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STAR SKY GUARDIANS  作者: 花海
第一章 残酷な世界 その世界へ一歩を踏み出して
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第一章45 絶氷都市フリーテ編 フリーテ崩壊

お待たせしました

穿たれた炎槍は、目前のものすべてを呑み込み敵に接触。

あれほどまでに動いていた敵が俺の入れた斬撃の効果もあったのか、最後は抵抗することなくその攻撃を受け入れジャルの放った炎槍に飲み込まれた。

ジャルの放った炎槍はそのまま敵の背後にあった屋敷の一部を呑み込み、そのまま遥か空の彼方まで流星の様に飛んでいった。

穿たれた炎槍の後には、何も残らなかった。

熱で地面はえぐられ、建物も真正面から槍を受け止めたところは蒸発し、その周囲も液体のようにドロッと溶けて、本来の形を失っていた。

……これが……ジャルの中に眠っていた力……。

言葉で表すにはあまりにも俺の語彙力がなさすぎる。

ただ、いうなれば、その威力はあまりにも巨大で強大ですさまじかった。

だが……


「…………」


ジャルの周囲に纏っていた炎が消えると同時に背中に現れていた文様が消え、力なく地面に倒れた。


「ジャル!!」


その場にいた全員が駆け寄る。


「おい!!ジャル!!」


「………えへへ、やりました」


力はきっと使い果たしただろう。

それでもその顔はどこかやり切ったような、清々しい顔をしていた。


「なんだ、心配して損しました」


「相変わらず厳しいな、おい」


少し呆れたような声でサーシャはジャルに言葉をかけていたが、やはり表情までは隠しきれないようで、いつもよりも嬉しそうな表情で倒れていたジャルを見ていた。

…………。

結果として、あの敵が何者だったかは分からなかった。

本当にルークさんと同一人物なのか、はたまた本物に似せたそっくりさんなのか……。

……少し嫌な予感がする。

もしかしたら、俺は……正解を知っているかもしれない。

もしだ、仮に……俺を育ててくれた花先生の様に”死体を媒介に蘇生して手駒にされていた”、この可能性が考えられるとするのなら……。

俺たちが、相対していたのは本当に……。


「いやぁ。実に素晴らしい戦いだった」


どこからともなく声がした。


「私の予想では誰かひとりかけるだろうと思っていたんだが、流石に因果逆転の巫女に呼ばれただけはある」


聞いたことの無い声の主は、ジャルが消し飛ばしたはずの屋敷の方から現れながらそう口にした。


「10年ぶりか、世界の運命を握るジョーカー」


現れたのは、ケープで上半身を覆い隠しフードで顔を隠した何者か。

咄嗟に身構える。

仮にあの人物が俺たちの味方なら、俺たちが接敵した時点で合流していてもおかしくはない。

それが何もかも終わった後に出てきたのだ。

この状況、敵である可能性の方が高い。


「警戒することはいい事だ。だが……」


すっと目の前からその人物が消える。


「君はもう少し敵意を向ける人間を選んだ方がいい」


トントンと右肩を叩かれながら耳元で囁かれる。

全員が反応できなかった。

気が抜けていた?それもあるだろう。

だがあまりにも、見えなかった。

それがこの状況で恐ろしく、恐怖の対象でしかなかった。

警戒心マシマシで、背後にいる何者かに意識を全集中させる。

その時だった。


「……そろそろかわいそうなので、からかいもその程度にしてあげてください。リーダー」


サーシャが俺の背後にいる人物をそう呼んだ。

……リーダー?


「あら?もうばらしちゃう?つまんないなぁ、少しからかってやろうと思ってたのに」


「下手すると攻撃されてましたよ……リーダーが負けるなんて思いませんが」


「あはは!ちょっと言葉に棘があるけど素直でよろしい!!」


俺の背後にいた人物はサーシャと楽しそうに話しながら、そのフードを取った。

言動、立ち振る舞いから大人だと思っていたが、その顔立ちは想像よりも幼く、少なくともまだ二十歳にはなっていないだろと感じるほど若々しかった。

まだ状況が理解できていない俺たちをよそに、その人物は、彼女は俺たちに手を差し出した。


「君にとっては初めましてだろうね。私はナタリー。ギルド連合に所属するギルド、ライブラのリーダーだ。かれこれ100年近くやらせてもらってるよ。よろしくね、ジョーカー」


もうどこから突っ込んでいいのかわからない自己紹介をもって俺の緊張状態は解かれた。



とにもかくにも彼女が俺たちの前に現れなかったのには何か深い理由があったみたいだが、その理由は語ってくれなかった。

だが少なくとも、今は俺たちに何かしようというわけではないみたいだ。


「さて、そろそろ真面目な話に入ろう。君が、君たちが倒したあれは一体なんだと思う?」


あれ、とはおそらくジャルが大技で吹き飛ばしたルークさんそっくりの人物の事だろう。

安直に考えるのならルークさん本人だ。

だがどうしても、どうしてもあの人がそう言った人間には見えなかった。

でもそれは俺が知る一部の側面。

本当は虐殺を好むような人間なのかもしれない。


「答えは簡単な話だ。あれはルーク・マーリア本人であってルーク・マーリア本人ではない。魂をいいように移し替えられ、マリオネットとして生きていかなければならなくなった人間の末路ってやつさ」


