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STAR SKY GUARDIANS  作者: 花海
序章 日本 ○○○○
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序章3 名を知らぬもの 改行済み



回復アイテムを買い、俺と鉄は走って目的地へ向かったため、なんとか集合時間にたどり着くことが出来た。


「ひろ君!鉄君!こっちこっち!」


動きやすく、それでいて涼しそうな青、白を基調とした服に身を包んだ葵がこちらの姿に気づき、大きく手を振って俺たちを呼んだ。

2人で呼ばれた方に向かうと、そこには清々しい笑顔の春香と、半分死にかけている龍馬、それを見てガタガタ震えている宗次がいた。

どうやら全員揃っているようだ。


「いやー!すっきりした!」


両手を突き上げ、伸びをしながら清々しい顔でそう言った春香は、朝とはうってかわって機嫌が良さそうだった。

その原因は、目の前のやつから聞けばいいんだろうけど…。


「大丈夫か?龍馬」


「これが…大丈夫に見えるのなら…お前の目は腐ってるぜ…ひろ」


「なんだ、大丈夫だな」


「大丈夫じゃないよ!?」


傷ついた状態の龍馬を一瞥して、一応クイックヒールをかけてから当の本人に、今回の行き先を尋ねた。


「んで、裏山の探索の許可は貰ってきたけど……龍馬、どこいく気なんだ?」


「そうよ!それを聞き出そうとしたのよ!」


「かなり荒い聞き出し方だな!?あと殴ったのは朝の件でキレてただけだろ!」


「まぁそうだけどさ!」


そこは認めるんかーい!と心の中でツッコミを入れながら、回復したはずなのにまだ地面に寝そべっている龍馬を見ると、よくぞ聞いてくれました!と言わんばかりに立ち上がった。

そのため、龍馬がボコボコにされるのを間近に見ていた宗次は、ビクーンと体を反応させていた。

…春香がよっぽど怖かったんだろうなぁ。

起き上がった当の本人は、そんな事は露知らず1人語りだした。


「ふふふ…。聞いて驚け!今回行く場所は、俺が勝手に裏山に入り込んで見つけた、恐らく誰も見つけてない未探索の遺跡だ!!」


…もうツッコミどころしかない龍馬の発言に、俺たち4人はため息をつくことしかできなかった。



「全く…龍馬、お前はまだ軍に所属してないんだから、勝手に山に入るなって何度も言っただろ?」


「それに聞き耳持ってないから、1人で勝手に突っ込んで行くんでしょ」


あの後、俺や鉄春香からけちょんけちょんに言われた龍馬は、先程までの元気はどこへ行ったのか、魂が口の中から出るくらい生気が抜けていた。いつもは助けに入る葵でさえ、今回は龍馬を助けようとはしなかった。そんだけのことをやらかしたのだ。少しは反省して欲しいもんだ。


「まぁ…今回のことは、何も無かったからこれで終わるけど、次やったら俺でもかばいきれないからな?注意しろよ」


俺がそう言うと、龍馬は口の中から出ていた魂が引っ込み「心の友よー!」と言いながら抱きついてきた。

それをひらりと躱してから、龍馬先頭に俺と葵と春香と鉄と宗次の6人は遺跡探索へと出発した。

道中に出てくる魔物は、俺達6人の前では本当に道端の石ころのようで(大体は春香のストレス発散)なんなく遺跡の近くまで来てしまった。

その場所は木々に上手く隠れていて、上空からも森の中でも発見するのはかなり困難な場所にあった。

本当によくこんな場所見つけたなと、龍馬以外のたどり着いた全員がそう思った。


「…よくこんなとこ見つけたな」


「そうだろそうだろ!」


目をらんらんとさせながら、楽しそうに話す龍馬を見て「…その意欲を勉強にも向けてくれればいいんだけどね…」と葵がボソッと呟いたが、おそらく言われた本人の耳には届いていない。

