第二章8 それぞれの道を
少し短くてごめんなさい!!
ただ、後書きマシマシにしたんでそれで許して……。
それでは、お楽しみください!!
月が大地を照らしている。
ほのかな灯りと肌寒さ、そして膝で丸くなって寝ているキーの体温が私を睡眠へといざなう。
…………でも眠れない。
あんなことがあったばかりだということもあって、睡魔よりも興奮、恐怖が頭の中を覆いつくす。
それは10年前、私がかつて体験した十席による進撃から逃亡していた時に感じたもの。
圧倒的な力の前に、逃げ惑うしかなかった子供が抱く奥底のない深淵にある恐怖。
生へとしがみつこうとする執念。
そして、手を引く者の温かさ。
……………………また、失ってしまった。
戻るべき場所も、
信頼できる人も。
でも、前に進む活力はまだ残っている。
復習を果たすための憎しみは未だ増え続けている。
殺すために生きる。
こんな人として生物としてあり方が矛盾する私は、もう当の昔に壊れている。
でも、あそこで笑うことが出来た。
だから、私はまだ人を失ってはいない。
まだ、獣には成り下がっていない。
月は相変わらず私たちを照らしている。
お前の行動その全てを見ていると言わんばかりに輝く満月。
あぁ、構わない。
そこで見ているといい。
私は、
私が使えるものすべてを使って、
必ず第3席の喉元に刃を突きつける。
それが、私の復讐だ。
それが私の生きる意味だ。
それが、私の死に場所だ。
そのために、生きる。
そのために、進む。
そのために、殺す。
それが私。
人狼と人間のハーフである私。
人と獣の両側面を持つ者。
風間友恵だ。
さぁ、夜が明ける。
月が大地に身を隠す。
太陽が空に登る。
それは私にはあまりにも眩しい世界だから、まだ私はそちら側に行くわけにはいかない。
それに、夜団長からのお願いもある。
………………その意図はわからないけれど。
でも、私に事情を話してくれた団長の事だ。
必ず考えがある。
だから私は、夜に生きよう。
パッと何かにはじかれるかのように目を覚ます。
どうやら疲労していたこともあり、いつの間にか眠っていたみたいだ。
……我ながら、こんな緊急事態で情けない。
空にはすでに太陽が昇っており、周囲の状況がどうなっているのかはっきりと確認することが出来た。
「……起きたんだ」
少し驚きが混じった声が俺に向けられる。
声の主の方を見ると、友恵が荷物をまとめて阿呆面鳥へ縛り付けており、誰が見ても今すぐに旅経とうとしているようにしか見えなかった。
友恵の傍らにはキーもおり、目をこすっている様子からまだ起きたばかりの様だった。
「……どこに行くんだ?」
寝起きでろくに回らない頭を使って何とか短い言葉を紡ぐ。
「あなた達と共にいては、私は私のなすべきことをなせない。だから行くわ」
だが返ってきた返事は求めていた物ではなかった。
ただ、いつものようなそっけない口調ではなく、重みの、芯のある言葉を俺にぶつけた。
……意志は固いようだ。
だが、あまりにも無謀すぎる。
この状況下、正直いつ昨日の奴らに襲われてもおかしくはない。
そんな中で別行動をするとなれば、それは囮として死にに行くときだけだ。
「……死ぬ気じゃないよな?」
「まさか。死ぬ気はさらさらないわ。簡潔に述べるなら、夜団長からの最後の任務を果たしに行くだけ。人数が少ない方がやりやすいのよ」
そう言いながら阿呆面鳥をキーに跨がせる。
そうしてすぐに友恵も阿呆面鳥にまたがった。
「あなた達はあなた達でやることがあるんでしょ?ノマスさんから託された夜団長の任務とか、あなた達が目標にしている事とか。互いに目的が違うなら、進む方向も違うのは当然のことでしょう?……だから行くわ。本当は言葉を残すつもりはなかったけど…………春香には伝えておいて」
友恵が手綱をひき、阿呆面鳥が立ち上がる。
「少しの間、家族になってくれてありがとうって」
その言葉を残して、友恵とキーをのせた阿呆面鳥は何もない草原を駆けて行った。
その足取りは決して軽いものではなかった。
だというのに、しっかりと彼女は前を向いていた。
前を見て、しっかりと足を踏み出していた。
そんな彼女たちの背中を、俺は見送ることしかできなかった。
しばらくして、皆が起きてからこのことを説明した。
