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STAR SKY GUARDIANS  作者: 花海
第一章 残酷な世界 その世界へ一歩を踏み出して
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第一章44 絶氷都市フリーテ編 穿て、炎槍グングニル

お待たせしました~

なるべくジャルと葵の方に目がいかないよう攻撃を素早く入れ、離れてそこにまた別の人間が攻撃を入れてとヘイトを一人の人間に集めないようにしながら、気をそらしていく。

敵の動きを止められるほどの致命傷を叩き込むことが出来ればいいのだが、深くまで入り込めば俺の様に突然背後からの奇襲を受けるかもしれない。

それに……

接敵するたびに、「……オネガイ……コロシテ……コロシテ……」と呻くようにつぶやきながら、その手に持つ槍をでたらめに振り回している。

その言葉を聞くたびに、攻撃を入れるたびに、胸が痛んで仕方なかった。

だがなんにせよ倒さなければならないのは事実だ。

俺たちがここで負けたり、逃がしてしまえば、ノマスさんたちの方に向かうかもしれない。

こんな化物を、ただでさえ人材不足の向こうに行かせるわけにはいかない。

必ずここで内倒し、出来るなら救わなければならない。

特別処理に困るような魔物であれば、ある程度弱らせれば未来では俺の札で浄化できたが、あいにく今は持ち合わせが一つもない。

疑似的な効果を発揮するのは葵の光魔法だが、そもそもこんなでたらめな動きをする敵に魔法を撃つだけ無駄だろうし、そんなことをすればジャルのサポートが出来なくなる。

俺たちにできることが消去法で足止めしかないことに歯がゆさと苛立ちを覚えながらも、それでも刀を振るっていく。

神器を出すことも試みたものの、風華に「現界するまでの魔力をさっき消費したから無理」と難なく断られ、こういった時くらい無理して出てきてほしいなぁ!とか思いながらも鎬を削る。

戦況ははっきり言って全くよろしくない。ただただ体力の消耗戦になり始めている。

だからこそ油断すればやられる、そんなプレッシャーから一息も置くことが出来ない。

短い間にかわるがわる接敵することもあり、さらには環境が氷で覆われていることなど足元のすべりやすさ、気持ちの悪い夜風も相まって、俺たちの体力はゴリゴリと削られていった。

荒い息を整えるために呼吸をするも、周囲には肉塊となった人々がちらつくせいで吐き気を催すため、俺はある程度耐性があるにしても、春香やサーシャがこれに耐えれるかどうかは別だ。

現に春香はキツそうな顔をしている。

あまり無理はさせられない。


「洋一!!左後ろから来ます!!」


鋭く刺すようなサーシャの声が俺に警鐘を鳴らしている。

見えていない範囲からの攻撃を、声の度合いと迫りくる音の速さを聞き、素早く右に転がりながら攻撃をかわし、敵を視界にとらえる。

3人すくみで敵を必ず視界に入れているからこそこの戦いができるが、一人でもかけたら絶対に崩れる。

……あと何分持たせればいいんだ!!