こいつはそれだけ夢中になるほど、遺跡を見つけたり、探索したりすることが好きなのだ。

あとアイドルとかもだけど。


「よっしゃー!行こうぜ!」


龍馬は背中に背負っていた太刀を引き抜いて、足踏みをしながら俺たちのことを急かした。だが…


「つ…疲れたから…休憩を…とって欲しいな…」


息を切らし、休憩したいという宗次の提案により、ちょうど昼頃だったということもあり、俺達は遺跡前で昼ごはんを食べることにした。

葵や春香達に作らせると、名前のない何かを作りかねなかったので、作りたいという前に実は朝ごはんを作るのと並行して稲荷寿司やサンドイッチやらを作っておいておいた。

それを葵が忘れずに持ってきてくれたみたいだったので、ビニールシートを広げて、6人で弁当を囲むように座って食べた。


「…相変わらずひろは女子力高いなぁ…。女子に生まれてくれば良かったのに」


鉄はそんなことを呟きながら、俺の作った昼ご飯を頬張っていた。

そしてその何気ない一言が葵と春香の胸に突き刺さったのか、2人とも少しだけしょげていた。

……こいつら意外と料理作れないこと気にしてるんだな。

精進しようとはしてるから、あとは独自のアレンジという魔のスパイスを入れなければいいだけなんだけど。

その事を当の本人たちは、そのことに全く気づいていないようだが。


「ははふふって、たんはくいほう!!」


龍馬は今すぐにでも遺跡の探索に行きたいのか、口に昼ご飯を詰め込み立ち上がりながら喋っていた。


「お行儀が悪いから止めなさい」


俺がそう注意しても「…むぐむぐ…もう食ったから大丈夫だ!行こうぜ!!」といって1人先に遺跡の中に入っていってしまった。

もう少しこういう時を楽しめばいいのに、もったいないことしてるなぁ。

そんなことを思いながら、5人で急いで昼ごはんを片付け、龍馬の入っていった遺跡の中に俺らは足を踏み入れた。

遺跡の中は所々崩れているところがあり、天井からは少し光が漏れていたり、水滴が滴り落ちていたりしていた。

……こういう場所にこそ、静寂という言葉は似合うのではないかと思うほど静かな場所だった。

先に入っていた龍馬は、入り口から入ってすぐの場所で壁を見つめていた。

何か興味を引くようなののでもあったのだろうか。


「何かあったのか?」


龍馬にそう訊ねても、龍馬は俺の声に反応しなかった。

そこまで気になる何かがあるのか?龍馬の横に並ぶような形で、俺は龍馬が眺めている壁を見た。

そこには白い片手直剣を持つ人物を囲むように、赤い槍を持つ者、青い大剣を持つ者、黄色の大太刀を持つ者、緑色の2本の短刀を持つ者が写し出されていた。


「……なんだ…これ」


あまりにも衝撃的な物を見たせいで、俺はその声を出すことに精一杯だった。

それは龍馬も同じようで、ずっと口をパクパクとしていた。

そらぁこんなビックリするもの見たら、人の声なんか耳に入ってこなくなるわな。

自分でもそうも思うくらい、どこか魅了されるものだった。

それが何故なのかは分からないけれど。

他の皆も、何やってるの?と言いながら俺達が見ていた壁を見て、ほぼ同じような反応を示した。


「…これ…何を示してるんだろう?教科書とかでもこんな感じのものは見た事ないけど…」


葵は壁に描かれた何かを見ながらそう呟いた。


「まさか…大発見をしてしまった感じか?」


鉄は体を俺の方に向けながら俺に尋ねた。


「…正直、どえらいものを見つけたとしか思えない。本来なら身を引くべきなんだろうけど…」


龍馬の方を見る。

その目はらんらんとしていて、このまま放っておいたら1人で勝手に奥の方に進んでいきそうだ。

2年間の付き合いから、こういう時は満足するまで好きにさせるのが一番だと分かっている。

ため息をつきながら「雷光さんに連絡してくるから少し待ってろ」と言うと、龍馬はまたありがとう!と言いながら抱きつこうとしてきた。

それをひらりと躱してから、1度外に出て雷光さんに今いる場所と、調査班をこちらに送ってくれとお願いし、再び遺跡の中に戻った。

一応警戒するために俺と春香と鉄が少し先を歩く形で、探索することになった。

