第二章6 ex@<f[a%ldt^3 VS reprologue
お待たせしました~
切り方下手糞ですが、ご愛敬で……
星が落ちる。
星が落ちる。
願いを、望みを託すはずの星が、今俺たちに降り注ごうとしている。
前が見えない。
光で何も見えない。
リナが怖くて俺にしがみついていた。
服を掴むその手が、小刻みに震えている。
それなのに、何もしてあげられない。
何も、出来ない。
また、何もなせない。
「根源より来たれり星よ。我は世界を守護する守護者である。我は秩序を正す守護者である。我は全てを愛する守護者である。ここに、救いを。ここに、裁きを。ここに、粛清を」
言葉は紡がれていく。
残酷な現実へと向かって。
確実な死へと導くために。
「……粛清の星!!」
今ここに、粛清の星が降りそそぐ。
それは何のために降りそそぐのか。
それは何のためになされるのか。
それは……何のための……粛清なのか。
「夜!!」
ノマスさんが叫ぶ。
空に吠える。
「出し惜しみしている場合ではない!!これだけは!!ここで!!撃ち落さなければならない!!」
「……」
光が迫る。
時間はもうわずかと残されていない。
それなのに、
それなのに、
永遠とも思われるほどの時間にいるかのような錯覚に陥った。
これは死ぬ寸前に、脳が見せる走馬灯のようなものだろうか?
……いや、違う。
何故そう思えるのかは分からないけれど、俺は確かに何かを感じていた。
周囲の状況は未だ把握することはできない。
それでも、大きな波のようなものが、俺たちの周囲に漂っていて、何かしらの奇跡を起こしていることだけは理解できた。
周囲が爆散する音もない。
同時に光も徐々に薄れていく。
ようやく目を開けられるほどの明るさになってきたので、うっすらと瞼をあげる。
飛び込んできたのは、先程までとは全く持って異なった世界。
形あるものすべてが風塵と化し、抉られ整っていない地面。
そんな中、信じられないことに俺たちの周りだけ何事もなかった。
まるで、奇跡でも起こったかのような、そんな光景だった。
いや、これは、奇跡だとしか言いようがなかった。
「……何が起こった!?」
夜さんの顔をした謎の人物は、俺たちに先程の攻撃が命中しておらず、ましてや防がれたことにひどく驚き、困惑していた。
だが、すぐに何かに気が付いたように、声を荒げた。
「……そうか、貴様…………聖杯を持つかぁ!!ドッペルゲンガー!!」
だが、その声の先に夜さんはいない。
「ノマス!合わせなさい!!」
「了解した!!」
宙に浮いていたその何者かに向かって、何時の間にそこへ移動したのか夜さんとノマスさんが同時に攻撃を仕掛ける。
夜さんは拳で。
ノマスさんは剣で。
夜さんの様な何者かに向かって、各々が明確な意思をもって。
目の前に突如として立ちはだかった、イレギュラーを排斥するために。
全力で、打ち砕く。
「衝破!裂傷撃!!」
「血塗られた選定の剣!!」
夜さんから撃ちだされた拳と、ノマスさんの抜き放った剣が空で交差する。
それは空に大きな十字となって現れ、異様な魔力を発し周囲のものを吹き飛ばした。
むろん鳥に乗っていた俺たちも、吹き飛ばされバランスを保つことが出来なくなり地面に体を打ち付けた。
その際、何とかリナの下敷きになることで、リナが怪我をすることはなかった。
ほっと一安心、が出来るわけもなくすぐさま行動を起こす。
幸い誰も大きな怪我もなく、軽いかすり傷を負っただけだったので、すぐさま俺のクイックヒールで軽い傷を負った人の傷を塞ぎ、あの間抜けな鳥どもの背中にまたがった。
これからどうすればいい。
どこに行けばいい。
わからない。
わからない、はずなのに。
やるべきことは、
なすべきことは、
言葉にされなくても、
理解している。
何故か、知っていた。
それが最善の選択であり、
そして同時に、
最悪の選択でもあることを。
だが、
これを選ばない手はなかった。
なぜ?
それは、
………………、
………………、
………………、
あいつの元へ、
たどり着くために。
「……パチェリシカへ向かうぞ!!」
ここに今、厄災への一手を打った。
背中越しに彼がでこぼこの大地を駆けていくのが見えた。
……よかった。
ひとまずは、ここで終わりにはならなさそうだ。
「聖杯を寄越せ!!ドッペルゲンガー!!」
ティナグラ・マリアス。
自称神を名乗るその女は、私が隠し持っている物の存在に気付き、本来の目的をも忘れて私を狙い殺そうとしている。
だが、彼女の振りかざす剣は、言い方は悪いけれどあまりにもお粗末なものだった。
……だってそうでしょう?
