、はい!大丈夫……です!」


 暗い所が苦手なのか小さく震えている。


 ――ギュッ

 なんだ!?何かに右手を掴まれた!


 「ごめんなさい!トモヤさん……少し……手を……」


 ティファが怯えた目つきでこちらを見る。俺がビビったせいで余計にティファを脅かしてしまったらしい。


 「あ、ああ、もちろんいいよ!ごめんな驚かせて!」


 手に触れる温かい感触に声が上擦る。女の子に手を握られるのなんて、大学の課外授業でフォークダンスして以来だ。

 

 「うわあ、トモヤ、鼻の下伸びてるよ?さいてー」


 クソガキが松明で俺の顔を照らしてくる。

 

 「やめろ!熱いだろ!」


 「照れてるから顔が熱いんだよ、だっさーい」


 なんてからかわれながら地下へ進む。

 ずいぶん降りた頃、やっと階段が終わった。

 目の前に広がったのは正しく教会。俺たちの足下から赤い絨毯が前方の祭壇まで伸びている。絨毯の脇には石造りの長椅子が左右3席ずつ置かれ、祭壇の上には金属製の何かの紋章が掲げられている。あれは恐らく、十字架のようなシンボルだろう。


 「おう、ダリエスじゃねえか。どうした、久々だな!」


 奥から出てきたのは赤ら顔の神父だった。白黒のローブに身を包み、首から金のネックレスを下げている。ネックレスの紋章は祭壇のものと同じようだ。

 いかにも神父って感じのおっさんだな。でも、なんだ……?


 「酒くさ!」


 思わず口に出してしまった。


 「おう、あんちゃんも飲むかい?極上の蒸留酒だぜ」


 むわっとウイスキーのような匂いが漂う。


 「だめですよ、神父様が昼間からおしゃけなんれ……あえ?」


 ――ティファさん?


 「代わりにわらひが飲ませていただきまふ」

 

 まさか、匂いだけで酔ったのか?


 「お、嬢ちゃん!いける口かい!?なら飲んどけ飲んどけ、あと俺は神父じゃねえ、ただの相談屋だ」


 トクトクっとウイスキーをグラスに注ぐ。ストレートかよ……


 「あい!いたらきまふ!」


 ――ゴッゴッゴッ

 ティファさんは腰に手を当て、たぶん45度くらいはありそうな酒を一気飲みした。


 「あい!とってもおいしい……れふ……」


 ――ドタンッ

 おいいい!?一発で酔い潰れたぞ!

 急すぎて支えることも出来ず倒れた。申し訳ない。


 「あらら、寝ちまったか。そこの椅子にでも寝かしとけ!あんちゃんとダリエスの小僧も飲むかい?」


 「僕はまだ14歳なので飲めません」


 「2年くらい良いじゃねえか!変わりゃしねえよ!」


 16歳から飲めるのか、って事はティファはそれより上だよな?

 17,8歳ってところか?


 「あんちゃんは飲むだろ?」


 「今日は天啓を受けに来たんです!誰彼構わず飲ませないで下さい!」


 「文句言うなよ、うちの客で成人してるやつは飲まなきゃならねえんだ」


 「初めて知りましたよそんなルール!」


 「お前はまだ小僧だからな!飲ませるわけねえだろ!」


 「さっき堂々と酒勧めてたじゃないですか!?」


 「うるせえ!酔ってんだから覚えてねえよ!」


 本当にこの神父で大丈夫なんだろうか……


 「ったくうるせえなぁ、ゴチャゴチャゴチャゴチャ……金は持ってきてんだろうな?銀貨20枚」


 高いんですね神父さん!!そんな金ありません!!


 「いつも銀貨5枚でしょ!?何鯖読んでんですか!!」


 「初診料だ、馬鹿野郎!だがそうか……その顔見るに金はねえな?グラディエーターになったばかりだろ、あんちゃん」


 「はい、そうです」


 「まあいいや、こっち来な、診てやる」


 俺は神父に連れられ祭壇の前に進む。

 神父の顔が急に真剣なものに変わる。


 「神々よ、我が主たちよ……この迷える子どもに祝福をお与え下さい。かの者の持つ力を、私にお教え下さい……」


 祭壇の紋章と神父のネックレスが淡く光る。おお、久々にファンタジー感だな。

 やがて光が止み……


 「あー、なになに、お前さんのスキルだが……」


 なんだ?神父の顔が曇ったぞ?


 「心して聞け」


 俺はごくりと唾を飲み込んだ。

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