26 幼馴染の同級生はやはり何かあったらしい
家のドアを開け自分の部屋に入ると最初に目に入ったのは、びしょびしょのまま涙を流した雪に抱きつかれ、困惑した佳晃だった。
「おにっ……おにーちゃんっ……ふえっ……うえぇ……」
「お、俺はお兄ちゃんじゃないよ?」
「雪、お兄ちゃんは向こうよ」
「え……?」
いや俺も雪の兄ではないが。
「じゃあ……さっきこーさてんであったのも……おにーちゃん……?」
「ああ、そうだ」
うーん、夜だからよく見えなかったのか? いや、あの距離で見えなかったという事は無いと思うが……
そう考えていると、突然「バタッ」という音が聞こえた。
「雪!?」
見遣ると、雪は先程まで抱きついていた佳晃の前に倒れ込んでいた。
「雪! 大丈夫!?」
「雪ちゃん! どうしたんだ!?」
皆が彼女の元へ駆け寄り声を掛けるが返事は無い。それを確認した心愛は彼女を仰向けにし、容態を確認した。
「……息はあるわね」
「怖い事言うな……」
「苦しんでる様子も無いし……多分ストレスで気絶したんだと思う……」
「一応救急病院連れて行っとくか?」
素人判断は危険だろう。だが、その意見に口を挟んできたのは意外にも佳晃だった。
「あのさ……前二人が溺れた時にも思ったんだけど、心愛とか雪ちゃんとかって、病院連れて行っても大丈夫なん?」
「どういう事だ?」
「いやほら、その身体、バレたら色々面倒じゃないかなーって……」
少し想像してみる。
痩身な幼女、ただし体重は50kg強。それの理由を訊かれて誤魔化せるか、或いはありのまま理由を説明して信じてもらえるか、信じてもらえたとして自分達に不都合は起きないか……
「…………面倒だな」
結論はそれだった。
まず、誤魔化す事自体難しい。彼女達の身体の密度の異常さは誰が見ても一目瞭然だし、それを合理的に説明するこじつけなど思い付きそうにない。
かと言ってありのままを話したところで信じてもらえるかといえば、そういう訳でもないだろう。なんならこじつけなんかより余程嘘っぽい。事実は小説よりも奇なりとは、全くよく言ったものである。
「なら、医者に掛かるのはやめた方がいいか……」
「安静にしてた方が良いわね」
俺達はそう結論付け、雪の目が覚めるのを待つことにした。
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雪が目を覚ましたのは、次の日の朝の事だった。
「……おにーちゃん?」
「雪、起きたのか!」
声の方へ目を向けると、上体を起こしながらこちらを眺める彼女の姿があった。
「大丈夫なのですか!?」
「雪、どこか痛いとことかない?」
今日も早朝に帰宅した山田さんと心愛が声を掛ける。彼女は少し微笑みながら「だいじょぶだよ」とだけ返事をした。
因みに山田さんには朝の内に事情を説明してある。佳晃はあの後すぐに、邪魔になると悪いと言って帰ったので今は居ない。奴のアイスはまだうちの冷凍庫の中だ。近い内にパクろう。
「昨日、何があったんだ?」
俺は問う。彼女は少し迷った素振りを見せ、やがて……
「……なにもないよ」
「何も無い事は無いだろ」
何も無いのに失神なんてしてたらそれこそ重病である。いや、ストレスで失神もだいぶ重病なのだが……
「なんでもないってば、しんぱいしすぎ!」
「……そうか」
はぐらかされてしまう。なんか最近、皆して俺に事情を隠してくるなあ。
本当に杞憂なら良いのだがと思いつつ、何も無い訳が無いと冷静に諭す自分が居る事に気が付いて、それでいて何もできない自分を情けなく思った。
雪に何があったのかは次回です!
前回更新までに間が空きすぎて伏線と雨降ってたの完全に忘れてました。改稿で直しましたが、焦ったー……
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