第二章22 さよならも言わないで
大変お待たせいたしました!!
結局夜さんが俺についていた呪いを解呪することはなかった。
「どうにかなるでしょ」と軽くあしらわれ話をそらされたのだが、俺にどうにかできる当てはない。
……いや、ないわけではない。
サーシャとどこかで合流することが出来れば、もしかしたら解呪ができる薬なりクオーツなりを揃えているかもしれない。
合流できる可能性が砂粒微塵もないところをのぞけばだが。
やはり、解呪が出来るであろう場所まで向かうのが手っ取り早いだろう。
「それで夜さん、特定のポイントまでって具体的にどこなんですか?」
「おそらくパチェリシカだと思うよ。洋一君がノードラーを離れる際にその呪いはなかった。何かしら呪いを受けるきっかけがあるとすれば私たちと離れた後、パチェリシカで何かがあったと考える方が妥当だからね」
呪い付与されるタイミングがあったとすれば……。
快と呼ばれた少年に襲われて、眠るように気を失ったあのタイミングだろう。
だとすれば、この呪いは俺以外にも付与されている可能性が高い。
「……今後の方針は決まったかい?」
「はい。まずは葵や春香との合流を最優先に行動します」
「それが良いだろうね。ま、心配はしなくてもいいとは思うけれど。それよりも自分の心配をした方が良い。この距離を7日で駆け抜けるのは無理がある」
夜さんがノマスさんに地図を持ってこさせて、俺たちに地図を広げて見せる。
現在地点はここ、そしてパチェリシカはここだとそれぞれを指さした。
遠い。
車でもあれば2日ほどで駆け抜けることが出来るだろうが……。
そんな便利な乗り物はない。
馬鹿面鳥がいればまた話も変わってくるのだが、あいにくパチェリシカに置いてきたままだ。
最悪、もうひき肉になっている可能性もある。
じゃぁどうやって?この距離を移動するなら、それこそ瞬間移動でもしないと間に合わない。
俺の個性を使って走り続けるか?
……いや、脳筋すぎるな。やめておこう。
何を考えても俺の頭ではいい案が浮かばない。
いつもは幸幸さんや葵に頼りきりだったから、こういう時にボロが出る。
狭い範囲を動きまわるのなら得意だが、ここまで広範囲を計画的に移動する案を出すのは俺には無理だ。
春香のように何も考えず、「直線距離が最速だしどうにかなるでしょ!」と言いたいが、あいにくそう言うわけにもいかないし……。
無い知恵を絞り、悩む。
そんな俺を見て、夜さんは君は相変わらず面白い奴だなと笑った。
「笑ってないで一緒に考えてくださいよ!」
「対策は既にしてあるよ。セリナさんに全てを渡している。後は君が行こうと言えばいいだけだ」
「それなら早くそうと言ってくださいよ!!」
「なに、君の反応が面白くてね。許しておくれよ」
はたして夜さんは俺に対して、真剣に事態に向き合ってくれてるんだろうか。
……向き合ってない気がする。
むしろ、この状況を楽しんでいるような気さえもする。
そうこうしている内に、いつの間にかセリナが旅経つ準備をしていたようで、準備が出来たことを伝えに戻って来た。
それを確認した夜さんの顔が、本当に、本当に少しだけ、物寂しそうな顔をして。
すぐに元の顔つきへと戻った。
「さぁ、楽しい時間もここまでだ。ここからは……辛い旅になる。私は君を最後まで助けてあげられないから、森を抜けるまではセリナさんに託そう。……洋一君を頼んだよ」
「……はい!任せてください!行きましょう!洋一さん!!」
セリナは夜さんに明るく笑顔を返した。
そして荷物からクオーツを取り出し俺を呼びよせると、とあるクオーツを地面にたたきつけた。
途端に地面に魔法陣が展開される。
この魔法陣は……フリーテでサーシャが使っていたものと同じ、転移の!?
行く準備が出来ているとは聞いていたが、ここまで急なものだとは聞いてないぞ!!
「夜さん!ノマスさん!」
せめてお礼だけでも伝えなくてはと夜さんたちの名前を呼ぶ。
その時視界に映った夜さんたちの頭上では、あのひし形模様のマークがドーム状に再び張り直されており……。
上空に、神を名乗った夜さんそっくりな女性がこちらを見下ろしていた。
まさか、元からこうなることが分かっていて……!?
「行ってこい、ヒーロー。次に会うときは……私たちが、死ぬ時だ」
手を伸ばし、夜さんたちを掴もうとする。
だが、その手では何も掴むことが出来なかった。