龍馬も前衛に出してもいいのだが、1人で勝手に奥の方に進んでいきそうなので、葵と大人しい宗次の監視をつけた。

こうしておけば、とりあえず勝手にボタンを押して変なものを起動したとかはならないだろう。


「ひろ、なんか変なとこ着いたぞ」


前衛の中でも、俺より少しだけ先に行っていた鉄がそう言いながら戻ってきた。

何か見つけたらしい。


「魔物の影は?」


「ないよ。変な装置みたいなのはあったけど…」


「装置!?」


龍馬が鉄のその言葉に反応し、またしても1人で勝手に進んで行ってしまった。


「…なんか…あいつは本能のままに生きてるって感じだな」


「アホ丸出しってだけでしょ」


「春ちゃん、毒吐きすぎだよ」


「でも実際そうでしょ」


春香のその言葉に、誰も何も言うものはいなかった。そして…


「…さっさと追いかけるか」


俺のその言葉に応じるようにそれぞれが返事を返してから、装置のようなものが置いてあるらしい部屋へと足を踏み入れた。

そこは、天井のほとんどが朽ちて光が差し込んでおり、苔や蔓が壁が見えなくなるほど覆っていた。そして、その中心に高さ3m程、横幅5m位の謎の装置が、所々錆び付いたままそこにあった。

長年動かしたような形跡はない。

本当に過去の遺産なのかもしれない。


「わーすげー!ボタンとか色々ある!」


「はしゃぐ気持ちも分かるが、あんまり触るなよ。自爆ボタンとかあったらどうするんだ」


俺がそう言うと、ボタンを触ろうとしていた龍馬の手がピタリと止まり、すぐにその場を離れた。

今回は従ってくれた事に、胸を撫で下ろしながら携帯端末を取り出し、できるだけ調査班が楽できるように写真を数枚撮って雷光さんに送信した。


「よし、じゃあ帰るか」


「えー!!もうちょっといたい!!」


「駄目だ。元々ここにお前は無許可で来てたんだから、これくらいで我慢しろ」


俺がそう言うと、龍馬はブーブーと文句を言い出した。

うるせえなぁと思いながらも無理矢理龍馬の首根っこを掴むと、引きずるような形で俺達は遺跡を後にした。

そうしたのには、ちょっとした理由があったからだった。

遺跡を出てから、少しだけ皆の時間をもらい、俺はある提案をした。


「久しぶりにルルの墓参りに行こう」


ルル。

自称過去から来たという少女、で大人しいながらも冷静に正しい判断で戦いを円滑に進めて行った。その手腕に俺も何度も救われた。

だが、2年前のあの日に俺をかばったせいでルルは命を落としてしまった。

その時に俺は右肩を負傷し、右腕が肩より上に上がらなくなってしまった。

……俺を庇うことなんてしなければ、きっとルルは生きていただろう。

だから、俺は定期的にルルの墓に何度も顔を出していた。

……理由は他にもあるのだけれど。


「いいんじゃない?皆で顔を出すことなんて、滅多にできる事じゃないでしょ?」


「だね。別に急ぎの用がある訳でもないし、行こうよ。きっと彼女も喜ぶ」


葵と鉄はすぐにOKを出してくれた。

春香も宗次もその後て頷いてくれた。

龍馬は少し渋っていたが、春香が胸ぐらを掴んで「来るよな?」と脅すと、青ざめた顔で何度も頷いていた。

というわけで全員から了承を貰ったので、俺達はすぐにルルの墓のあるある場所へと向かった。

そこは、葵以外の皆がルルと出会った場所。街を見下すことができ、ある特殊な桜の木がある場所。その木の根元に1本の舞刀と共に、ルルのお墓はあった。

6人でここを訪れたのは、俺がここに墓を作ったといって場所を案内した時以来だ。

だから大体2年間程、全員で一緒に顔を出していなかった。


「……」


「……」


誰も何も言葉を発することは無かった。その静かな間に俺はあの時のことを思い出していた。



戦いの後、意識を失った俺が目覚めたのは、戦いが終わってから2週間経った頃だった。

鉄、龍馬、宗次は軽傷だったためすぐに会うことが出来たが、前衛に出ていた葵と春香は意識不明の重体で会うことすらできなかった。

そんな中、医者から1本の舞刀、ルルの武器を渡された時は、もうどうしたらいいのか分からなくなってしまった俺は、舞刀を持って病院を抜け出し、ルルと共に来たとされる桜の木の元まで走った。

