第一章4 ???の試練 (改行済み)
時間が欲しい!!時間が欲しい!!あああああああああああ!!!!
遺跡の中に入ってから道なりに進んでしばらく進むと、少し広めの広場に出た。
湖の中に沈んでいたためか、かなり湿気がひどく、呼吸もかなりきつかった。
抜け出せるのなら、早めに抜け出したほうがよさそうだ。
道は3方向に分かれていた。
目の前の扉は完全に締まっており、その両サイドの扉は開かれている。
おそらくどちらか、もしくはどちらとも攻略しなければいけないのだろう。
……時間も惜しい。早く進もう。
直感を信じ、まずは右側の空いている扉の方に3人で足を運んだ。
道を少し進むと、亀のような大型の魔物と何度も遭遇。
甲羅が固く、刀も簡単に折られそうだし、属性が風属性だということもあり、ラフィナの魔法では有効打撃を与えられないので、俺が遠くからちまっちま火属性の初期魔法攻撃ファイアーボールで倒して先に進んで行った。
「……お前、これ一応試練なんだろ?こんな形で勝って進んで行っていいのか?」
ライから心に刺さりそうな質問をされる。
確か一応試練だし、形だけでもきちんと戦ったほうが良いのかもしれないが、俺が今目指しているのは、この試練の迅速なクリアと脱出だ。
「俺が今優先してるのは、お前らの命だ。生きて帰ることの方が大切だろ?」
だから、例えこれが俺の望んだ力を手に入れるのに間違った方法であったとしても、必ず無傷で3人で脱出することを最終目標に置いている。
というか、それ以前にこの戦い方が今一番合理的な戦い方だからそうしているだけなんだが……やっぱ汚い戦い方って思われるよな。
俺だってそう思うもん。
こんな戦い方してくる奴がいたら、絶対表に出てこいっていうもん。
でも、安全って大事だよね!!
誰も怪我しないような戦い方をずっと続けてながら奥へ進んで行ったら少し広めの空間に出た。
どうやらこの場所はここで行き止まりみたいだった。
周囲を見渡すが、これといって何か目立つものがあるわけではない。
なんだ?はずれの道でも選んだか?ならいったん戻るか。
「行き止まりみたいだし、いったん戻ろうか」
「だな」
「うん!」
そうして、俺たちは先程この空間に入ってきた場所からもと来た道へと戻ろうとした。
だが、気が付けば退路を塞がれてしまっており、完全にこの空間に閉じ込められた。
何が起こるかわからなかったのでライとラフィナを俺の後ろに下げて、いつでも戦闘態勢に入れるように構える。
ゆっくりと周囲を見渡していく。
だが、あるのは壁だけだ。
他には何もない。
それなのに、何か嫌な予感がする。
その時、何かが聞こえた。
まるで何かを斬るような、そんな鋭い音。その何かがひゅんひゅんと音を立て、通り過ぎていく。
……何かがいるのは確かなようだ。
だが、その実体が見えない。
……違う!もともとそういう魔物なんだ!!
音だけを頼りにその方向へ向かってファイアーボールを放つ。
その音の方へ向かって放ったファイアーボールは、何かにぶつかってはじけた。
そして、それが火属性の魔法に当たったことによって、姿を現した。
ゴーストのような体に獣の頭、それに両腕には鋭い鎌。
間違いない。
「カマイタチ!!」
俺たちの時代では、あまりにも珍しい魔物としてリストに載っているくらいの希少な魔物だ。
俺もデータでしか見たことがないから、実際にその姿を目にするのは初めてだった。
だが、こいつの凶暴さは確かA以上だったはずだ。
つまり……
「―――――――――――!!!」
甲高い声でカマイタチは鳴くと、その手にある鎌を思いっきり振り下ろした。
それと同時に何かが大きな音を立てながらこちらに接近してきた。
とっさの判断で、ライとラフィナを横に突き飛ばして俺はそれとは別方向へ飛んだ。
直後、俺たちのいた地面に何かで斬ったような跡が生まれた。
クソッ!最初からこの難易度かよ!!
心の中でぼやきながら抜刀しカマイタチの方に向かって飛び出し刀を振る。
だが、かなり移動が速くそれに姿も消せるようで、すぐにその姿を隠してしまった。
厄介な魔物がいたもんだ。
さぁ、どう見つける。
これがおそらく、見極める目を持つためにふさわしいかとかいう試練の一つだろう。
いや、それとも……もともとこういう試練なのか?
