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STAR SKY GUARDIANS  作者: 花海
第二章 幽閉心壊都市パチェリシカ 前編~暗夜に煌く雷閃~
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第二章16 イレギュラー2 月光よ、夜空を貫け

お待たせしました!!

巡る、廻る、回る。

歯車は、大きな音をたててまわる。

さぁ、彼との運命が途絶えたぞ。

彼とのつながりを、君たちはこの最後の機会にどう取り戻すのかな?

証明せよ、立証せよ。ここに導いて見せるがいい。

今見出せる奇跡を。



その日出会った少年は私の話を聞いてくれる人で、ふざける私に苦言を呈しながらもなんとか前を向いていた。

それも、あの黒の神器でだ。

これは偶然か、はたまた運命なのか。

まさかこのことを見越して、彼女は私を城外に出したわけではないだろう。

だとしてもできすぎている。

ここまでの流れが仕込まれた物語のように組み立てられているのではないか。そう疑うほどに完成されすぎている。

気持ち悪い。

誰かに意図的に動きを制限されているような気がして仕方がない。

でも誰に……?

分からない。

なら考えても仕方がない。今は目の前のキマイラだ。

咆哮その全てに、悲しい叫びがのっている。

痛い、苦しい、哀しい、助けて、と。

魔物の中でも上位種に君臨しているはずのキマイラが発する言葉じゃない。

まるで別の何かに命令されて、脅されて行動しているんじゃないかって。

だとしても何のために?何がこのキマイラをここまで追い立てているんだろう?

……もっと声を聞いて向き合わないと。


「セリナ!倍加の魔法は他に何かないか!?」


哀しい声で咆えるキマイラの攻撃をしのぎながら、彼、洋一はキマイラを打倒しようと四苦八苦していた。


「召喚以外は何もできません!!でもっ!」


でもそうじゃない。このキマイラをただ倒すだけでは何の解決にもならないの。

そのことを伝えたいが、キマイラの攻撃の余波がこちらにも来るせいで、洋一の方へと近づけない。

でもこれだけは伝えないといけない。


「悲しい声が聞こえるんですっ!」


「声!?」


「私!様々な生物と意思疎通ができるんです!」


「…………っ!それでっ!悲しみ以外には何を言ってるんだっ!?」


「それは……っ!」


洋一は必死に斬撃を回避している。

それも意識をこちらに向けることが出来ないくらいに。

これ以上の会話は危険すぎる。

ならどうやって……どうやって言葉を伝える?

私の召喚獣はキューちゃんだけだ。

……この子の本性を、見せるわけにはいかない。

小鳥のような召喚獣がいれば、簡単に伝えることが出来るのに……。

…………小鳥………………?

突然頭が割れるような痛みが走る。

こんな時に……頭痛なんてっ!!



『……いいっピか?僕は本来足跡を残してはいけない存在だっピ』


『えーっと……?』


『つまり、ここでのつながりを残したままだと、僕たちは再会できないっピ!』


『じゃぁ……どうするの?』


『それはっピね…………制約を使うっピ!!』



…………どうして。

どうして、こんなにも大切なことを、私は忘れていたんだろう。

でも……この出来事を、私は体験していない……はず。

何かがおかしい、おかしくなってしまっている。

そうでもなければ、この状況は説明できない。

狂ってしまったのだろうか?

壊れてしまったのだろうか?

違う。

()()()()()ということは!!

()()()()()()()()()!!


”さぁ!いい加減思い出したっピね!!”


頭の中に懐かしい声が響く。

あなたは、あの時からずっと!

私の中にいてくれたんだ!!

それならやるべきことは……っ!!


「ひろさん! もう少し引き付けられますか!?」


「…………っ!! 何か閃いたか!?」


「はいっ!!」


「……なら、それにのるぜ!!」


何の疑いもせず、彼は苦しそうな表情を見せながらも前を向いた。

……本当に頼もしい人。

真っ直ぐすぎて、逆に不安になってしまいますが、それもまた彼ならではなのでしょう。

ならば、少しでもその意思に応えきれるように、私も頑張るとしましょう!!

両手を前にかざし、彼の姿をイメージしながら言葉を紡ぐ。


「かの地より訪れし英雄よ。妖精の羽を広げ、世界へと羽ばたいた君よ。我はそのいつかを見た者である!我はそのいつかを掴む者である!」


地面に魔法陣が展開され、言葉を紡ぐほどに光り輝いていく。


「我が呼び声に応じ、かの者へ力を分け与えたまへ!!」


光が視界を埋め尽くしていく。輝きが世界を包んでいく。


「来てっ!! ()()()!!」


そして私は、懐かしい友達の名前を叫んだ。




キマイラの攻撃をいなしながら、セリナの行動を待つ。

所々かっこいいセリフも言っていたような気もしたし、それなりに凄い援護が来るに違いない。

状況は絶望的だが、これからくる何かに期待に胸を膨らませているとようやく背後が輝きだした。


「来てっ!! ペピー!!」


…………。

…………。

………………ん!?

