第一章36 フリーテ編 大会2日目1
お待たせしました~
次の日の朝、ドラゴンナイツ騎士団の方々と共に朝食をとり、ノマスさんたちに応援されながら俺たちは騎士団を後にした。
だけど、昨日とは少しだけ面子が違う。
葵のそばには、昨日からともに過ごしているリナの姿があった。
まだ俺たちに慣れていないのかそれとも人見知りなのか、それは人となりを知らないからかはわからないがまだ少しだけおびえていた。
まぁ今日の朝食のあの風景を見て恐縮したっていうのもあるんだろうけど……。
……なんでドラゴンナイツ騎士団の人は朝から酒飲んでどんちゃん騒ぎしてるんだ?
あの人たち……ここに来た本当の目的忘れてるんじゃないのか?
だが、ここ2週間ほど金稼ぎのために受けていた任務でそんな光景は見慣れてしまった。
ある意味で俺も毒されてきてるんだな……。気を付けよう。
そんなこんなで歩いていると、いつの間にか闘技場の方にたどり着いていた。
まだ朝が早いということもあってか表通りもすいていたので、かなり早く到着することが出来た。
とりあえず他にやることもないしさっさと受付だけ済ませてしまうかと、意見がすぐにまとまり受付まで全員で行くと、そこには昨日の自称私は可愛いといいはる司会者が暇そうに羽ペンで遊んでいた。
「……ぅわっ」
サーシャが少し嫌そうな顔をして距離を取る。
「……どうした?」
「……私昨日こいつに紹介されるとき幼女って紹介されたのよ……」
あぁそれは……何ともまぁ……災難な。
「でも、サーシャさん身長低いですし可愛らしい女の子に見られてもおかしくはないですよね」
きっとジャルはサーシャが気にしている言葉をカバーしようとしたのだろう。ジャルらしい優しさであるとは思う。
だが今のその言葉、地雷では……?
そして誰もが予想した通りに……
「誰が可愛らしい女の子よ!!」
「うぐぉわぁ!」
ジャルにドストレートに言われたことが癪に障ったのかはたまた照れてしまったのかはわからないが、サーシャは赤面しながらジャルの腹に重たい回し蹴りを入れそのまま闘技場の壁にめり込ませた。
「私の年齢は19よ!!」
「えっ」
「えっ」
「……あなた達私をいくつだと思ってたの?」
「……13?」
その言葉を発した瞬間、気が付けば俺の腹にジャルと同じ一蹴りが入れられ、ジャルと同じように闘技場の壁にめり込んでいた。
それから、俺とジャルの2人は今日の試合が始まる1時間前まで目覚めることはなかった。
「……全身にスゲー痛みが走るんだけど……」
「同感です……」
「2人とも自業自得だよ」
葵に少しだけ冷たい視線を向けられながら、自分とジャルにクイックヒールで傷つけられた身体を癒す。
周囲の出場選手からは、何故怪我をしているんだこいつらはという奇怪なものを見るような視線を四方八方から浴びながら。
……何のプレイだよ、これ。
「……あぁ、起きたの」
そしてサーシャからは起きてから冷たい視線を送られるづけるし、今俺たちはどこにも心が休まる場所がない。
……早く試合が始まらないかなぁ……。
サーシャの逆鱗に触れた俺たちは叶いもしないそんな願いを心に秘めながら、1時間その苦痛に耐え続けた。
そしてようやく……
『さぁ!!フリーテが誇る伝統的な大会2日目!!200年前英雄ガラハッドの意志を残すために開かれ続けている今大会。今年も残ったのは強者ぞろいです!!司会進行は変わらず誰もが目が眩むほど可愛いウィッカちゃんが引き続きしていくよ!!』
「黙れ!!クソガキ!!」
「司会者いい加減変われ!!」
『うるせぇ!!玉引っこ抜くぞ!!モブ風情が!!』
普通ではありえない司会進行の声が闘技場内全体に響き渡った。
『……コホン。気を取り直して……。それでは準決勝一回戦!選手の入場です!!』
