35 幼馴染の同級生は俺の妹だったらしい
「話を戻すが、なんで雪はこんなに顔写真を持ってんだ?」
カミングアウトがあったせいで話が脱線したが、元を正せばそういう質問だったはずだ。
「かおがわかんないから、しりあいのしゃしんとってある。ここあにはぜんぶのしゃしんみせたよ」
「だから、雪の知り合いが居れば私が分かるってわけ」
「なるほど……そうだったんですね……初めて知りました……」
どうやら雪の秘密を知らなかったのは俺だけでなく山田さんもだったようだ。
まあ、顔写真を持っている理由は話の流れから何となく予想は出来ていた。今それを訊いたのはもう一つの話――――即ち本題を切り出すためである。
「航が雪の父親って、どういうことだ?」
「そんなの、こっちがききたいわよ」
心愛が即答する。雪にも尋ねようと目を遣ったが、彼女もやはり首を横に振るばかりだ。
「おにーちゃんのおとーさんって、どんなひとなの?」
「どんな人と言われてもなあ……何も知らないから何とも」
「おとーさんなのにしらないの?」
「俺が産まれた時には既に家に居なかったからな」
それにしても、実の息子なのだから少しくらい情報があっても良いと思うのだが、いかんせん母が韜晦するので、知っている情報は本当に名前と顔だけだ。というか、その名前すら偽名の可能性がある。
「雪は何か知っている事とかないのか?」
「うーん……わたしもものごころつくまえにおとーさんじょーはつしちゃってたからな……」
消えまくってんなあいつ……
「ということは、雪の家もシングルマザーだったのか」
「ううん、おかーさんころされて、ちょうどそのときからおとーさんいなくなったの」
「え……っ!?」「ころ……っ!?」
雪が平然と放った言葉は、その態度とは裏腹にとても衝撃的な言葉で、俺と山田さんは不随意に驚きの声をこぼした。
「いまもまだつづいてるよね。あのだんぞくてきなさつじんじけんのさいしょのひがいしゃはわたしのおかーさんなの」
「「…………」」
絶句する俺たちに向けて、彼女は感情を失ったかのように淡々と言葉を紡ぐ。
「そのあとは、おじさん……おとーさんのおにーちゃんがきて、せーかつひとかそのひとからもらってひとりでくらしてたの」
雪の話は、とりあえずこれで終わりのようだ。
「……また気になる事が山ほどあったが、まあ、情報が増えただけ良しとしよう」
「でも、なんで雪のお父さんと柚さんのお父さんが同一人物なんでしょう?」
「俺も今、それを一番事情を知ってそうな奴に訊こうと思ってたところだ」
そう答えると、俺はポケットから一枚の板を取り出した。
文明の利器、スメイトファォン。
それを手早く操作し、電話帳アプリを開く。三つしかない電話番号から目的の番号をタップすると、四コール目にしてようやく目的の人物は受話器越しに空気を震わせた。
『もしもし』
「ああ、お母さん? オレオレ」
『私に息子は居ません』
ガチャッ! ツーツーツー……
「…………」
「お母さん、なんだって?」
「俺、実は女だったみたいだ……」
んなわけあるか。
気を取り直し、再度同じ番号にかけなおす。幸いにして着信拒否などをされることはなく、すぐに受話器を取る音が聞こえた。
『……もしもし?』
「すっげえ懐疑的な声だな……ていうかナンバーディスプレイあんだろ……」
『息子のケータイ番号とかふつう覚えてないから。とりあえずあんたの誕生日と干支言って』
「五月二日、丑年」
『はあ……で、何の用?』
良かった、信じてもらえたっぽい。
「訊きたいことがある。お父さんの事についてだ」
『もう最後に会ったのも二十数年前だから何も覚えてないわごめんじゃーねー』
「今俺の隣に腹違いの妹が居るんだ。しかも、俺と同年齢」
もしかしたら姉かもしれないが、俺は五月産まれだし、雪も俺の事おにーちゃんって呼ぶし、とりあえず妹ということでいいだろう。
「何か知っているなら話してくれ」
『………………』
受話器から規則的に伝わる呼吸の音からは、懊悩する母の心情がありありと感じ取れる。
『あんまり子供に聞かせる話でもないし、もう墓まで持って行くつもりだったんだけどね』
やがて、彼女は大きく息を吸い込むと観念したかのように、そう切り出した。
『私はあんたが産まれる前に、あんたのお父さんと離婚したのよ』
「ああ、それはなんとなく予想出来る。けど、一体なんで?」
『なんでって、あんたの隣に妹が居るなら、それも想像出来るんじゃない?』
そう言って、しかしその言葉とは裏腹に、彼女は間を開けずに自らその答えを言葉にした。
『私があんたを身籠っている間に、あいつが他の女と子供を作ったからよ』
「………………」
そうか……確かに、同い年の妹が居るなんて、よく考えたら不倫しかあり得ない。タイミングを考えれば全て繋がる事だったな。浅慮だった。
『他に訊きたい事ある?』
「いや、無い。ありがとう。あと電話に俺の番号名前付けて登録しとけよ。ナンバーディスプレイに名前出るから」
『はいよー』
こうして通話は終わった。
「長年の疑問が氷解したわ……」
「あんたもお父さんが居ない理由知らなかったのね」
心愛が苦笑していた。俺もそんな気分。
「ふにゃ……あたまつかってもうねむいー……もーねるー……」
「待て雪」
何事も無かったかのように布団に入ろうとする雪を呼び止める。最後に一個、今日中に明らかにしたいことがある。
「なーにー……」
「お前が俺をおにーちゃんって呼ぶの、さては事情を知ってたな?」
「あははははははーーー……」
その笑って誤魔化しには無理があると思うぞ。
現在深夜二時半過ぎでございます。眠い。
今までずっと小説をスマホで書いてきましたが、この話は全てパソコンで書きました。まあブラインドタッチの練習も兼ねてって感じです。
今後は、外出先ではスマホ、家ではパソコンと、二刀流で頑張っていきたいと思います。
今回も御閲覧ありがとうございました。多くのブックマークが支えになっています。
これからも頑張りますので、よろしくお願いします。