この遺跡に入る前の言葉を思い出す。
”汝はすべてを斬り刻む風”
”汝はすべてを呑み込む濁流”
”汝は道を切り開くもの”
………もしかして、この試練の事をさしているのか?
なら、この試練は…最初の斬り刻む風ってやつか?
カマイタチがどこかから飛ばしてくる攻撃をかわしながら、さらに考える。
俺自身が風になればいいのか?
いや、それだとおかしいことになるな……。
……もしかして、このカマイタチを斬れって事なのか?
魔物もこのかまいたちも斬れって事か?
いや、だとしてもまず今現在姿をとらえきれてないし、あの攻撃を斬るなんて想像できない。
…いや、不可能じゃない。
相状破斬を使えば、おそらく可能だ。
でもあれにはチャージ時間もいるし、何より今の現状であの技を放つのは、時間を短縮したとしても難しい。
何かもっと、こう、効率よく倒せないか?
冷静に考えろ。
こういう時ほど単純なことを見落としがちになる。
状況を整理しろ。
相手は高速で動いている。
火属性の攻撃が当たれば動きを止めることができるし、姿も現す。
……火属性攻撃を、もっと広範囲に打てればいいんだが……。
あいにく俺が覚えてる火属性の魔法は、ファイアーボールとファイアーウォールの2つだ。
ファイアーウォールであれば捕まえられるかもしれないが、俺では詠唱時間がかかりすぎてしまうから、現実的ではない。
それにライやラフィナを巻き込む可能性もある。
……拡散?
風魔法を使えば俺のファイアーボールを拡散できないか?
そう思った時には、俺の体はすぐに行動に起こしていた。
走りながらかまいたちを避けつつ魔法の詠唱。
「ラフィナ!!エアシュートを俺のファイアーボールに当てろ!!」
魔法を放ちながら叫ぶ。
しかし、言葉を発してから気づいた。
ラフィナには早すぎる日本語は通じない。
しくじったと思いながらも、かまいたちを避けながらラフィナの方をちらっと見る。
ラフィナは魔法を詠唱していた。
その近くにはライもいた。
そうか。ライが訳してくれたのか。
なら、攻撃に移れる!避け続けていた足を止め、刀を納刀した状態で構える。
かまいたちが体を掠める。
だが、そんなこと気にしている場合じゃない!!
ラフィナが詠唱を終え、俺の飛ばしたファイアーボールに向かって、エアシュートをぶつけた。
瞬間、炎が小さな球となって周囲へ拡散した。
そしてそのうちの小さな火球にカマイタチがあたり姿を現した。
「いま!!」
ラフィナが叫ぶ。
もちろん、見逃す気なんてさらさらない。
チャージもたまった。
「…頭義流抜刀術!二の型!」
姿を現したカマイタチに俺は勢いよく突っ込んだ。
「駆車!!」
すれ違いざまに勢いよく抜刀した刀は、見事カマイタチの体を真っ二つに切り裂いた。
カマイタチは悲痛な叫び声をあげながら崩れ落ちた。
ふぅとため息をつきながら刀を納刀した。
「かった!!」
ラフィナが喜びの声を上げ、こちらに寄ってきた。
それに続いてライもやってきた。
俺のそばに来てからすぐに周りをくるくると回り始めたラフィナをみて、ライと苦笑いしながら共にお疲れさまと声をかけた。
「お前凄いな!あれを一回で斬るなんて普通出来ないだろ」
「まぁな。でも今回はラフィナがいなかったら本当に危なかった。言葉を伝えてくれてありがとな、ライ」
「……まぁ、妹に怪我してほしくないしな」
「そっちが本音かよ」
「当たり前だろ?」
そう返事をするライの肩を小突きながら、話していると、部屋の中央に魔方陣が現れた。
おそらくこれに乗れと言うことだろう。
一応俺が警戒しながら、魔方陣に何も仕掛けられていないことを確認して、3人で魔方陣の上に乗った。
すると、3方向に別れている最初の広場までたどり着いた。
どうやら転移の魔方陣みたいだ。
「……凄いな。転移の魔方陣が存在するなんて」
転移魔法は俺たちの時代では使えるものは誰もいなかった。
しかも、その魔法を使うために使用するための魔道書は未だ見つかっていない。
だからこそ、声には表さないものの、心の中では驚きと感動で頭の中がいっぱいだった。
それはライやラフィナも同じようで二人とも俺と同じように驚いていた。
しばらくしてようやく高ぶった感情がおさまってきたところで、今度は行っていない左側の方へと足を進めた。
左側は先程進んだ右側とは違い、風属性の敵ではなく水属性のカエルのような魔物が相手だった。
こちらは戦ったことがなかったので、ライやラフィナに目の前にいるカエルのような魔物について尋ねた。
「あれはフロッグ。攻撃して来なければ大人しいけど、危害を加えれば毒を吐いてくる。一応湖の近辺にもいる」
「どく!!きけん!だよ!」
「……もはやカエルじゃねぇ」
毒を吐いてくるのなら、近接はかなり危険だ。
特に前衛に出れるのが俺しかいないような、こんな状態だったらなおさらだ。
結果、俺がフロッグに毒を吐かれても大丈夫な位置から注意を引いて、ラフィナのエアシュートでフロッグを倒しながら道なりに進んで行った。
その途中でも、ライから「……これ試練なんじゃ……」と再びツッコミを入れられたがもう無視することにした。
まずは身の安全が第一だ。
戦いではそれが一番!!
