第二章20 問答
大変お待たせいたしました!!
先程とは打って変わって、空気がピリついている。
聞くことも、質問できる回数も限られている。
この状況で、俺は何から聞けばいい……。
腕を組み、現在出ている情報を整理する。
夜さんはなぜか俺の動向を知っている。
ドラゴンナイツ騎士団のリーダー。
ドッペルゲンガーのような人がいる。
聖杯。
守護者というものについて何かを知っている……?
……なら、まずはこれだろう。
「聖杯ってそもそも何なんですか?願いを叶える何かであることはノマスさんから聞きました」
「……なるほど。ではまず、そのものから見せるとしようか」
夜さんはそう言って胸に手を当てると、手を当てていたところが光り輝き、中から金色に輝くグラスのような形の何かを取り出して見せた。
「……これが、聖杯だよ」
金色に輝くそれは、どこか異質で、だけど、どこかで、見た事があるような気がして……。
「……私が聖杯を所持していることにそんなに驚く?」
「……いや…………」
何だ……?何か、大切なことを……忘れてしまっている気がする。
俺の反応がおかしいのか、夜さんは俺の反応を楽しむかのようにクスクス笑っている。
「君の反応はいつ見ても飽きないね。……さて、簡潔に話していこうか。まず、洋一君は聖杯についてどこまで知っているかい?」
「ノマスさんから伝え聞いているのは、願望器であること、どんな願いも叶えてくれること……です」
「認識はそれで問題ないよ。これは、簡単にどんな願いも叶えることが出来る。まるであたかもそれが当たり前であるかのように錯覚させる」
「……錯覚…………?」
「願いが決して万能であるとは限らない。使いどころは考えなければそれは崩壊へ加担することになる。要は願い次第ってことだね」
「例えばですけど……親から暴力を受けたくないと願った場合、親が優しくなるのではなく、消えるという選択肢もあるってことですか?」
「端的に言えばそう言うことだね。物分かりがいいじゃないか」
……使い方を間違えればいびつなものに。だけど、正しく使えば絶対的な効果を発揮するもの。
それが聖杯……。
都合がいいようで、下手したら身を滅ぼしかねない恐ろしいものだ。
そんな道具が、人の手に簡単にわたっていいものなのか……?
いや、違う。
渡っていいはずがない。
じゃぁつまり……。
「……あのドッペルゲンガーのような人たちは、聖杯を取り戻しに来ている……?」
「ピンポーン!大正解!!」
「じゃぁ盗んだんですか!?」
そりゃぁ追われるし、殺されそうになるのもうなずける。
……あれ。でも、じゃぁ、なんで。
俺たちまで狙われているんだ……?
「正確には盗んではいないよ。これは私の聖杯。あの子の分の聖杯はあるはずなのに、なぜか私のを狙いに来るのよ。たまったもんじゃないわ」
「いやいや、それでも……どうして俺たちまであの時殺されかけたんですか!?」
「なんでってそりゃぁ……」
そこまで何かを言いかけて、夜さんは口を閉じた。
「ヒントは必ずどこかにあるはずだよ。それに気が付くことが出来れば、その謎も解明できるかもね」
肝心なところまではどうやら答えてくれないようだ。
これ以上は答えてくれないだろうし、話題を変えよう。
次は……。
「守護者って時折出てくる単語があるけど、あれは何なんですか?」
「なにって言われてもなぁ……説明しにくいし……。それに、君はどちらの守護者の話が聞きたいんだい?」
……………………は?
え?
どちらのって……どういう……。
「……夜。それは少しヒントを与えすぎです。歴史がゆがみますよ」
「おっと、それはまずい。なら守護者についての問答はこれで終わりにしてくれ」
すまないねと一言謝罪を受ける。
……いや、謝られたからと言ってこれは聞いておかなければいけない気がした。
どちらのってなんだ。
守護者にも、何かしら守るべき対象が分かれていることがあるとでもいうのか?
なら……守護者ってなんだ。
夜さん、ノマスさん。
あなたたち二人は、一体何を知ってるんだ。
「どちらのって……どういう意味ですか?」
「……その質問には答えないと言ったはずだけど」
「これは最初で最後の問答なんですよね。どうしてそう断言するのかまだ分かりませんが、ならば尚更、答えてもらいたいです」
「断固拒否だ。申し訳ないけど、その解は他をあたって欲しい。……空にいるある女性なら答えてくれるさ」
「……空?」
「そう、空だ。空に浮かんでいるスカイピアという都市を君も聞いたことがあるだろう?」
……そう言えば、スカイピアという単語はライが言っていたような気がする。
他にもサーシャが地図を広げた時に、スカイピアがどうこう言っていたような気がする。
だが、それだけだ。
空飛ぶ島なんて、この目で見た事がないからいまだに信じられない。
「……本当に空飛ぶ島なんてあるんですか?」
「あるとも。……もとは陸続きの島だったようだけどね」
「陸続きだった空飛ぶ島って想像できないんですが」
「だろうね。私もだよ」
「なら尚更、そんな話を信用するわけにはいかないです」
「そこは君の勝手だとも。私は最低限度の道標は指し示した。これ以上は語るつもりはないよ。……まだ尋ねたいことはあるかい?」
その後も質問し答えを得ようと奮闘したものの、ほとんどの内容を語ってもらえないまま時間だけが過ぎていった。
「……聞き出せたことが、グリーンピースのシチューが好きなことくらいだなんて…………」
「君はまだまだ視野が狭いね。物事を多面的に捉えられてはいるけれど、結局のところそれだけだ。分析と考察がまだまだ甘いから、空に行くまでには知恵ももっと身に着けておくべきだよ」
「俺勉強ほとんどしたことないんですけど……」
「問題ないさ。私も無い頭をここまで磨いたからね。私にできて、君にできないはずがない」
明日に備えて今日はもう寝なさい。
そう言い残すと夜さんは奥にある扉を抜けて、部屋を後にした。
……有力な情報が得られたのかはわからない。
だけれど、一つ指針は出来た。
守護者の秘密を知る事。
夜さんとノマスさんについて詳しく知ることが出来れば、未来に変える方法も見えてくるかもしれない。
「洋一君。寝室まで案内しましょう。明日も朝は早いですからね」
「お願いします」
だから、今はしっかり休もう。
明日もまた、森を抜けないといけないのだから。




