第一章30 フリーテ編 大会一日目1
お待たせしました!!少しずつ文章量を戻していけたらなって思ってます!!
大会本番の朝。
ここ2週間の間に、日が昇ると起きる習慣が付き始めていた俺は日の出とともに目覚めると、必要な荷物をまとめた。
外に出るとすでに葵とサーシャが表で待っていた。
「おはよう、ひろ君」
「おはよう、寝坊助。珍しくぐっすり寝ていましたね」
「おぉ、…おはよう…」
あくびをしながら返事をすると、葵とサーシャから昨日はちゃんと寝たのかと心配された。朝に弱いだけだから大丈夫と返事をしながら、朝ジャルと合流することになっているドラゴンナイツ騎士団へのんびりと向かった。
表参道はすでにたくさんの屋台や人であふれていて、改めてこの大会がフリーテにとって、大きなイベントであることを思い知らされた。
ドラゴンナイツ騎士団の前に着くと、春香がいつもよりも重装備で騎士団らしい恰好をして基地の前で数人の屈強な騎士団の兵士たちと何かを話していた。俺たちが春香たちに近づいて声をかけると、もう来たの?とでも言わんばかりの顔をされた。早く来たって別にいいじゃないか。内心そう思いながらもこんな早くから何してるのか尋ねた。
「見回りよ、見回り。今日はいろんな人間が来るし、屋台の数も多い。人が増えれば増えるほど、事件は起こりやすくなるでしょ?だから、朝から見回りに行かなきゃいけないの」
「そりゃ大変だ」
「ひろが大会に出なかったら、絶対手伝わせてたのに…。ねぇ、私とあんたのポジション今日だけ交換しない?」
「絶対に嫌」
「ちぇー…」
「春ちゃん、頑張ってね」
頬を膨らましこちらを羨ましそうに見てブーブーと文句を言いながら、
「ジャルはまだ中で寝てるから、起こしてやってねー」
と言って、、がっくりと肩を落としながら見回りに行ってしまった。
騎士団も大変だ。……前まで自分も似たようなものだったけど。少し前の、軍での雷光さんとのやり取りを思い出し、苦笑しながら春香を送り出すと、俺たち3人はまだ室内で寝ているらしいジャルの部屋を訪れた。
部屋に入ると、まず目に入ったのはジャルの槍だった。この前まで一緒に居た時は見なかった傷がいくつも増えていて、刃こぼれも多く、かなり使い込んだ跡があった。この短い間にいったい何をしたんだと思うほどに傷ついた槍、そして、ベッドの上では頬や腕にかなりの怪我を負ったジャルがスースーと寝息を立てながら気持ちよさそうに寝ていた。
「…いったいどんな特訓してたんだ……?」
「しかも、起こすのをためらうくらいぐっすり寝てるね…」
「何躊躇ってるの。起こすわよ」
起こすのを躊躇っていた俺と葵を差し置いて、サーシャは寝ているジャルに近づくと、お腹付近を狙って握られた拳を、思いっきり振り下ろした。
次の瞬間
「――――――――――――――――――っ!!!!!!!!!」
今まで聞いたことない人の叫び声を聞いた。
「…な、何で…あんな起こし方したんです……サーシャさん…」
「起きないあなたが悪いんです。もうすぐ大会が始まるというのに……よくあんなぐっすり寝られましたね」
ひどい起こされ方をしたジャルは大会が始まる前だというのに、すでにヨボヨボのおじいさんのように足元がふらついていた。だがその目には、この前とは違う何かが宿っているようなそんな気がした。ボロボロの状態のジャルを簡単にクイックヒールで治してから、ジャルが着替えて表に出てくるまで俺たちは表に出て待っていた。
すぐに基地内から出てきた着替えて出てきたジャル。それを見てだれもが絶句した。胸のプレートにはところどころ穴が開いていて、どう見てももう防具とは呼べないものになっていた。さらに、服もところどころ破れ、とてもじゃないが服と呼んでいいのかどうか怪しいものになっていた。
「………」
「………」
「………」
「皆さんお待たせしましたっ!……って……どうしました?なにか僕おかしい格好していますか?」
自覚無し!?
大丈夫か!?ジャル!!
言いたいことはたくさんあったが、ジャルの格好を見て何を言えばよいのかわからない中、サーシャが口を開いた。
「とりあえず……これに着替えてください」
いつも背中に背負っている箱型の鞄を下ろし、中から何かしらの服を取り出すとジャルに押し付けるよう手渡した。
「あ、ありがとう…ございます…」
「いいから、早く着替えてきてください。大会に間に合わなくなります」
「は、はい」
そう言ってジャルはすぐに、基地内へと消えていった。
「…まったく……なんで前もって準備を終えてないのですか……ほんとにもう…」
ぶつぶつと基地内に消えていったジャルに小声で文句を言いながらも、サーシャのその顔はいつもとは違い、少しだけ笑っていた。
着替えてから出てきたジャルと再び合流してから、俺たちはさっそく会場へと向かうことにした。大会の会場はこの街一番の石像が立つ場所の目の前にある闘技場………らしい。
石像?闘技場?街の奥のほうまで行っていなかった俺は、いったいそれがどこにあるのかさっぱり分からなかった。
「そんなこともあるかと思って調べてきました」
サーシャがそう言いながらこの街に来たときに、何とか買った地図を広げながら先頭に立って俺たちを人ごみのなか会場まで導いた。
会場となる闘技場の前に着くと、確かに闘技場の前に騎士の石像が立っていた。しかも、まだ作られたばかりの様で、とても綺麗だった。
石像の下の段にはこう名前が記されていた。
”Ga1ahad”
……?なんか英語のスペルが少しおかしいような気がするんだが……見間違いだろうか?それともかすれて読みずらくなったのか?
