第2章25 死の宣告 残り5日 再会
大変お待たせいたしました!!
剣で受け止めた拳は、想像以上に軽く簡単に押し返せそうだった。
だが、簡単に押し返すことは出来ず、拳が剣に触れた瞬間、拳とは別に何かの力が働く形で強い衝撃が剣に加わる。
その衝撃に押し出される形で、後方に吹き飛ばされた。
「…………っ!!」
トラクターにでもぶつかられたと思うくらいの、重すぎる衝撃。
セリナを守るためにも、戦闘を長引かせる訳にはいかない。
だが、相手に近づけば衝撃波が襲ってくる。
煌めきのクオーツによる目眩しも、もう通用しないだろう。
であれば、逃げるに限る!!
「セリナっ!逃げるぞ!!」
それが、生存確率が最も高い一手だと信じ、セリナの手を引こうとするが、そうは問屋が卸さないと言わんばかりに邪魔が入る。
「クーシーをよくも!!」
大弓を構えていた人物が、怒りを顕にしながら短刀を握りしめ距離を詰められる。
それを好機と見たか、もう1人の方も急に距離を詰めてきた。
この状況、俺だけなら何とか回避できなくもないが、セリナがいる以上そんなことをするわけにもいかない。
かと言って、風華の力が働くのは一度に3回程度。
クオーツを投げられたり、魔法を使われたりするだけで対応できなくなる。
……どうする、どう切り抜ける!?
その時だった。
「洋一さん!!そこから動かないで!!」
どこかで聞いたことのある声が、人気のないこの森で届いた。
その声を信じて、セリナを近くに引き寄せる。
そうして、今にも短刀と拳が届きそうになった時、後方からものすごい勢いで火球が2つ飛んできた。
その2つともが、見事に相手に当たり、予期せぬ攻撃だったせいか体勢を崩し俺たちの真正面に倒れ込んだ。
「大丈夫でしたか!?」
すぐに駆け寄ってきたその声の主は、今ここにいるには信じられない人で、驚きのあまり空いた口が塞がらなかった。
「……ジャル!?お前、どうしてここに!?それに、無事だったのか!?サーシャは!?他の人達は!?フリーテはあの後どうなった!?」
「それは後で話します!それよりも!なぜ彼らと争っているんですか!?」
「知るか!!向こうがセリナを攫ったから、取り返しただけだ!!」
俺の言葉を聞いて何を思ったか、再会したばかりのジャルは苦々しい顔をしていた。
「何だよ!言いたいことがあるなら……」
はっきりと言ってくれよ。
その言葉を紡ごうとして……。
『……我が友の墓前で、何故争う。人間』
重苦しい声が周囲に響き渡り、臨戦態勢で合ったお互いの動きが止まる。
明らかに人のそれでは無い声に、緊張が走る。
だが、そんな中でもセリナを攫った2人は容赦なくこちらに向かってきた。
「この状況で!なんで向かってこれるんだよ!!」
大弓を使っていた方は、何とか前に割り込んで動きを止めることが出来た。
しかし、もう1人の方は俺とジャルをするりとかわしきり、セリナへと再び手を伸ばしていた。
まずい!セリナがまた攫われる!!
「ジャル!!」
「大丈夫です!!僕がこの森を1人で抜けてきたわけないじゃないですか!!」
ジャルがそう言うと共に、一人がセリナに手を伸ばそうとしたタイミングで、その間に槍が投げ込まれた。
そいつはすんでのところでその槍を回避すると、大弓使いの方へと一度下がり態勢を整え、憎らしそうにその槍へ鋭い視線を送っていた。
「……今更追いついたのか。役立たずの分際で」
その言葉の真意は計り知れない。
だが、何かしら相手にとって思うところはあるらしい。
「あなた方には言われたくないですね!大口叩いた割には、何もなせていないではないですか!!」
そうして大きな声と共に、森の奥から騎士のような恰好をした一人の男性が姿を現した。
「姫様!!ご無事でしょうか!!」
セリナの前に立った彼は、投げた槍をすぐに地面から引き抜き相手に向かって矛先を向け、向けられている視線に対抗するように、鋭い視線を送っていた。
というか、姫様ってなんだ。
お嬢様どころか、それ以上じゃないか、セリナ。
それに、別で聞こえた声は一体なんだ!?
何にどのように対応していくのか、目が回らない。
葵がいてくれれば、こういう時は道を示してくれるのに!
『……愚か者共!静まれと言っているのだ!!』
ドンと先程よりも強い力を感じて、今度こそこの場にいる全員が声の主へと視線を移す。
それは、あまりにも殺戮の多いこの森で似つかわしいほどに清く、頭に角を持つ美しい白馬だった。
何がいてもおかしくないこの森だ。
意思疎通ができる奴がいてもおかしくはないだろう。
にしても、さっき墓前がどうとか言ってたな……。
墓?こんなところに?
『……人間よ。なぜここで争う。我が友を侮辱するためか。それとも、我が友を殺すためか』
「そりゃ偶然だ!」
セリナを追ってたどり着いた場所が、たまたまここだったのだ。
変ないちゃもんをつけられても困る。
文句を言うなら向かい側に言ってくれ。
少しでも気を抜けば首を刈り取られそうな相手を指さしながら、俺の正当性を証明しようとする。
だが、証明するに値する素材が揃っていないことに、啖呵を切ってから気が付いた。
……異様な雰囲気を放つこの白馬に、俺の無実をどう証明する。
無い頭で必死に試行錯誤していたところ……。
『待て、お主は……セリナ嬢……ではないか?ということは、目の前にいる彼はイクティオか!!』
先程までの凛とした声とは一転して、明るく優しい声でセリナたちへと言葉を投げかけていた。
「セリナ!知り合いか!?」
あの声のかけ方からして、何かしら縁があるのは間違いない。
というかあってくれ。この状況で三すくみになるのだけは何としてでも避けたい。
「ユニコーン……。貴方本人で間違いないのですか?」
未だ緊張が解けないこの場で、セリナが恐る恐る言葉を紡いでいく。
そしてその返事に対して応じたのは、ユニコーンと呼ばれた白馬でもなければ、セリナをさらったやつらでもなく……。
「そうですよ。ユニコーンで間違ありません。……今、あなた方がここにいることは非常に驚くべきことですが、今は再会を喜ぶとしましょう。セリナ・マーフ・アルカディア」
ユニコーンの背後から現れた、騎士の格好をした女性だった。