右肩が全く上げることが出来なくて、ろくに戦えもしなかったが、それでも痛みに耐えながら向かった。

そしてその場にたどり着いた時、季節は夏であるのにも関わらずその桜の木の桜は満開に咲いていた。

それは、ルルから聞いた話の通りの現象だった。



「いいことを教えてあげる。あの木はね、桜が満開に咲いている時に願いを言うと願いを叶えてくれる不思議な木なんだよ」



ルルから教えてもらった通りに満開に咲いた桜木を見て、その木の前で俺は叫んだ。


「願いを叶える木なんだろ……!!生き返らせろよ!!ルルが…あいつが死ぬ必要はなかったんだ!!」


唯一動く左腕で拳を握りしめ、桜の木を殴る。

それは、ただの我儘だった。

この世の摂理に反する願いだった。

だが、それをこの木は受け入れた。



゛ならば問おう。汝にとって力とはなんだ゛



……その問いに、2年経った今でも答えることはできていない。


「ひろ君?大丈夫?ボーッとしてるけど」


葵にそう声をかけられ、我に返った俺はすまないと言ってから全員で合掌してからまた来るよ、と言って山を下った。

山を下ると俺が頼んでいた調査班の人達が、龍馬の見つけた遺跡に向かって行っているところだった。

その横を通り過ぎてから俺たちは、一度休憩するために近くの公園へと向かいベンチに腰を下ろした。

山を上り遺跡を探索し下って来たこともあり、俺以外の全員はくたびれていた。

葵も昔は俺と共に走り回っていたが、今は軍を抜け勉学を優先させているので、体力が落ちてきているようだった。

そして今日はしゃぎまくっていた龍馬は、誰よりも疲れていた。

あれだけ勝手に先行したりすれば、誰だってそうなる。

だからこそ俺があまり疲れないようなルートを選んで進んでいるというのに……。


「………疲れた」


はしゃぎ回っていた当の本人はベンチの上で力なく横たわっていた。


「1人で勝手に突っ走って行くからだ」


「………だよな~。今度から気を付ける~………じゃぁ……眠いから帰ります」


そう言って龍馬は、おぼつかない足取りでフラフラと家へと帰ってしまった。

言い出しっぺが一番早く帰るとは……。

どうすんだよこのあと。

何をするにも体力も何も残っていない。

もう帰るか、と提案しようとしたときだった。


「………ひろかずさん?」


公園の外から誰かが俺の名前を呼んだ。

声が聞こえた方を見ると、そこには黒髪に濡れた黒服を身にまとった少年がいた。

少年はすぐに俺の方に近づいてくると、俺の手をとった。


「よかった!!無事だったんですね!!」


………何がだ?というか、この子は誰だ?