「フリーテの英雄、ガラハッドの石像ね。あなたは彼の物語を知ってる?」
俺が首を横に振った。
「ま、知らなくて当然よね。彼は15年前、”魔法を使用することが禁じられていたフリーテ”で魔法禁止の概念を取り壊した、わかりやすく言えばこの街で魔法が使えるようになったきっかけとなった人物よ」
「…フリーテでは魔法の使用が禁じられていたのか?」
「そうらしいわね。私もその時の事は詳しく知らないから、どういった経緯でそうなったかはわからないけれど」
フリーテにそんな歴史があったのか…。
「葵は知ってたか?」
「私?うん、知ってたよ」
「え?」
「だって、このガラハッドさんと確か魔女の森の誰かが結婚したって話を婆様から聞いてたから」
まぁ、だからこそ、フリーテにはあまり近付くなって言われてたんだけどね。色々と危ないらしいって話を聞かされていたから。
何気ない顔でそう言う葵の話を聞きながら、俺は改めて石像を見上げていた。
今の話からすると、ここに立てられている石像の人物ガラハッドはまだ生きている人ということになる。
もし会う機会があるのなら、色々と話を聞いてみたいな。
そんなことを思いながら、受付の時間に遅れないようにするために、俺たちは石像から離れて、会場である闘技場の入口で受付を済ませた。
受付の人に待機室にたどり着くと、そこは人が多く汗のにおいが部屋中に充満し、何より蒸し暑かった。
春香ならまず入っただけで音を上げそうな部屋だな……。
そう思いながら葵たちを見てみると……
案の定、苦渋に満ちた顔をしていた。
いや、ね?わかるけども。そこまで露骨な顔をするんじゃないよ。特にサーシャ。鼻をつまむな。気持ちはわかるが、鼻をつまむな。
だがまぁ、実際息苦しいし、いるだけで辛い。俺たちの時代と違いエアコンがないのが、本当に、何よりも、辛い。
早く始まってくれ……、と心の底からそう思った。
そうこう待つこと数十分。会場の中である名前があがった。
「サーシャさん、ジャルさん。準備をお願いします」
あれ?2人だけ?俺や葵は呼ばれないのか?
「サーシャ、そう言えば、この大会のルールってなんだ?何か聞いてるか?」
「私は知らないわよ。大体、こういったものに参加するのも初めてだから、勝手なんて知らない」
「葵とジャルも何か聞いてない?」
「私は知らないかな」
「…すみません。僕も判らないです…」
………こういったお祭り行事のような大会なら、大体決まったルールみたいなものがありそうだが……。
いや、固定概念を持つのはやめよう。ここは俺がよく知る時代じゃない。イレギュラーはいつでも起こりうる。なら、とりあえず、今は自分の眼で見て、体で感じるしかない。
「サーシャさん、ジャルさん。早く準備をお願いします」
闘技場のスタジアムの入り口で、受付に立っていた女性が声を上げて叫んでいる。
今は、見送るしかない。
「まぁ、なんだ。とりあえず、ぎばってこい」
「……ぎばっ…?」
「頑張って来いってことだよ。特訓の成果見せてやれ」
そう言ってジャルの背中をたたき、サーシャにも頑張れと一言伝えてから2人を見送った。
僕とサーシャさんは洋一さんたちに見送られてから、受付にいた女性の後ろを歩いていた。
「体は大丈夫なの?」
「大丈夫です。回復してもらったので」
「……そう。まぁ、やりたいように動いていいわ。私があなたに合わせるから」
サーシャさんは僕の事を心配してくれてたからなのだろうか。普段よりも優しい言葉使いで、いつもは言わないであろう提案をしてくれた。
「ありがとうございます」
一言お礼を述べると、受付の女性が立ち止まった。
スタジアムは目の前だ。
「それでは、勝利を目指して頑張ってください」
そう言い残して女性はその場を後にした。
「行きましょう」
「…そうね」
大丈夫。もう……逃げない。
勇気をもって、僕は足を前に踏み出した。次の瞬間、僕の耳に届いたのは………
「死ねっ!!マーリアの恥さらし!!」
「役立たずのくせにでしゃばるんじゃねぇよ!!」
「なんでお前がまだ生きてるんだよ!!早く死ねよ!!」
サーシャさんすら絶句するほどの僕に対する罵声だった。
次回は珍しくジャル&サーシャ視点です




