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STAR SKY GUARDIANS  作者: 花海
序章 日本 ○○○○
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序章1-2 慌ただしくも温かい日常 (改稿済み)

集合場所に指定されたメインホールに向かうためにエレベータに乗り込んだ。

エレベーターには先客がいて、彼は今まで見た事のない男性だった。

新人だろうか?それとも……異動してきた人かな?

いずれにせよ俺にはあまり関係のない話だ。

……最前線で戦わない、俺にとっては。

目的の1階までたどり着くと、俺は急いで雷光さんたちがいるであろうホールへと足を向けた。

その時だった。


「2年後に、あなたと再会するのを楽しみにしています」


後ろから柔らかい声で話しかけられた。

しかし、振り返った先に先程までいたはずの男性はいなかった。

……なんだ?疲労で幻覚でも見ていたか……?

それとも……。

この件は後で幸幸さんに報告しておこう。

とにかく今は、ホールへ急ごう。

だっと止まっていた足を動かして、集合場所に指定したメインホールで雷光さんの姿を探す。

武士っぽい恰好をしている雷光さん、その姿を見つけることはそう難しいことじゃない。

すぐに雷光さんを見つけ、傍へと駆け寄った。


「お!来たでござるな!もうお腹は大丈夫でござるか?」


「おかげさまで。おしるこが効いたみたいです」


「それは良かったでござる!また洋一殿が体調を崩したら、おしるこを持っていくでござる!」


それはちょっと勘弁かな、雷光さん。


「それで……、今日の新人研修を行う方々はどこに?」


「もうそろそろ武器を持って戻ってくるでござるよ。ほら、言ってる傍から来たでござる」


ぱたぱたと近づいてくる足音に視線を移す。

そこにいたのは俺と同じ年くらいの少年少女。

しかも少年の方は見知った顔だった。

雷光さんの前に彼らはピシッと整列すると、


「近接戦闘部隊所属になりました!坂本鉄(さかもとてつ)です!よろしくお願いします!」


「ま、魔法攻撃部隊所属の、にゅ、に、西谷結衣(にしたにゆい)でしゅ!」


少女の方は噛み噛みで顔を真っ赤にしていたけれど、所属と氏名を名乗った。


「今年の新人は元気がよろしいでござるな!そう思うでござろう?洋一殿!」


「俺はそれよりもどうしててっちゃんがここにいるのかを知りたいですけどね!!」


坂本鉄と名乗った少年は、俺が2年前にこの街に戻ってきてから仲良くなった友達だ。

戦闘のセンスもあり、家族の為にも軍で働きたいと元から志願していた軍人として成長していくには優秀な人材。

軍が欲しがるのもわかる。

けれど俺のひどい扱いを鑑みて、学生から入る必要はないと反対していた。

そんな奴が今、目の前にいる。


「……入るなって言ったのに……どうして入ったんだよ、てっちゃん」


「いやー……、雷光さんと幸幸さんに推薦されちゃって……。元々入隊したかったからちょうどいい機会だと思ってさ」


「……雷光さん?」


キッと鋭い視線を雷光さんに送ると、雷光さんは視線を合わせないように明後日の方に視線を向けて、口笛を吹いていた。

幸幸さんがここに来なかった理由が改めてわかった気がする。

とにかく文句を言いたくて仕方がなかったので、やけくそで電話を飛ばした。


「やぁ、洋一君。私のプレゼントは楽しんでくれたかい?」


開口一番ケタケタと笑いながら、電話に出た幸幸さん。

予想通りにかけてきた、と馬鹿にされたような気がして俺はホールのど真ん中にいることも忘れてギャンギャン文句を飛ばす。


「まぁまぁ、落ち着きたまえ。君の言いたいこともわかるが……こちらも人材不足なんだ。不測の事態に備えるためにも、優秀な人材は確保しておきたいものなんだよ」


「……それは、てっちゃんじゃないといけないんですか!?」


「あぁ、星の導きだ。だから君がどれほどの権限を使っても、私は私で押し通すつもりだよ」


……何を言っても無駄か。

これ以上の問答を続けても意味はない。

悔しい気持ちと怒りを抑える。


「……では、少し気になったことがあるのでそちらの対応をお願いします」


そして、先程エレベーターの中ですれ違った男性について、特徴と俺に向けて発したと思われた言葉を伝える。


「なるほどね。分かった。疲労か幻覚かは分からないがそちらは私の手のもので対処しよう。ついでにまとまった休みが取れるよう手配しておくよ」


「お願いします。……ところで失踪って聞きましたけど、今どこに……」


「あー!なんか急に電波がなー、聞こえないなー、あーこれはもう切るしかないなあー」


ブツッ。

こちらの発言も待たずに電話が切れた。

……やっぱりバックレやがったあの人。

ただでさえ回っていない業務が、さらに滞る現実に頭がチカチカする。

はぁー……と大きなため息を出さずにはいられなかった。


「雷光さん。後で幸幸さんが溜めてた書類関係処理の7割方やってもらいますからね」


「そ、そんな!?ただでさえ量が多いのに無理でござるよ!!」


「俺の心労に比べたら軽いので、よろしくお願いします」


非常でござる~!温情を~!と横で雷光さんが駄々をこねる。

それを何とも言えないような顔で、鉄と西谷さんは俺たちのやり取りを見ていた。

研修のしょっぱなから上司の、いかも幹部クラスの失態をこのまま新人たちの前で垂れ流すのは、俺たちの沽券にかかわる。

それにこれ以上この二人の研修を遅らせる訳にはいかない。

泣きつく雷光さんを無視して、外へと向かう。


「てっちゃん、西谷さん。……研修に行きましょうか」


俺のなんとも気まずそうな雰囲気を察しながら、てっちゃんは笑い、西谷さんはどういう表情をしてよいのかわからないとオロオロしながらも先を行く俺に続いて研修へと向かった。

あの後すぐに雷光さんも追いつき、その頃には先程まで駄々をこねていた情けない姿はなく、シャキッと背筋を伸ばし何事もなかったかのようにてっちゃんたちに話しかけていた。

……雷光さん。さらした失態ってのは簡単にはぬぐえないんやで。

しかも、ほぼほぼ初対面と言える西谷さんに対しては尚更。

結局、何とか面目を回復しようと試みた雷光さんだったが、西谷さんはさらに怖がって雷光さんが喋るたびに少し距離を置くようになった。

……おもしろ。

幸幸さんにも後でこのこと報告しておこう。

当の雷光さんは、距離を取られたことがよっぽどショックだったのか、少し離れたところでしょげてぶつぶつ何かをつぶやいていた。


「なぁ、ひろ。……雷光さん、あのままで大丈夫か?」


「……大丈夫、だと信じたい」


「急に不安になる返事をするなよ」


「まさかこんなことでしょげるとは思わなかったんだよ。雷光さんの強さ知ってたらわかるだろ?」


「まぁ……そうだな」


「ほら、雷光さん。いい加減しょげてないでしゃっきりしてください。仮にも研修なんですから」


「…………分かったでござるよ。ここからは……気を引き締めるでござる」


先程までのなよなよした空気はどこへやら。

気を締め直した雷光さんの変わりように、少しだけ空気がピリつく。


「何もそこまで気を引き締めなくてもいいでしょう?」


「だって!これくらいしか下がった拙者の株をあげる要素がないでござる!!」


「そんなこと言ってるからモテないんですよ」


「あー!今一番言ってはいけないことを言ったでござるな!!」


そこ気にするほど、雷光さん歳とってないでしょうに。


「はい、馬鹿はほっといて改めて説明するぞー」


こうして、騒がしい研修が始まった。

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