第一章28 フリーテ編 氷槍との出会い
お待たせしました。
あけましておめでとうございます。
今年の目標は第2章までの完結を目指していこうと思います。
よろしくお願いします。
目が覚めた時、そこはベッドの上だった。
部屋は小さなろうそくの明かりがあるだけで暗く、夜であることだけは察することが出来た。
「おや、目を覚ましたのですね」
横になっていた俺のすぐそばでノマスさんは本を読みながら、俺に優しい言葉をかけてくれた。
「……ここは……」
「ドラゴンナイツ騎士団の基地内ですよ。君たちが向かったほうで魔物の咆哮が聞こえたもので、駆け付けてみたところ、君たちが倒れていましたからここまで運んできたのです」
「…それは…ご迷惑をおかけしました…」
「お礼なら私ではなく、彼に言いなさい」
…彼?あぁ、きっと銀狼の事だろう。あの時かなり危なかった俺たちの間に割って入り、一人でその危機を脱したのだ。お礼を言わなければならない。
きっとすぐそばにいるであろう銀狼を体を起こして室内にいないか探したが、銀狼の姿は室内にはなかった。その代わり、銀狼と少し似た青銀色の髪の背の高い騎士のような人物がいた。
「やぁ、君が洋一君だね。話はシエラから聞いているよ」
その男性は、ベッドの中にいる俺にゆっくりと近づいてきて、近くに来てようやくその顔がはっきりと見えた。だがその顔は、最近身近にいるよく知った人物ととても似ていた。
「……ジャル…?」
「ははは、似ているからね、よく言われるよ」
そう言ってにこやかに笑いながら、その人は手を出してきた。
「初めまして、僕はルーク・マーリア。ジャルの兄だ。よろしく頼むよ」
次の日の朝、改めてジャルのお兄さんであるルークさんと俺たち全員で顔を合わせることになった。
「洋一君には先に名乗っているが、僕の名前はルーク・マーリア。ジャルの兄だ。シエラから君たちの事はここ一週間ずっと聞いていたよ。…良き友に恵まれていると」
「兄さん!……恥ずかしいよ!!」
「いいじゃないか。お前は僕にとってとても大切な家族なのだから」
久しぶりに会うためか、それとも気恥ずかしさのためか、ルークさんの言葉を受けてジャルは顔を赤くするほどまでに照れていた。ジャルの話を聞いてあまりマーリアという貴族柄に良い印象を持つことはできていなかったが、ルークさんだけはどうやら違うようだった。
……こうしてみていれば、とても仲がいい兄弟なんだがな。改めて、どうしてジャルを勘当なんてしたんだろうと思った。だがその疑問を少し掘り下げようとしたとき、サーシャが声を上げた。
「ルークって、あの!?ルーク・マーリア!?氷槍の!?」
驚きのあまりにサーシャの声は珍しく裏返っていた。どうやら相当凄い人なのかもしれない。
「…もしかして、凄い有名な人……だったり?」
「凄いどころか、超がつくほどの有名人ですよ!!マーリアという血筋の中でも極めて珍しい炎とは相反する氷魔法を用いて作り出される氷槍グングニルはその周囲一帯を凍り付かせその状態が真夏のような場所でも1年以上凍ったままだということで、とても、有名な、方なんです!!」
顔をぐいぐいと近づけながら息継ぎなしで俺に力説するサーシャに少し引きながらも、ルークさんがかなり凄い人物であるということを知ることが出来た。というか、最後息継ぎできてなくて、サーシャ凄い顔してたな……。うん、面白かった。でも言ったらきっと半殺しに合うので、心の奥底にこの記憶と言葉は仕舞っておこう。
「…確かに、シエラから聞いていた通り、とても面白い人達みたいだね」
ルークさんはそう言いながらジャルの頭の上に手を置くと
「良き友に巡り合えたようだね、ジャル」
優しい声をかけながらジャルの頭をなでていた。とても仲の良い兄弟だと思ったのと同時に、少しだけ羨ましくもなった。
「かず兄かず兄!!頭撫でて!!」
「…小夜。どうしてまた急にそんなことを…?」
「…えへへ…なんとなく……駄目…かな?」
「いいに決まってるじゃないかー!」
「ひゃー!!」
懐かしい光景が、頭によみがえってしまう。それくらい、ジャルとルークさんは俺にとって眩しいものに見えた。
……とても………眩しかった。
それから俺たちはルークさんに助けてもらったお礼を言って、とりあえず今は解散することになった。理由は単純で、久しぶりに会うのだから兄弟水入らずのほうが良いだろうということだった。それに、俺たちは昨日宿に帰っていないから、宿の人もきっと心配しているだろう。それにもしかしたら、銀狼は先に帰ってそこで寝ているのかもしれない。春香や友恵は昨日の事でノマスさんと話があるらしく、宿には俺と葵とサーシャの3人で行くことになった。
ここ最近歩きなれた道を進み宿に戻ると、宿の中は相変わらずがらんとしていて静かだった。
基本この宿にいる時、そのほとんどを銀狼は宿のテーブルのあるこの空間で過ごしていたので、てっきりここで待っていて、今すぐに、また特訓に行こう、というものだと思っていた。だが宿の中に銀狼の姿はなかった。借りた部屋の中にもいないか確認してみたが、そこに銀狼の荷物はなく、銀狼の使っていたベッドの上に手紙が一枚残されていた。
そこには、短い文で俺たちに向けた言伝が書かれていた。
急用でパチェリシカに向かう。今まで世話になった。
特訓は今まで同様手を抜かぬよう精進しなさい。
やれることを最後までやり抜くこと。
最後に…仲間が迷惑をかけた。
……仲間?いったい何のことだ?何のことかわからず、俺はとりあえず銀狼のベッドの上にあったこの手紙を葵とサーシャにも見せた。だが、2人に見せても頭をかしげるばかりだった。ただわかっていることは、もう銀狼は俺たちの所に戻ってこないということだけだった。