そんなこんなでなんとか左側も最奥までたどり着いた。
案の定奥の部屋は行き止まりになっていて、部屋に入ってからしばらくすると入り口が消えた。
……さぁ、次はどんな魔物が来るか。
目を凝らす。
些細な音にも集中する。
だが、何かがいる気配はない。
念のため、隠れて魔力探知もやってみたが、俺たち以外の魔力は見つけることができなかった。
何だこの場所、そう思った時だった。
突如、壁にところどころ小さな穴が開いた。
何か、飛んでくるかと思い、とっさに身をかがめる。
ライやラフィナにも伏せるように指示をして、そこから出てくる可能性のある、何かしらの攻撃に備えた。
だが、その穴から出てきたものは、俺の考えていたものとは180度違うものだった。勢いよく壁から噴出されたもの、それは水だった。
まさか、水攻めか!!?急いでライたちの方に寄ろうとしたが、水はすぐに腰のあたりまで達し、簡単には身動きが取れなくなっていた。
ラフィナの背丈よりも水がたまり、足を動かしていないと顔を水の上に出せなくなってしまった。
俺は必死に何度も潜りスイッチのようなものがないか探した。
だが、そのようなものは見当たらない。
穴をふさぐのかとも思ったが、塞ぐものも持っていないし、そもそもそんなものが見当たらない。
なんだよ……なんなんだよ!!
焦りだけが募っていく。
数回潜り顔を上げた時には、すぐ目の前に天井があった。
まさか、天井にあるか!?
わずかな期待を抱き、何とか顔を水の上に出しているライやラフィナにも探してもらったが、それらしいものは見つけることができなかった。
そしてそのまま、俺たちは水の中へと沈んだ。
息ができなくて、苦しくて、もがく。
感覚が鈍っていく。
意識が遠のいていく。
その時、指に小さな何かが引っ掛かった。ありったけの力を振り絞り、目を見開いて、それを掴む。
その瞬間、部屋は輝きで包まれた。
気が付いた時には、俺は先程の部屋で横になっていた。
近くにライやラフィナも倒れており意識を失ってはいたが、呼吸はしていたし何かおかしなところもなかったので、とりあえず無事であるということは確認することができた。
ほぅとため息をついてから、俺は右手をひらいた。
そこには首から下げる少し大きめの青い石のアクセサリーが握られてた。
意識を取り戻した時から握っていたので、おそらくこれが、水の中でもがいていた時に、とっさに握ったものなんだろう。
チェーンの部分を持ち、石をよく観察してみる。
だが特にこれと言って、強い魔力が流れていたりするわけではない。
さっきの試練は何だったんだろうか。
その疑問だけが頭の中に残った。
しばらくしてから、ライとラフィナが目覚めたので体調を確認してから俺たちは、再び中央に現れていた転移の魔法陣に乗り、広場へと戻った。
両サイドの試練が終わったからか正面のしまっていた扉はいつの間にか開かれていた。
「……行くか」
先程手に入れたアクセサリーを胸に下げ、俺たちは正面の道を進んだ。
道中は何もなく、ただただ長い一本道を進んだ。
そして、最深部へとたどり着いた。
次回の更新遅くなります