やけにふわふわした名前の召喚獣だな!?

大丈夫だよね!? 本当にそれどうにかできるんだよね!?

名前を聞いてから不安で仕方がない。

いや、現状も不安だけどそれ以上に不安だ。

これで、ケルミンみたいに人形のようなポワポワした召喚獣だったら泣くぞっ!!

そう思いながら、一瞬だけセリナの方へ視線を動かした。

セリナが呼び出した何かは……。

黄色くずんぐりむっくりとした、ひよこみたいな何かだった。

おいいいいぃぃ!! それ本当に大丈夫か!?

実はこれ、クーちゃんの本当の姿なんです……。とか言わないよな!?

頼むから何か安心できる要素をくれ!!


「ひろさん!今からこの子を投げます!!何とかキャッチしてください!!」


この子って言った!? 今この子って言わなかった!?

というよりも、キマイラの攻撃を引き付け回避している最中に、ひよこみたいなのを掴めっいうのか!?

……ああくそ!! 掴んでやるよ!!

どうせ掴まなくちゃ死ぬだけだ!!

キマイラの攻撃をいなした後、武装していた神器を納めセリナが投げやすい所までギアで移動する。


「セリナっ!!」


「行きますっ!!」


セリナから勢いよく投げられたそのヒヨコは……ひどく間抜けな面をしていて……、ヒヨコなのかペンギンなのかよくわからないサイズをしていた。

何とか受け止めたけど…………。

腕に収まる人形のような大きさで、短すぎて機能しているか怪しい羽と足、そしてむかつくほどに大きな顔がどや顔でこちらを見上げていた。


「ムフー」


「…………地面にたたきつけていいか!?」


「そりゃないっピ!! 僕はこの状況を変えられる切り札っピよ!?」


「だとしても顔がむかつく。……グーパンでもいいよ?」


「何の解決にもなってないっピ!!」


「って語尾のそのピってなんだよ!!」


「僕のアイデンティティを否定しないでもらえるっピか!?」


セリナに危険が及ばないようにギアで移動しながら、キマイラの攻撃を引き付ける。

引き付けたはいいものの……、このヒヨコでどうする? 何ができる?

投げつけて餌にするくらいしか思いつかない。


「ヒヨコ! お前は何が出来るんだ!? 美味しく食べられることか!?」


「どうして食われる前提なんだっピか!? ……確かに食べることは僕のアイデンティティっピけど……。でも今回はそうじゃないっピ!!」


「食うことはアイデンティティなの!?」


「そうっピけど、今はそんな事言ってる場合じゃないっピよ!! ……見せたほうが早いっピね!!」


ヒヨコはそう言うと腕に抱え込んでいたペピーは淡い光を放ちながら……。

神々しく輝く、見た事のない一本の剣へと姿を変えた。

……こいつは…………。


「それはかつての王の遺産。誰もが目指した世界を作り出した王の意志。我ら円卓の王の象徴。名を……エクスカリバーと言います」


どこかで聞いたことのある声が、すぐ近くで聞こえた。

ハッと声をした方を見ると、ノードラーで別れたはずのノマスさんがいつもの柔らかい表情で現れた。


「ノマスさん!?」


「悪いが詳しく説明している暇はないようだ。湖の乙女は一度しか力を貸してくれない。……であれば、だ。君が今とるべき行動は分かるね?」


ノマスさんの言葉をきっかけに、エクスカリバーと呼ばれたその剣は、その輝きをさらに増幅させ始めた。

この輝きは……光魔法!?

……確かに、これなら…………っ!


「ノマスさん……少しだけ時間を稼いでください!!」


「えぇ、引き受けましょう」


「セリナ!! あと一押しが欲しい!! 倍加を頼めるか!?」


「いつでも行けますよ!!」


左手に剣を握りしめ、ノマスさんが注意を引き付けてくれているキマイラに剣先を向ける。

腰を低く落とし、左手を引く。

これは英雄が放つ絶対の一撃。

全てを切り開き、常世を照らす一撃。


「かの者に与えられし祝福よ! 先の輝きを今ここに!」


周囲の視界を奪うほどに剣は輝きを増していた。

突如現れた異常な力。

誰が見ても強力な一撃だと分かるそれを、キマイラは逃すはずもなく注意を引いてくれていたノマスさんを差し置いて、一目散に俺の方へと向かってきた。

……今まで放ってきたのは、風魔法で模倣した紛い物だった。

だがそれもこれまでの話だ。

俺は、今、ここで!!


「月光よ夜空を貫け!!」


本物で、敵を穿つ!!


「月光牙!!」


迫りくるキマイラに向けて、勢いよく剣を突き出す。

一束の光となって放たれた光線は、迫りくるキマイラを跡形もなく吹き飛ばして見せた。

光はそれでも止まることなく空へと昇る。

風華で放った時よりもさらに輝きを増しながら。

どこまでも、どこまでも空へ、天へ、宙へ、昇っていった。

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