29 どーきゅーせーのゆーじんはどーきゅーせーのゆーじんじゃないとおもったらやっぱりどーきゅーせーのゆーじんだったらしい
あめでびしょびしょになったかみから、たえずすいてきがしたたりつづけていた。
こうさてんのしんごうであゆみをとめると、いやがおうでもきょうのおんなのひとのぜっきょうと、いままできいてきたすべてのだんまつまをおもいだしてしまう。
みぎてから、とらっくがはしってくるのがみえた。
……あれにとびこめば、たぶんもうにどと、あのこえをきかなくてすむ。
そんなかんがえがあたまをよぎった。さらにいえば、ここでしぬことがいままでのひがいしゃにたいする、いっしゅのついとうになるようなきもした。
「おいって」
そんなとき、とつぜんわたしにふりかかっていたあめがとぎれ、はじめてじぶんがだれかによばれていることにきがついた。
はんしゃてきにふりかえる。
「だ……だれ?」
「え? いや、俺だけど」
おにーちゃん? かな? かおがわからないし、かくしょうはないが、こえはそうっぽい。
……いや、だまされてはいけない。じこくはもうそろそろくじになろうかというところ。でぶしょうのおにーちゃんがこんなじかんにがいしゅつするわけがない。
「……何か、あったのか?」
「…………っ!!」
にげなきゃ!!
そうかんじて、きょうふでこうちょくするあしをむがむちゅうでうごかす。
はしる。やがてそのこうさてんはみえなくなり、おいかけてくるあしおとはきこえなかったが、うしろはふりかえらなかった。いや、ふりかえれなかった。ふりかえったら、そこにさっきのおとこがたっているきがした。
やがておにーちゃんのいえにたどりつく。どあをあけ、ぬれたからだからみずがしたたるのをいにもかいさず、へやをみわたす。はたしてそこにいたのは――――
――――ひとりのようじょと、ひとりのおとこのひと……
「おにーちゃんっ!!」
「お、おお!?」
おにーちゃんがめをしろくろさせる。
まちがいない。おにーちゃんだ。このいえにくらしているのは、わたしと、ここあと、しあと、それからおにーちゃんしかいないのだから。
「あのー、雪ちゃん?」
「ゆ、雪……?」
「〜〜〜〜っ!!」
おにーちゃんのむねにかおをこすりつけ、わたしはそのままなきつづけた。
「おにっ……おにーちゃんっ……ふえっ……うえぇ……」
「お、俺はお兄ちゃんじゃないよ?」
「雪、お兄ちゃんは向こうよ」
「え……?」
うしろをふりむくと、どあのぶにてをかけたままかたまったひとりのだんせいがいた。
あのひとが……おにーちゃん?
「じゃあ……さっきこーさてんであったのも……おにーちゃん……?」
「ああ、そうだ」
じゃあわたし、おにーちゃんからにげだしちゃったの?
……おにーちゃんのこときらってるっておもわれちゃったかな……もしかしたら、わたしがひとのかおわかんないってばれちゃった?
ていうか、いまわたしがだきついてるのは、だれ? わたし、たにんのひとにいきなりだきついたの?
どうしよう……どうしよう……
じょうほうおおすぎて……あたまがぐるぐるして……
―――――――――――――――――――――――
めをあけてじょうたいをおこすと、しかいにはいったのは、てーぶるのうえののーとぱそこんをそうさする、おとこのひとのすがただった。どうもわたしは、あのあときをうしなってしまったらしい。
「……おにーちゃん?」
「雪、起きたのか!」
こえをかけるとこちらにめをむけ、おどろいたようにこえをあげた。こんどはおにーちゃんでまちがいないっぽいな、うん。
そのこえをきいて、ここあとしあもわたしがおきたのにきづいたみたい。
「大丈夫なのですか!?」
「雪、どこか痛いとことかない?」
「だいじょぶだよ」
そういったけど、ふたりはまだしんぱいそう。まあ、かえってきていきなりぶったおれたんだから、そりゃそうか。
「昨日、何があったんだ?」
おにーちゃんがわたしにといかけてくる。
どうしよう、いったほうがいいのかな……
……でも、おにーちゃんにめいわくかけたくないし、それに――――
「……なにもないよ」
「何も無い事は無いだろ」
「なんでもないってば、しんぱいしすぎ!」
「……そうか」
――――それに、どうせいったところで、どうにもならないよ……
けいさつですら、しょうこのひとつみつけられないんだもん……
サブタイトル長いw
次回からまた主人公主観です。雪主観もう二度としたくないです。
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これからもよろしくお願いします。