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STAR SKY GUARDIANS  作者: 花海
第一章 残酷な世界 その世界へ一歩を踏み出して
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第一章48 絶氷都市フリーテ編 朝

大変お待たせいたしました!!

遠くで感じたことのない力を感じる。

いや……どこかで似たものを見た事があるような気はする。

かつて彼らと共にドラゴンの侵略を止めたあの時に。

だが今はそんなことはどうでもいい。


「ありゃぁ……凄いね」


この位置からでもわかるとてつもない力。

これが私の知識の中にあるものであるというのなら……。


「あれが六神獣の内の4体か……」


未知なる力。存在してはいけないもの。理の外の獣たち。

……かつての英雄たちが悪を討ち滅ぼすために共に戦ったものたち。


「果たしてあれが伝え聞いていた通りの善か。暴虐を尽くす限りの悪か。判断するとしようか」


……先生の時みたいになる可能性もあるからね。

だからここで私がでしゃばっても何もいいことはない。

彼らを助けに行ったところで、きっと何も変わらない。

…………。

かつては何も感じなかった。

それなのに今は胸が締め付けられるほどに痛い。

どこまで私は甘っちょろくなったんだろうか。

戦いは常に冷静で狂気に満ちたものだけが勝利する。

矛盾しているはずなのにそうだとしか言い表すことが出来ない。

……これだから…………


「……生きていくだけで、生き延びるだけで、精一杯なんだよ」


締め付けられる胸に手を当てながら、とてつもない力を感じた方へ目を向けた。

問題は山積みだ。何から手を付けて良いのか分からない。

それでも今私にしか出来ないことがある。

……彼女の思いを忘れたあの馬鹿を、殴りに行かないと。



キーちゃんが突然前衛に出てきたと思ったら、今度は気を失って倒れた。

倒れる前までにキーちゃんの周囲に展開された魔法のような見た事のないそれは、キーちゃんが倒れた後も展開されたまま、消滅するどころかどんどん広がりを見せ、倒れているキーちゃんを中心に地面に船のような大きさの魔法陣と、その中に4つの建物一つ分あるくらいの魔法陣が形成された。

そしてその中から現れたのは、見た事のない生物。

1つは人のような形をとった大きな炎。

1つは雷をまとった馬のような稲妻。

1つは霧の中に霞む大魚のような何か。

1つは山のごとく大きな体を持った岩石。

個々が独特の覇気を放ち、周囲の空気を一変させる。

炎が盛り、空からは稲妻が降り注ぎ、視界は霧で覆われ、岩石は天へと伸びていく。

岩石が伸びていくと同時に、周囲は炎の明かり以外見えなくなるほど暗くなり、上空から大きい音をたてて何かが割れる音が周囲に響き渡る。

何も分からない。

今、キーちゃんは一体何をしたの!?

そんな混乱をよそにそれぞれが個々の咆哮をあげる。

頭の中に直接響くその咆哮に、耳を塞ぐ。

圧倒的な覇気を放つそれらに、足がすくんで動くことは出来ない。

呼吸が荒くなる。

怖い。

これから私に何が起こるのか予想もできない。

だからこそとても恐ろしい。


私は後、何秒生きていられるの……?



ひろ君や春ちゃんの回復のためにこちらに走ってきたはずなのに、目の前で言葉では説明のできないものが展開され、何かが複数現れる。

……落ち着け私。

まず今何をすべきか考えて、すぐに実行に移す。

現状私の視界の中で動けるのは、私、ジャルさん、友恵さん、リナちゃんの4人だけだ。

リナちゃんは動けないと考えたとしても3人。動けないのは、ひろ君と春ちゃんとキーちゃん。

このままだとジリ貧で負けてしまう。

回復と防御、それかイチかバチか私が使える禁術のテレポートでどこか遠くに飛ぶしかない。

勝ち筋がどこを探しても見つからない。

でもまずは、リナちゃんのいる所まで全員後退して身を隠し回復するのが先決だ。


「ジャルさん!ひろ君お願いします!!友恵さん!春ちゃんを!!それと……!!」


パッと周囲を見渡す。

……あれ?

もう1人、誰かいたような……?

