第2章27 死の宣告 残り5日 また明日
大変お待たせいたしました。
生活環境の整理中で投稿頻度は遅いですが、なんとか頑張りますのでよろしくお願いいたします
『……なぜ、私の背中に男が跨っているのだ』
「俺に聞かないでくれ。嫌なら振り落とせばいいだろ、セリナごと」
『……無理を言う』
あの後、騎士のお姉さんはセリナのお願いに嫌な顔一つもせずにユニコーンを貸してくれた。
自分の召喚獣を貸し与えるなんて普通はしなさそうなものだけど、きっと何かあるのだろう。
……それにしても、だ。
「本当にどうして俺がユニコーンの背中に跨がれているんだ?」
ユニコーンの伝説は、度々幻想の魔物ということで幸幸さんから資料を見せてもらったことがあるくらいだ。
そこには確か、処女の女性の前にしか姿を現さないと書かれていたはず。
そんなたいそうな魔物を、騎士のお姉さんが使役していることはまだいいのだが、あそこで姿を現したことや、この状況についてはよくわからない。
「もしかしたら、ひろさんがユニコーンの前所持者と共通点があったのかも」
「ユニコーンの前所持者?」
「はい。前所持者も実は男性だったみたいですよ」
……なんじゃそりゃ。
だが、それなら尚のこと俺が跨ることを嫌がるのはおかしい。
何かしら秘密がありそうだな……。
「その前所持者は何かしら特別な人だったりするのか?」
「もちろん。グレゴリアスを生みだした親玉、暗黒龍グレゴリオを神龍マザードラゴンと共に打ち滅ぼしたスカイピアの英雄と呼ばれる方です」
これまたとんでもない人が出てきたな。
そんな人と共通点なんて……ないな。想像がつかない。
「ご歓談のところ失礼いたします、姫様。どうしてもおひとつ聞きたいことが」
前を先行するイクティオと呼ばれた青年が、セリナに何か聞きたいことがあるようで、セリナもそれに応じてどうしたの?と一声かけて、返事を待つ。
「先程……姫様は……その、どなたとお話になられていたのですか?私にはここにいるもの以外の人の姿は見えなかったのですが……」
……彼は何を言っているんだ?
あそこには騎士のお姉さんが確かにいたじゃないか。
それとも、見えなかったとでも言うのか?
あれほどまでに、目立つ格好をした人だったんだぞ?
セリナにその事を聞こうとして視線を移すと、セリナは人差し指を立てて口元に当てながら、ウィンクを返した。
……どうやら、黙っていてほしいようだ。
きっと何かあるのだろ。
スカイピア奪還作戦なんて、大層なものが出てくるほどなのだから。
「何も害をなすものじゃないよ。儀式には作用しないから、心配しなくていいからね」
「……そう……ですか。それなら、まぁ、構いませんが……」
少し不安そうにしながらも、イクティオは前を向いた。
それもそうだろう。
自分の仕えていたものが、空虚に向かって話をしていたら不安にならない方がおかしい。
それにしても、儀式ってなんのことだろうか?
