25 幼馴染の幼女は俺の奢りでアイスが食べたいらしい
「幼馴染の幼女が俺と同棲したいらしい」Ver.1.2.0の更新内容
・タイトルが変更されました(「幼馴染の小学生が俺と同棲したいらしい」→「幼馴染の幼女が俺と同棲したいらしい」)
・1話冒頭に表紙絵を追加しました
・主人公の名前が変更されました(「柚子」→「柚」)
・雪の口調がより幼いものになりました
十七枚の牌を纏めて積み上げる「カチャッ」という小気味好い音がして、他の二人が三つの牌山を作り終わった事に気が付いた。
「悪い」
軽く謝り自分の分を作りながら、あと何点取れば佳晃を最下位へ引きずり降ろせるかと考える。
幸い最後に親が回ってくるのは俺だ。そして、親が和了った時は、親は回らずもう一度対局が行われるのが麻雀のルールだ。
詰まり俺の持ち点が0点以下にならない限り、最後の局で何度も勝って逆転出来る可能性があるという事である。
「大丈夫だ。うん、まだ勝てる」
そう呟きながら左の心愛が牌を取るのを確認し、俺も四つ纏めて自分の元に寄せる。
やがて目の前に並べられた十三枚の牌を確認し、最も作りやすい役を模索しt……
「和了!! 天和、24000オール!!」
は?
………………は?
「「はああぁ!!??」」
俺と佳晃の声が重なる。
え!? だって嘘だろ!? 天和の出現確率って確か三十三万分の一とかじゃなかったか!?
開いた口の塞がらない俺より早く感嘆を漏らしたのは佳晃だった。
「は、初めて見た……」
「ふふ……さっすが私ね!」
本当、流石お前だよ。
他の奴が出したなら真っ先にイカサマを疑う所だが、彼女はそういう事をする人ではない。
いや、疑わない理由は人格だけじゃないな。なんと言うか、彼女が出すのはあり得る気がする。ほっといたらそのうち宝くじで一等当てそうだしなこいつ。
「……終わりか」
俺は24000点を持っていないので、簡単に言えばコールド負けである。もはや理不尽だとすら感じられない程の絶望的な運気の差を見せられた気分だ。
「私、ハーゲンダッツのストロベリーが良いな♡」
「俺はグリーンティー」
「これ見よがしに高えの頼みやがって……っ!」
ここぞとばかりに高級カップアイスを要求してくる二人を尻目に、俺は無造作に財布を掴む。
ドアノブに手を掛けると、居間の方から変死体遺棄事件のニュースが聴こえてきた。
外は雨めっちゃ降ってるし、悪い事って何故か重なるよな……
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「生活費もねえのに、人様にアイス奢る金なんかねえんだけどな……」
コンビニのアイスケースを覗き込みながら、ついそんな言葉が口から漏れてしまう。
ビリが奢るというルール上、我が家から金が飛んで行く確率は三分の二だ。これは分が悪い。
そう考えた俺は心愛に「一緒に佳晃を嵌めようぜ」と悪魔のような裏取引を持ち掛けたのだが、「えー? 私は柚の奢りがいいなー?」という、これまた悪魔のような回答が返ってきたのである。
そんな訳で出資は俺のポケットマネーからだ。心愛達がうちに来てから我が家の財布は心愛によって一括支配されており、俺には一ヶ月毎に三千円が支給されている。子供の小遣いかよ。
雪と山田さんの分も買って、ついでに俺の分も追加すると、金額は余裕で千円を超えてきた。俺の一ヶ月の三分の一がががが……
会計を終え、店員の「っしたァー」という謎言語を聞きながら店を出る。多分「ありがとうございました」と言っているのだろう。次来た時には「うーーーーい。(ォライッ、ォライッ」になってそう。
自動ドアをくぐり、傘をさして歩き出す。梅雨の時期なのに最近は降っていなかったので少し新鮮な気分だ。
そんな事を考えながら夜道を歩いていると……
「…………あれ雪じゃね?」
前方の交差点にここ数ヶ月ですっかり見慣れた人影を発見した。傘はさしておらずびしょ濡れになってしまっているが、それに頓着している様子は無い。
「おーい!」
少し遠くから声を掛けてみるが、まるで聞こえていないかのように反応が無かった。
仕方無く、駆け寄って再度声を掛けながら傘を分ける。
「おいって」
すると彼女は弾かれたようにこちらを振り返った。
「だ……だれ?」
「え? いや、俺だけど……」
顔が見えるようになって驚いたのは俺の方だった。誰何する彼女の顔は、不安と恐怖で埋め尽くされたように酷く青ざめていたからだ。
「……何か、あったのか?」
「…………っ!!」
そう質問すると、一瞬怯えたように硬直し、そして何かに追われるように家の方向へと走り去って行った。
Re:この素晴らしい改稿終わらせたらセンター前日だった件に出会いを求める劣等生。
十日ぶりの更新です。長らく更新出来なくてごめんなさい。
色々改稿しました。より良いものになってると良いな。
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