第2章26 死の宣告 残り5日 それぞれの秘密のやり取り
大変お待たせしました!!
何から何まで起きるのが突然すぎる。
状況を打破しようとするたびに、横槍が入ってくるせいで考えることがいっぱいだ。
「……それで、その、俺はよくこの状況を理解出来ていないんだが……。セリナ、この方は?」
目の前に突如として現れた騎士のような恰好をした女性。
こんな人気のない森にいるような人だ。
何か訳アリなのは間違いない。
「この方は……、何と言いましょうか……」
名前を言っていいものなのか確認するように、騎士の女性の様子をうかがうセリナ。
「名前はまだ伏せておきましょう、セリナ。誰に聞かれているか分からない以上、あまり固有名詞を使うものではありません。……異邦の方、今は騎士のお姉さんと呼んでください」
丁寧な挨拶から育ちの良さが滲み出ている騎士のお姉さんは、ニコッと笑顔をこちらに向けた。
その笑顔には敵意は見受けられなかったが、何か見定められているような、そんな気がしてならない視線も同時に感じさせるものだった。
だが、信頼しては良さそうだ。
「よろしくお願いします。……騎士のお姉さん」
伺うような形で名前を呼ぶと、にこりと笑みを返してくれた。
……とりあえず、今すぐ敵対……みたいなことにはならなさそうかな?
それなら次は、フードを被った謎の連中だ。
先程まで向き合っていたフードの連中を警戒するために、再び視線を連中に向ける。
しかし、そこに先程までの姿はなく、まるで何事も無かったかのように、2人とも姿を消してしまっていた。
「風華!」
何が起こるか分からなかったので、すぐに風華を呼び警戒態勢をとる。
だが、待てども攻撃の気配はなく……。
ただただ、静寂が辺りを包み込んでいた。
「洋一さん。ひとまずは安心していいかと思います。……あの人たちには、後でこちらから言っておきますので」
ジャルに諭されるような言葉を受けて、風華に感謝を告げて、ひとまずは神器を収納する。
そして、すぐにその発言に違和感を覚えた。
後でこちらから言っておく……?
「なぁ、ジャル。……お前は俺たちを襲ったヤツのことを知ってるのか?」
いや、知っていなければこの発言はできない。
これを隠すようなら、今ここにいるジャルすらも信頼できなくなる。
慎重にジャルの動向を伺いながら、返事を待った。
「ええ、知っています。と言っても、僕はあまり詳しくありません。せいぜいギルドの名前と活動方針を知っているだけです」
「それで、そいつらはなんて言うんだ?」
「はい、彼らはアストリア。正義を掲げ、たとえそれが多くの人を殺すことになったとしても、信念をねじ曲げることの無い、闇ギルドです。要するに、本当の意味でのなんでも屋、です」
「何でも屋……ね」
何でも屋にしては、あまりにも手練ていた。
この森だからというのもあるだろうが、危険だと言われている森に2人だけで来るという時点で、相手の強さが窺える。
「……ギルドってことは、そのアストリアってのは一応ギルド連合の一員なのか?」
「そこはなんとも。ナタリーさんなら何か知っているかもしれませんが……僕は、あの人を信用していないので近づきたくないです」
そう言いながら見たことがない程の怒りを表したジャルの顔。
……何かあったのだけは確かみたいだった。
聞きたいけれど、今はそうじゃない。
「まずはセリナを安全なところに連れていかないと」
「そうです!そこの君、よくぞ言ってくれた!!」
明るくはきはきとした声で、そう言い放ったのはイクティオと呼ばれた赤いマントが特徴的な騎士の格好をした少年だった。
「ただでさえ御身が狙われているというのにもかかわらず、城を抜け出してきたのですから、すぐに安全領域まで避難しなくては」
どうやらセリナは立場上想像以上にいけないことをやらかしていたみたいだ。
そもそも、命を狙われるほどの危険な立場にいるっていったい何者……?
考えれば考えるほど、分からなくなる。
「おや、もう行ってしまうのかい?それは残念だ。もう少し、セリナとは話しておきたかったけど……。あぁ、一つだけ、聞いていいかい?」
「はい。何でしょうか?」
「……スカイピアを陥落させる算段は、もう付いたのかな?」
「……もちろんです」
騎士のお姉さんの問いかけに、セリナは満面の笑みで応えた。
「なら、しかるべき時が来たら、君たちの前に姿を現すとしよう。それまでは、またしばしのお別れだ」
「はい。その時が来たときは、よろしくお願いします。……それと、折入ってお願いが」
「珍しい。セリナが私にお願いとは」
「……ユニコーンを、貸していただけないですか?」