いや、今はそんなこと考えている暇はない。


「2人ともひろ君たちを背負ったら、リナちゃんの所まで下がってください!!」


「葵さんはどうするんですか!!」


「私はキーちゃんを連れてきます」


すぐ横でジャルさんが制止の声をあげたが、それを無視して走りだした。

大丈夫、私は出来る。

止まるな、決して。

花先生の言葉を、信じろ。

すぐに視界が霧で覆われ何も見えなくなる。

近くでは感じたことのないほどの熱量、真横には何本も落雷が落ちる。

それでも走る。

たった1人の命でも、絶対に見捨てない。

私が、ひろ君に助けられた時の様に!!

暗闇で視界がよりいっそう悪くなったと同時にキーちゃんの元に何とかたどり着いた。

うつ伏せに倒れるキーちゃんをすぐに抱きかかえ、皆の元へ戻ろうとする。

だがすぐにその歩みを止めてしまった。

……どこへ行けばいい。

私の個性であるサーチを使って周囲を確認しても、皆の魔力探知より精度はいいはずなのに、まるですべてを塗りつぶすかのように周囲に魔力の塊が散らばり、空から降り注いでいる。


「どっちに行けばっ……!!」


賭けで適当な方向に走りだせば、最悪あの白いグレゴリアスのような魔物の真正面に出る。

他にもキーちゃんが呼び出したと思われる召喚獣のような魔物たちの目の前に出ることで、敵と認識されて私は殺されるかもしれない。

………………。

……ひろ君なら、どう動く。

考えなしに無鉄砲で突っ込むこともよくあるけれど、それでも勝利への道筋をいくつか切り開いてくれる。

私には、そんな事、出来ない。

…………違う。

今、ここで、出来るようにするんだ。

転移は行ったことのある場所にならどこにでも行くことが出来る禁術。

おそらく全員この視界の中動くことが出来なくなっているから、皆がいる場所を探し当て、なおかつその下に魔法陣を展開し、リナちゃんの所まで飛ばなければいけない。

そして時間もない。

なら賭けに出よう。

最善の未来への選択肢を、掴むために。

キーちゃんを抱きかかえながら、空いた手で地面に触れる。

足元を通じてのサーチを利用した広範囲の魔力探知。

誰もが地面に触れているはずだから、この濃密な魔力以外の魔力源の下に魔法陣を展開すればいい。

…………。

気を少しだけ集中させて、感じたことのある魔力を捜す。

それはすぐに見つかった。


「高速詠唱!!」


そのままもう一つの禁術の書を利用して、私の足元と感じたことのある魔力源付近だと思われる場所に魔法陣を展開する。


「お願いっ!飛んでっ!!テレポートっ!!」


ふっと体が謎の浮遊感に襲われて、すぐにその感覚が失われると同時に複数人の声が聞こえた。

……成功したの?

すぐにもう一度魔力探知を行う。

そばには私を含め7人の魔力反応。

……全員、いる。

ホッと胸をなでおろす。

だがこの油断が、私の危機管理能力を鈍らせた。

視界の悪さ、濃密度の魔力、何もかもが想定外の事態。

最低限の周囲の警戒は行っていた。

が、下からのアクションは想定していなかった。

突然私たちがいる場所が持ち上がっていく。

上に、ひたすら上に、霧を抜けさらにその先へ。

空には一部欠けた障壁と少し明るくなり始めた空。

そして目の前に、信じられないほど大きな岩石の魔物の顔。


「………………」


身体が硬直する。

これまで感じたことのない圧を感じる視線。

その視線は、私が抱きしめているキーちゃんへ向けられている。

キーちゃんに何かされるかもしれない。

そう思った私は、その視線からキーちゃんを後ろの方へと隠す。

その行動を見てなのか、そうなのかは知らないけれど。

魔物が少しだけ、寂しそうな顔をしたような、そんな気がした

その後再び地面が動き始める。

ぐっと私たちが乗っている足場を、大きく振り被ると…………

そのまま、海の方へ足場ごと勢いよく放り投げた。

身体が宙を舞う。

何とかキーちゃんは抱きしめているが、ひろ君や春ちゃん、リナちゃん、友恵さんには手が届かない。

友恵ちゃんは何とかしようと身体を動かしているみたいだけど、こんなに早く動いていたらどうしようもない。

ただ、飛ばされるままに飛ばされて、私たちは海に滑落していき……

海に叩きつけられると同時に、意識が飛んだ。



地面の底から這いあがってきたとき、雨でも降ったのかと勘違いするほどの湿気を空気が纏い、地面は何かが降り注いだような跡と燃えカスで埋め尽くされ、地面から突き出した岩石のような巨大な何かが、殺すはずだった召喚士たちを海へと勢いよく放り投げていた。