昨日からずっと聞こえていた、司会者とは思えない発言をする少女の声が聞こえてきた。それと同時に俺たち4人の名前が呼ばれる。
昨日と同じ格好をした女性の元へと行くと、昨日と同様に闘技場へと続く道に通された。
だがここで、俺たちの中で一つだけ問題が浮上した。
「リナちゃんどうしよう……」
「……そう言えばそうだな」
忘れかけていたが、今回の大会のチーム参加最大人数は4人までとなっている。
しかも、リナはもともと別チームでこの大会に参加していたこともある。
俺たちと一緒に闘技場内に上がるわけにはいかないだろう。
かと言って、面倒を見てくれる相手がいるわけでもない。
……いったいどうしたものか。
すると困っている俺たちをみかねてか、女性が「よろしければ、その子を関係者席でお預かりしましょうか?」と案を出してくれた。
こちらにとってもありがたい提案だったので、その言葉に甘えさせてもらう形でリナを預かってもらった。葵と離れる時に、少し寂しそうな顔をしたが、葵がすぐ戻ってくるよと一声かけると、年相応の笑顔を見せた。
そして再び4人になると、別の受付の女性からついてくるようにとの指示を受けその背中を追った。
「今回は4人で戦うのかな?」
「4対4ならまだいいけどな……」
「そうね。4チーム同時につぶし合いとかだったらさすがに笑えないわ」
「まぁそれが一番考えたくはない最悪の展開だな」
2、3週間の付き合いの人間同士ということもあって、この4人での連携は正直上手くいったためしがない。俺と葵はまだ付き合いが長い分、動きの癖も知っているから何をしたいかなどは考えが付くが、サーシャ、特にジャルに至ってはいまだどう動くかわからないことが多い。
昨日の試合ではなかなか盛り上がっていたようなので、ある程度戦えるようにはなっていると思うが、それがいったいどういった動きなのかをこちらはまだ把握していない。
だから、どちらかというと不安が大きいのは確かだ。
でも……
「何とかなりますよ!僕たちなら」
今までのジャルなら言いそうにない言葉を、ジャルは俺たちの背中を押すように明るい声で言って見せた。
「貴方が不安の種なんですよ」
「サーシャさんが辛辣なんですけどっ!!」
「……ははは」
「にぎやかだね」
でも、きっと。
ジャルの言う通り、何とかなると思えてしまった。
そんな他愛もない話をしながら歩いているとすぐに闘技場のスタジアムへたどり着いた。
『さぁ!最後に入ってきたのは!!東国からの初参加者!!昨日は事故で実力が見られなかったがはたして実力やいかに!!ヒロカズ率いるチーム”ハルシオン”!!』
……ハルシオン?
おそらく銀狼が付けたであろうチーム名。いったいどういった意味を込めたんだろう?
というか、この言葉をそもそも聞いたことがない。
「銀狼さんの事だから、適当に思いついた言葉をチーム名にしたのかな?」
俺の疑問に、葵が独り言ちるようにつぶやいた。
なるほど、確かに銀狼ならかなりいい加減なところがあるからそう言うこともしかねない。
というか、俺たちのチーム名に変な名前を付けてわざと注目の的を集めようとしているのかもしれない。
まぁ今それらは確かめることは出来ないのだけれども。
『さぁ4チームすべてが出そろいました!!準決勝での試合方式はチーム戦バトルロワイヤル!!』
司会者の言葉が終わると同時に、観客が沸く。
スタジアム全体に重圧がかかっているとも思えるその歓声の中、俺たち以外の参加者たちは各々の武器を構えた。
それにつられるように俺たちも武器を構える。
『最後まで生き残ったチームのみ決勝戦への切符を手にします!!さぁどのチームが勝ち残るのか!!それでは!!準決勝一戦目!!開始です!!』
司会者のその言葉と同時に試合開始のコングが鳴らされた。