あなたは私、私はあなたですもの。
だから、私が剣を使うことが出来ないのを知っているのは当たり前のこと。
だからこそ、初手から切り札を切った。
世界そのものの形すら捻じ曲げてしまう、神であるが故の。
守護者としての力を振るって見せた。
だが、それは失態だ。
私が、私なら絶対に犯すことのない失態だ。
これが意味することは、一つ。
たどり着いたのだ。
根源たる一が想定していなかった、崩壊を超えたその先へ。
なら、ここでなら。
存在しなかった未来が。
揃うはずのなかった4つの神器が。
神に抗うために再びかの英雄たちが。
揃うかもしれない。
なら、私は託された者として、抗うだけ。
……それが、私の。
私達の、最後の誓い。
「夜」
もう私を聖杯を握っている虚影としか見ていない私に声をかける。
その名前を口にして、相手の動きが止まる。
その表情は私にとって、実に愉快な表情だった。
「……黙れ。私はティナグラ・マリアス。神に仕え、神龍を守る者。そのような名前ではない」
「あら。私をドッペルゲンガーというのに名前は違うというの?」
「……黙れ」
「そんなに名前で呼ばれるのが嫌なら、こっちで呼んであげましょうか。ねぇ、マリオネット」
「黙れぇええええええええ!!」
拳と剣が交差する。
それは互いの信念のもとに、
それは互いが信じる人の為に、
そして、
自分が何者なのかを証明するために、
何度も、
何度も、
何度も。
拳と剣が空で交差する。
その度に衝撃波で周囲の建物が吹き飛ぶ。
……ただでさえ廃墟だったのに、ここまで破壊してしまえば、もう二度と街としては機能しないだろう。
だが、彼女にとってそんなことはきっとどうでもよいのだろう。
今、私さえ殺せれば、それで。
だから、すでにノマスがいなくなっていることに気付いていない。
あまりにも哀れだ。
だからこそ、あの時の彼女も私にこう言ったのだろう。
あなたの生き様は、まるで人形みたいね、と。
今だからこそ、彼女の言葉の真意が理解できる。
だから、ただ一つのことに執着し周りが見えていないようでは、この先の転び方が危うい。
下手をすれば、相手に有利になってしまう。
…………。
…………。
…………。
本当は使うべきではない。
こんなところで大量のマナを消費するわけにはいかない。
だけど、うん。
やっぱり、私には……。
馬鹿な私には、見せたほうが早い。
何度か衝突しあった後に、一度距離を置く。
「さて……何か気付いたことはある?」
「……何が言いたい」
「私の剣であるノマスがいないことに気が付かなかったのかしら?」
私が言葉にして、ようやくノマスがいないことに彼女は気が付いた。
周囲を見渡し探しているが、まぁ見つけられはしないだろう。
あれほどまでに私に熱心であったのなら、なおさら。
だから、あまりにも単純で馬鹿な私には、簡単な錯乱だけでいい。
「飛来せし流星よ」
かつては滅ぼすためだけに使うものだった。
「ここに、一縷の願いがあるのなら」
でも今は違う。
「ここに、託された願いがあるのなら」
背中を思い切り叩かれたから。
「ここに、打ち倒すべき悪があるのなら」
行ってこいと、助けてやってくれと頼まれたから。
「今ここに、根源たる一の力を示せ」
さぁ、ここに道を切り開こう。
言葉を紡ぐほどに、数えきれない魔法陣が空を覆う。
それは空を覆い、大地を覆い、周囲の何もかもを金箔に染め上げた。
これは、かつての粛清の星。
だが、今は違う。
そう。今、名づけるのであれば……
「…………穏やかな星」
守護者として、私はこう名付けよう。
言葉が紡がれると同時に、ありとあらゆる魔法陣から一斉に光線が飛び出す。
それは所々明後日の方向に飛んでいきながらも、確実に攻撃するべき相手へと向かっていった。
流石に私でも、これの恐ろしさはよく知っているようだ。
先程の戦いからは考えられないほどの素早さで、あの光線から必死に逃げている。
だが、それは裏を返せば私との戦いに全く力を使っていないということでもあった。
……この場所にとどまっていては、いずれ聖杯を奪われてしまう。
なら、逃げるのが賢い選択だ。
ノマスを回収するなり、さっそうと飛んでこの聖域を彼らと共に離脱しよう。