特に春香はこの話を聞いてすぐに残った馬鹿面鳥を使って追おうとしたので、俺と葵の二人係で止める羽目になった。
……春香の追おうとした気持ちが分からないわけではない。
事実、俺があの後すぐに全員起こして走りだせば、追いつくこともできただろう。
ただ、それを俺がしなかった。
友恵が進もうとしている道を、止めなかった、止めることが出来なかった。
彼女がこれから何のためにどこへ向かうかは知らない。
もしかしたら止めるべきだったのかもしれない。
でも、きっと、止めなくて正解だった。
なぜかはわからないけど、彼女の背中を見送ることが最善の選択であったと。
胸を張ってこたえられるような気がした。
だから俺も、俺たちも進まなくてはいけない。
これから歩んでいく道のりが、いい選択だったねと言えるように。
……とりあえず目標は変わらず、ノードラーから出来るだけ遠く離れること、リナちゃんを必ずパチェリシカヘ送ること。
この招待状を使うのは、それから考えてもいいだろう。
それに、宗次や鉄っちゃんがいまだどこにいるのかもわかっていないから、探さなくてはいけない。
俺たちも、想像以上にやることは山積みみたいだ。
だから、一つずつ丁寧に片付けていこう。
そのうち何かとっておきのアイデアが浮かぶだろうし、今は時の流れに身を任せよう。
大丈夫。きっと何とかなるさ。
炎が山を包み込む。
どこもかしこも燃えている。
木も草も風も魔物も人も、すべてが燃えている。
呼吸が苦しい。
喉が焼けるように痛い。
むせるように咳き込むが、咳をするたびに喉に痛みが走る。
どうしてこんな目に合わなければいけないのかが、幼い私には判らない。
「友恵、まだ走れるか!?」
そんな中でもかず兄が手を引いてくれた。
雪乃ちゃんと雫君も背負って大変なのに、それでも私に笑顔を向けてくれる。
だから私はその期待に応えたい。
大好きな、お兄ちゃんに頑張ったって言ってもらえるように。
声を出すとのどが痛いから、必死に首を縦に振る。
「よしっ!もう少し……もう少しで下に出るからな……それまでの辛抱だ。我慢できるか?」
うんっと首を縦に振る。
「いい子だ。よし、いこう」
かず兄から左手が差し伸べられる。
私よりも大きい手。
私の大好きな、お兄ちゃんの手。
それを、絶対に話さないようにぎゅっと力強く手をつないだ。
それを確認してから、かず兄は走りだした。
置いていかれないように、必死に足を動かす。
そうやって、がむしゃらに動いていると……炎を抜けた。
涼しい夜風が肌をなでる。
あぁ、助かったんだと、子どもながらにも私は安堵した。
「大丈夫か!?」
近くにいた誰かが駆け寄ってくる。
かず兄は近づいてきたその人に、雪乃ちゃんと雫君を手渡し、そして……。
私とつないでいた手を、優しく離した。
行かないで、と強く懇願する。
それでも、かず兄は優しいいつもの声で……。
「お母さんたちを助けてくるから、いい子で待っててね」
それが、かず兄との最後の言葉になった。
世界は残酷だ。
平等でも公平でもない上下社会。
弱者は淘汰され、強者のみが生きることを許される。
それが世界か?それが社会か?
そんなものが、私の大切なものを全て奪ったのか?
………………………………………………許さない。
必ず、必ず、必ず!!!!
仇をとるんだ。
皆の、仇を、私が、取るんだ!!!!
坂口友恵
「私は、私の正義のために、第三席を殺す。ただそれだけよ」
キー
「なんにも、わかんないけど……うん!頑張る!!」
キー?
「どうせ私は死ぬ定め。良いわよ、少しだけなら、付き合ってあげる」
ウィッカ
「いつも可愛くてキューティクルな美少女、ウィッカちゃんでーすっ!!」
雫
「友恵姉さんが悪に手を染めるなら、僕はそれを止めるだけだよ」
唯奈
「え!?シスターなのに棍棒で魔物を殴るのはおかしい!?」
???
「僕は……誰だ?」
「みーんなみーんな……殺しちゃうね?」
「それが、我が主の命であるならば」
「だから、俺は、召喚士を、殺す」
「いい加減に目を覚ませ!!大馬鹿野郎が!!」
「友恵。これはあなたの選択よ。さぁ…………どちらを、殺すの?」
これが私の、私たちの復讐だ。
information
復讐編が解放されました。