洋一さんたちが敵に向かって走っていくその背中を見ながら、地面に魔法陣を展開した。

すぐに背中に炎帝の文様が浮かび上がり、周囲を少しずつ燃やしていく。

が、炎帝の文様が出てすぐに魔力が暴走しはじめ、想定以上の炎が周囲を覆いそうになる。

必死に魔力の暴発を抑える。そのサポートを少し離れたところで葵さんが手伝ってくれている。

葵さんもさっきの炎で服の一部が燃え、ところどころやけどしているように見える。そんな状況で、女の子が音をあげずに自分のやるべきことをこなしている。

だから僕も自分がやると言い出した、このことをなそう。

槍の矛先を空に向け、両手で持ち前に掲げる。

全てはこの一撃の為に、今出来る最善の一手を。

僕が、やるんだ。


「……1つ、灼熱をもって闇を照らす」


言葉と共に、炎帝の力で周囲に出た炎がのその全てが僕に向かって襲い掛かる。

その全てが僕を包み込み、らせん状に渦を巻きながら空高く登っていく。

信じられない熱量、肺が焼ける感覚。

身体が焼ける匂い、肉の焼き切れる気持ち悪い匂いが一瞬鼻を突いた。

だがその匂いも、痛みも、音も、何もかもが一瞬で遮断された。

何も見えない、何も聞こえない。

今立っているのかもわからない。今どうなっているかが分からない。

暗い、何も見えない。


………………


……………………………


それとも、もう、死んでしまったのだろうか。


自分で言いだしておいて、何と情けない。


「やっぱり、僕には……」


「そんなことないよ、おじいちゃん」


一度だけ聞いたことがある声が背後から聞こえた。

あの時の、少女の声。

お礼を言いたかった。

あの時背中を押してくれたこと、それが夢の中であったとしても、顔を見てお礼を言いたかった。

声を頼りに、少女の方へ向きなおろうとする。

だがその行動は、少女の声によって阻まれた。


「今……とても、私は人という形をしてないから。だから……そのままで、聞いてほしいな」


少女の手が僕の背中に触れる。

それで、気が付いてしまった。

この子には、もう、指が、なかった。

言葉が出てこない。こんな、ここまでの事をされて……僕なら、もう挫けている。

きっと逃げてしまっている。

……それが今の僕であったとしても。


「先が見えないものって、歩くだけできついと思うの」


「……え?」


「暗いし、怖いし。誰も助けてくれないし」


「………」


「育て親にも捨てられた。大切な家族にも見捨てられた。私に残ったものは価値のない大金だけだった」


「………」


「そんなときに、道を示してくれたのが、おじいちゃん」


「……僕?」


「迷ってて、どこに行けばいいのか、どうすればいいのかわからなくて。そんな時、私の前に現れたの」


「僕は、君と出会ったことがあるの?」


「ううん、今はまだ。つながりも、何も」


「え?」


「それでも私は、あなたを知っている。あなたという、人の生き様を知っている」


少女が何を伝えたいのか。何をもってその言葉を僕に伝えているのか。その意図は全く読めない。

ただ、それでもわかるものがある。


「だから、この言葉だけを伝えたかったの」


きっと、この子は……


「自分にできることを諦めないでね……おじいちゃん」


この言葉を伝えたかったんだろう。

背中の手の感触が消える。

もうそこに彼女はいない。

彼女が最後まで何者なのか知ることはできなかった。

でもきっと、この出会いは起こるべくして起こったものではないだろう。

誰かがこのチャンスをくれた。この機会を用意してくれたんだ。

僕が変われるように。


「……ありがとう」


僕はその言葉と共に、一歩前に踏み出した。

今度は、自分の意志で。



「2つ!!その煌きをもって道を開く!!」


僕は、負けない。

こんなところで、挫けてはいられない。

身体に降り注いでいた炎の全てが、両手に握られた槍へと集中していく。

最初は燃え盛る赤から青に、そして炎の色は美しい白へと変化した。

今までにない感覚だった。

まるで炎と一つになったような、自分が炎になったような、不思議な一体感。

これが、本当の炎帝の力なのだと……。

……いや、違う。

これは託されたものだ。

僕だけではここまで炎帝の力を引き出すことはできなかった。

洋一さんやサーシャさんたちとの協力があるから、そして何よりも、彼女との出会いがあったから。

だからこそ、今この力が使えている。


「3つ!!我が意思をもって目前の敵を穿つ!!」