その口から聞かされたものは、俺がかつて知っていた方法ではなかったにしろ、あまりにも残酷な答えだった。


「……おや、驚いたかい?だがね、今は世界中がこんなものばかりだ。何せ貴族連合の目的は世界征服を目的としているからね。笑ってしまいそうな紛い物の夢だが、こうもけちょんけちょんに我々も負けてしまえば笑い事ではなくなってくる」


「……負けてるんですか?」


「あぁ、負けているとも。現に100以上あったギルドは私のギルド、ライブラを含め10も残っていない。抵抗すれば殺される、服従すればマリオネット。生きるも死ぬも地獄というわけさ」


さも滑稽な話の様に言っているが、信じたくないほどに深刻な問題だった。

これが世界の現状だと……知りたくはなかった。

ここには希望も何もない。彼女はそう宣言しきった。

それがいかに残酷なことなのか、分からなくはないからこそ、聞きたくはなかった。


「そんなわけで私たちは、共に戦ってくれる仲間を探しているわけだ」


「つまり、ギルド連合に入って欲しいというわけですか?」


「端的な話はそう言うことだ。だがどうも……そう言うわけにはいかないらしい」


「?」


「空を見てごらんよ」


言われた通り全員が空を見上げる。

そこには街に入ってくるまではなかった、黄色みたいな不思議な色とひし形の模様の障壁のようなものが街全体を覆い隠していた。


「あれが出てから転移のクオーツで外に出ようと試みているんだが、どうにも出れなくてね。その原因を今は調べ回っているというわけさ」


「調べ回っている……?」


「長年生きてきたが私もあんなものは見た事がない。……これが仮に十席のうちの誰かの仕業だとしたら……私の居場所を知られたということになるわけだ……ということはだね」


……十席?

何だ?それ?

聞いたこととのない単語が耳に引っかかる。

だがその話を聞く機会をナタリーさんは与えてはくれなかった。


「ならば君たちと私は距離を取った方が良いだろうね」


その言葉が発せられた次の瞬間、先程までいたマーリア家の屋敷からフリーテの中心、北部、南部、西部、東部に道が分かれている場所に飛ばされていた。

もう無茶苦茶だ!!あの人!!


「なによあの人!無茶苦茶じゃない!!」


俺が思っていた言葉をそのまま春香が口にした。


「春ちゃん!!そんなこと言ってる場合じゃない!!魔物に囲まれてる!!」


葵が警鐘をならす。

その言葉通り、周囲にはウルフ、ブルといった集団で移動する魔物が突然現れたエサである俺たちに向かってじりじりと距離を詰めてきていた。


「くそっ!まずは撃退するぞ!!ジャル!サーシャ!いるか!?」


「あまりお役に立てないかもしれませんが、出来るだけ頑張ります!」


「……」


「サーシャ?」


呼び掛けたサーシャからの返事はなかった。

ざっと周囲を見渡し、敵の位置を把握しながらサーシャを探した。

だが、サーシャの姿はどこにも見当たらなかった。






「それで……私を残したことに何の意味があるのかしら?私の任務は”彼らの護衛”でしょ?」


ナタリーの個性、ビヨンドで本来飛ばされるはずのサーシャだったのだが、なぜか飛ばされなかった。

それはギルドリーダーであるナタリーからの命令であり、ギルド連合のギルドリーダーたちから任された重大な任務でもあった。

それを、ナタリーは引き留めた。


「いやぁ、すまないね。少し事情が変わったんだ。あちらにはウィッカを向かわせてるよ」


「あの子を行かせたって……危ないじゃない」


「そこは辛抱してくれ。……なぁに、あれでも期待の新人。考えはあるだろう」


「ま、死なないことを祈るだけね。それで、事情が変わったって何?」


「あぁ、そうそう。……”仕事”の話だよ、サーシャ」





「……どさくさに紛れてまさかキーを狙ってくるとは……思いもしなかったよ」


抜き放った剣を目の前に立つフードを被った男に向けたまま、ノマスは口を開いた。

背後には友恵、リナ、キーの3人。これ以外はみなすでに道中で魔物か彼の銃弾に当たり死んでしまった。

リナとキーは恐怖のあまり声も出せずに友恵に泣きついていて、友恵も私の背後であまりにも非常な現実に足を震わせていた。

……こんなことがあっていいわけがない。

こんなにも現実が残酷であっていいはずがない。


「……」


無言で向けられる銃口。初弾で左肩に攻撃を受けてから左肩はもう上がらない。

魔法でどうにかしてあげたいのはやまやまだが、どうすることもできない

……どうすることもできない。

できないんだ。

”今の私では”


「……君は……なぜ召喚士を殺すんだい?」


ならできることは限られている。

時間を稼ぐことだ。

出来るだけ多くの時間を稼ぐことだ。


「……話すことなどない」


その言葉と共に、その人物はトリガーに指をかける。

その時だった。

高熱の飛翔体が上空を駆けた。

全員の視界が遮られ、視界が光で見えなくなる。

決め時はここしかない。


「はあああああ!!!」


敵と一気に距離を詰める。

だが敵も馬鹿ではない。

…………パン!





乾いた音が辺りに響き渡った。

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