セリナの口から出てくる言葉は、なんとも突拍子も無いものが多い。
故にその真意については、分からないことが多い。
立場上言えないことなんだろうが、気になるものは気になるな。
そんな事を考えていると、
「着きましたよ、洋一さん。ここが、ギルドの仮拠点。及び最前線の基地、ルミナスです」
目の前を少しずつ温かい灯火が包み込み、暗くおんどろどろとした空気が一変する。
人の活気に溢れ、それでいて誰もが忙しく動いていた。
「ようやく帰ってきたね。ジャル、イクティオ。しっかりセリナは連れ帰ってきたのかな?」
そんな中イクティオたちの帰りを待っていたのは、フリーテで出会ったナタリーさんだった。
「ナタリー様、只今戻りました。それと……」
「洋一も同じ場所にいたので、連れてきました」
ジャルが少し不機嫌そうな顔で、ナタリーさんに俺が一緒に来たことを報告していた。
「ジャル。君はもう少し、可愛げのある態度を取れないのかい?」
「あなたが僕の目の前でやったことを、僕が許せるとお思いであるのなら、そんな発言は出ないと思いますが?」
「……戦争とはそういうものだよ。理解したまえ」
「……サーシャさんのところに行ってきます」
そうしてジャルは乗ってきた馬から降りると、不機嫌そうな態度を崩さないまま何処かへ行ってしまった。
……ひと悶着あったのは、間違いないみたいだ。
「……彼と喧嘩したんですか?ナタリー。彼は同じギルドの部下でしょう?……わだかまりは解決しておくべきよ」
「お嬢様の言う通りですね……。対処しておきます」
「彼の境遇も伺っています。辛く当たらぬよう気をつけてください」
「……お言葉のとおりに。ですが、まずはその御身をご心配されてください。お父様が大変心配されていましたよ」
「後で連絡しておくわ」
そこまで過保護になる必要はないのにと言いたげな顔で、セリナはため息をつく。
ナタリーさんはそんなセリナを見て、安堵したような顔を見せた。
「イクティオ。お嬢様を休ませてあげてください。野宿ばかりで疲労が溜まっているはずです」
「かしこまりました。行きましょう、姫様」
「すぐに行くわ。……じゃぁ、洋一さん。また、明日」
「また明日だな、セリナ」
当たり前の返事をしただけなのに、何故かセリナはニコッと笑ってからイクティオに連れられて建物の奥へと消えていった。
手を降ってセリナを見送ってから、またがっていたユニコーンにお礼を告げておろしてもらいナタリーさんと改めて向き合う。
ナタリーさんと会うのはフリーテが陥落したあの日以来だ。
その間、あの場所で何があったのかを詳しく知るのはきっとこの人しかいない。
そして、俺にかけられている呪いについても、きっと手がかりを握っているだろう。
なんとなく、そう感じられる何かが、ナタリーさんにはあるのだ。
「……お話したいことがたくさんあります」
「そうだろうね。私もだよ、ジョーカー」
フリーテで出会ったときよりも険しい顔で、ナタリーさんは丁寧に言葉を紡いでいく。
「……この前は話す機会もなかったからね。奥に部屋を用意してある。面白い客人もいるから、君もきっと喜ぶだろう」
一度ユニコーンをライブラのメンバーの人に預け、ついてきなさいと言われるままにその後をついていく。
小屋のような建物に案内されその入口をくぐると、外見からは想像もできない大きな空間が広がっていた。
「驚いたかい?空間そのものを歪ませることでできるある魔女の芸当だよ」
アクエリウスの底なし沼と言われるだけはあるとナタリーさんはつぶやきながら、こちらだと手招きをする。
気になることばかりだが、そのことはあとでも聞けるだろう。
案内された通り、手招きをされた室内へと向かいその扉を開けた。
案内された部屋には、赤い特徴的な鎧を身に着けた一人の青年が椅子に座っていた。
「……!!ひろか!?」
扉が開いた音で視線をこちらに移した青年が、開口一番俺の名前を口にすると嬉しさを体いっぱい表すかのように俺に飛びついてきた。
その行動を予想することができず、見知らぬ青年から抱きしめられる。
「ちょ!?」
「会いたかった!2年も探したんだぞ!!」
全く話が見えてこない。
そもそも、この世界に知り合いはいない。
あるとするならば、それこそ宗次や鉄っちゃんしか考えられないが……。
いや待てよ、確か葵は俺の2〜3ヶ月前。
春香は半年前にこの世界に来たと言っていた。
もし、この時代に到達した時間が大きくズレているものがいるとすれば、俺がこの時代にたどり着くまでに成長していてもおかしくはない。
そして、俺が知る中で肝っ玉が小さいのは1人しかいない。
「お前……宗次か!?」
「うん!久しぶり!!ひろ!!」
俺が知っていた弱虫な宗次とは打って変わって、立派に成長した宗次姿がそこにはあった。