状況は整理できない。

俺が一度死ぬ前は、男が突然豹変し魔物へと変化して暴れていた。

だが今はその魔物の姿すら見えない。

上にいた面子で勝てるほど、あの白い変な魔物は弱くはなかったはずだ。

……まぁいい。

俺のやるべきことに変わりはない。

気にくわない奴と召喚士を殺す。

ただそれだけだ。

……今からでも狙えば、運よく当たらないだろうか。

弾を込めなおし、飛ばされていく奴らに標準を定める。

が、その人数に違和感を抱いた。

空を舞っているのは視認できるだけでも6人。

俺とやり合ったやつは少なくとも、あの場には俺と狂いだした奴を除いて8人いたはずだ。

……誰かがまだ地上に残っている。

長年一人で生きた来たからこその勘ってやつが働く。

俺なら……後ろだ。

背後へと銃口を向けながら振り返る。

その先にいたのは……


「……お前か、ナタリー」


「やぁ、久しぶりだね。グライ」


懐かしく、それでいて憎たらしい奴が俺の目の前に立っていた。



形あるものを壊すことを恐れていた。

今、ここにあるものが無くなる。

その現実を突きつけられた時、私の心は砕け散った。

残ったのは空っぽになった器だけ。

悲しい、寂しい、空しい。

そんな負の感情しか持たない哀れなもの。

そんな私に与えられたのは、仮初めの力。

この力でいったい何ができるだろう。

……前みたいに戦えるだろうか。


「我が主よ。何を恐れておられる」


「……怖いのよ。もう何も、失いたくはないから」


「では、なぜ主は剣を取り立ち上がったのですか?」


「…………」


「弱音を吐くためではないでしょう。その先に、未来に、何かを見たから立ち上がったのでしょう?」


「……うん」


「なら厳しいことを言いますが、歩き続けなさい。我々はそのためにいるのですから」


「……それもそうね。ありがとう、”ガラハッド”」


「いえいえ。仕える者として、主を律するのは当然のことです」


そうだ。恐れるわけにはいかない。

私がここであれを探し出して倒さなければ、未来が大きく変わってしまう。

そのために、あんなバカでかい障壁を使って手がかりを閉じ込めたのだ。


「おおよその魔力源は把握した?」


「もちろんです。なにせ、私を探すようなものですから」


「よし……なら行くわよ。”ドッペルゲンガー”を殺しに」








海賊の朝は早い。

朝日を浴びたら、まずは浜辺をお散歩をすることから始まる。

木でカニさんを突っつきながら、海上に怪しい船がないかを探す。

立派な海賊になるためにも、部下より出来る船長として慕われないといけないからじゃ!!


「うんたらったったったー、ふんふふっふふーん」


適当に鼻歌を歌いながらいつもの浜辺を散歩する。

いつもは貝殻とわかめくらいしか流れ着いていない浜辺。

だがそこに、今日は普段ないものが流れ着いていた。


「うにゃあ!?人!?それも沢山!!?」


誰も彼が怪我をしている。

特に男の人の怪我の仕方は凄い。

……あれ、生きてるのかな?

えぇい、今はそんなことは後回しじゃ!!


「全員こっちに来るのじゃーーーー!!」


今はただ目の前の奴らを助けなければならない。

海賊はお宝は奪っても、人の命までは奪わないのじゃ!!

それが、父様の教えなのじゃ!!

そうときまれば、すぐに行動じゃ!!

そうして彼女は動き出した。

黒いくたびれた海賊帽にドクロマークの刻まれたくたびれた上着。

海風になびく長く金に輝く髪の毛が朝日に照らされてさらに輝く。

今日は何かと忙しくなりそうなのじゃ、と心躍らせながら傷ついている人たちの為、父の教えに従って、少女はアジトへと急いだ。

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