だからこそ応えなければいけない。


「洋一さ――――――――——ん!!!!!!」



今までにない熱量を背後に感じたとともに、ジャルの声が響く。

そこにいる全員の動きが止まり、彼を見た。

かつてどれほどの人が彼を馬鹿にしただろう。

かつてどれほどの人が彼を罵っただろう。

かつてどれほどの人が彼が生き残ると思っただろう。

今のジャルは過去にとらわれてなんかいない。

あいつは今、ようやく、自分の意志で足を前に踏み出したんだ。

だがどうしようか。

あんなもの近くにいるだけで焼け死んでしまうだろう。

だというのに、逃げる手段を全く持って考えていなかった。

さてどうしようか。

そう悩んでいると、サーシャが一つのクオーツを懐から取り出すと、ジャルの後方へ向かって投げた。


「こっちに来てください!!」


サーシャが叫ぶ。

何か案があるのは間違いない。


「春香!!」


「っ!今いく!!」


敵の攻撃を受け止め、それをはじき返しながら相手の腹を蹴り体勢を崩し、春香はこちらに駆け出した。

もちろん逃げる隙など簡単に与えてくれる相手ではない。


「後はお願いっ!」


「任せろ!!」


春香と入れ替わる形で今度は俺が迫ってきた敵の攻撃を受け止め捌く。


「……コロシテ……コロシテ……」


……こいつは……。


「……あぁ、終わらせよう」


3人も相手にしていたことで疲弊していたのか、もう相手に接敵した時の鋭さはなかった。


「……頭義流抜刀術二の型……駆車」


動きの鈍った相手に2回斬撃を叩き込む。

けれど、決して命を奪うことなく、ただ動きを封じるためだけの駆車。

この使い方は、俺が今まで一度もやったことのない斬り方だった。

でも、きっとこれが正解だと思う。

俺の斬撃を喰らって敵は手に持っていた槍を地面に落とし、その膝を折って地面に力なく座り込んだ。


「……せめて夢の中だけでも幸せに」


その言葉を残して、俺はギアを使ってサーシャの元へと移動し、それを確認してからサーシャが真下にクオーツを投げると、足元に魔法陣が展開され気が付けばジャルと葵の後方へと移動していた。

なるほど。さっき投げたのは転移用のクオーツか。

でたらめに投げやりに行ったわけではないんだな。

……口に出したら変にまたやられそうだから、何も言わないでおくか。

元に色々助けてもらったわけだし。


「ほらっ!さっさと決めちゃいなさい!!」


サーシャが構えているジャルに、一言拳を突き出しながらその背中を押す。


「はい!!行きます!!」


それに元気よく、ジャルは応える。

その言葉と共に、前に掲げていた槍の矛先を動けなくなっている敵に向ける。

そして、


「我が意思をもってを目前の敵を穿て!!」


今までにないほどの力が込められたジャルの一撃が


「炎槍!!グングニル!!」


今、放たれた。

………

目が覚めるとそこはいつもの天井。

私達の時代には似合わない、ハイテクノロジーな機械の乗り物の無機質な天井だ。

今まで不思議な夢を見ていた気がする。

それは、私たちの為に道を切り開いてくれたおじいちゃんの若い頃のような、そんな夢だ。

それにしても……どうして彼に託された蒼の聖杯を私が所持していたんだろう?


「シェパ!!いつまで寝てるの!!」


バンと部屋の扉が勢いよく開かれ、大きな声で私の事を呼びながら、スパナとレンチを持った子が室内に入ってきた。


「……エルちゃん。おはよう」


「おはよう、じゃないわよ!!早く来て!!機体を異次元空間で存在証明し続けるの大変で私寝れてないんだから!!」


「うん、すぐ行く」


「早くしてね!!」


そういってエルちゃんはすぐに私たちの部屋から出ていった。

…………。

不思議な夢だったなぁ。

でも今は忘れよう。

もうじきそんなこと考える余裕もなくなるだろうから。

ベッドから体を起こし、ディーラー服に着替えてからいつもの帽子をかぶり、杖を持つ。

どんな賭け事も運と実力だけで勝ってきた。

その豪運が、きっと今の私がここにいる理由。

さぁいこう。もう後には戻れない。

私達が相対するのは…………





世界の創造神なのだから。




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ノアの箱舟編がアンロックされました。

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