知り合い?と葵が目線を送ってくるが、知らないので首を横にふると、じゃあ誰よと今度は春香から目線を送られた。

だから知らねえっていってんだろと目線を送り直し、再度目の前に来た少年を見る。

……俺に関わったことのある人物の大半はもう亡くなってしまっている。

だが、その大半は大人だ。

目の前にいるような少年と出会ったというような記憶はない。


「あの……どちら様ですか?」


間違って声をかけてしまったということのある。

名前も見た目も似ていた人間がいて、それが偶々俺だったんだろう。

そう考えれば、この少年が声をかけてきたことにも納得がいく。

だが、目の前の少年の反応は俺たちの予想したものではなかった。


「覚えてないんですか!?僕です!! l6y ですよ!!」


………?なんだ、今の。聞き取れなかったぞ。


「皆で戦ったではないですか!! f[a%ldtb4d@)4py や 3.tw@E3w@pluxyk4y/eを4ahq@eql とか!!!」


何故か分からないが、この少年の言葉を聞き取ることができなかった。

それはまるで、外部から何者かが俺に伝えてほしくない情報を遮断するかのような……そんな違和感を覚えるほどに不思議なノイズだった。

そうであったとしても、少年は話すことを止めなかった。

だが、何かを伝えたいということ以外は何も理解することはできなかった。

そして、彼が何も言わなくなり俯いてしまったとき「あ!いた!!」という声が聞こえ、公園にフードをかぶった少女が入ってきた。

その少女は俺の目の前まで来ると


「すみません!この子がなんか世話かけたみたいですね」


そう言って頭を下げた。


「いや……それは別にいいんだけど……」


「ご迷惑をかけたと思うので、よかったらこれを受け取ってください」


少女はそう言うと俺の手に何かしらのクオーツを握らせてから、少年の手首を掴んでもう一度深々と頭を下げてから


「ご迷惑をおかけしました。それでは失礼しますね。………またね、かず兄」


途中まではみんなに聞こえるような声で、最後だけは何故か俺だけに聞こえるように呟いた少女は、少年の手を掴んだまま何処かへと行ってしまった。


「………なんだったの、あれ」


「………俺にも分からん」


一瞬の風のように去ってしまった少年少女。

不思議な2人だったが、俺はまたどこかで彼らに会うのではないかと思えて仕方なかった。

……さて、今度こそ帰るか!!と言おうとしたら、葵が何かを思い出したように「あーーーー!!」と叫んだ。


「弁当箱遺跡前に忘れてきちゃった!!」


ここまで来て、俺達は山の遺跡まで戻るはめになったので、誰もがもう動きたくねーと思った。

別に明日に取りに行ってもと言おうとした時、まるで逃げ道を防ぐかのように雷光さんから連絡が入った。


「洋一殿、少しいいでござるか?」


いつもは明るい声で俺に話しかけてくる雷光さんだったが、今回は何故か固い口調だった。

……何かあったなと瞬時に理解した。


「何かあったんですか?」


「洋一殿が伝えた遺跡に向かわせたはずの調査班との連絡が途絶えたでござる。……遺跡で何か危険なものとかあったでござるか?」


「いや、なかったです。機械のようなものはありましたけど、壊れていましたし……それに、周囲も比較的安全な場所でしたよ。こちらも今から遺跡に忘れ物を取りに行こうと思っていたところです。現状を確認して報告します」


「了解でござる。すぐにでも突入できるよう準備はしておくでござる」


そう言って雷光さんとの連絡を終えた。

意外に忙しいんだな、あの人も。

それにしても、連絡がつかないっていうのは少し気になるな……。

危険な魔物は昨日倒したばかりだ。そう何体も出てくるとは思えない。

なら原因は……?考えても仕方がない。

現場を見て、それから考えよう。

それに……俺の手に握られたクオーツを見る。

もしかしたら、彼らが関わっていたりするかもしれない。行くだけ行ってみよう。


「よっしゃ!もうひと頑張りだ!皆行くぞー!」


疲れている皆に回復魔法をかけ全員がある程度動けるようにしてから、俺達は龍馬を除いた5人で再び遺跡へと向かった。


あまり疲れないように登ったため、時刻はもう7時半をすぎていた。

夏だがそろそろ日も沈み始める。

どうにか遺跡までたどり着いたが、これは急いで切り上げた方がよさそうだ。

……だけど……なんだ。この感じ。

人の気配がしない。

先に着いているはずの調査班の人影が見えない。

それに………変な臭いもする。

葵は葵で無事に弁当箱を回収している。

1度、ここから離れるべきだろうか。

そう思った時、宗次が「うわあ!!!」と叫んだ。


「どうした!」


「あ……あれ……!!」


宗次は遺跡近くの木の方を指さしていた。

その指が指している方を見て、俺は驚きを隠すことができなかった。


……人が死んでいた。


体を何かで何度も切り裂かれたような切り傷がその死体にも周囲にも残されている。

だが、俺が驚いたのはそこじゃない。

まだ死体から血が流れていたという所だ。

つまり……


「まだ近くにいるぞ!!」


俺が全員に警告したのとほぼ同時に


「……………ラウル…………みぃつけた!!!!!」


その声と共に、大きな鎌を持った女が俺達の前に現れた。

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