17 幼馴染の幼女は俺と風呂に入りたいらしい
「しかし、慣れるもんだな……」
一人、風呂の中で呟く。
彼女達が我が家を訪ねて早二ヶ月。七月に入り、世間では夏休みだ何だと騒がれるようになってきた。
今までは世間体があったので平日の昼間はあまり外出しないように厳命したが(と言ってもシアは全然聞かなかったが)、夏休みに入ればもう少し何処かへ出かけたりしてもいいかもしれn……
ガチャッ!
「柚っ! 私も一緒に入るっ!」
「は?」
そんな事を考えていると、普段着を着た心愛が風呂に入ってきた。慣れるもんだとか考えている傍から騒擾しやがって……
「……いや、帰れ」
そう言いつつ自分の下半身を確認。濁り湯タイプの入浴剤を入れていたので見えていないはずだ。僥倖である。
そうは思っていてもやはり恥ずかしいので肩まで浸かった。
「これを着なさい!」
そう言って投げつけて着たのは、海パン?
「いや、帰れよ」
「やーだっ! 一緒に入るっ!」
「駄々こねんなよ! てか何でだよ!」
「ずっと柚と一緒に入れる機会を狙ってたの! お腹いっぱいになった雪が寝た今がチャンス!」
成程な。
こいつが俺の風呂に突撃してくるのは今までも何度かあった。小学生の頃から、高校生になってからも数回。だからこそ今回もそこまで驚きはしなかったのだが。
しかし、心愛の変態行為が今年入ってから妙に大人しいと思ったら、雪と山田さんのお陰か。
仕方ないから湯の中で投げられた海パンを着る。ん? 何が仕方ないんだ?
「柚は押しに弱いのよね……」
「……最近自分でもそう思う」
共同生活を許可した時もそうだったしな……
「私以外の女に身体許したらダメなんだからねっ!」
「なんでお前には許したみたいになってんの?」
まだ俺の身体は清らかだ。男のそれにどれほどの価値があるかは知らないが。
そんな事を言いながら、心愛は俺の入っている風呂に浸かってきた。狭いかと思ったが、彼女は思った以上に小さかったのでそこまで窮屈ではなかった。
「どう?」
「どうって、何が?」
「ろりろりな私と一緒にお風呂に入れてどんな気持ちって聞いてんの!」
「そうだな……前に高校の時にニップレスで入ってきた時よりは目のやり場に困らなくて良いな」
x=1の安心感。
「むー、それだけ?」
「何が望みなんだよ」
「えっちな気分にならないの?」
「ならねえよ……」
むしろなんで俺がロリコンで確定してんだよ。
「JKの身体にもJSの身体にも反応しないなんて、どうすればいいの…………」
あ、やばい、本気で落ち込んだ。てかちょっと泣いてる。
と思ったら俺の腰に手を回しギュッと抱きついてくる。顔はお湯の中に完全に沈んでいてブクブクと水泡を作っていた。溺死すんなよ?
「あのー、ごめんな?」
「ぼぼぶぶびぼぼぼぼ!!」
「顔上げて言え!」
「興奮しろぉー!! 勃てぇー!!」
「乙女としてあるまじき言葉が出てきたぞ!?」
もうちょっと淑女としての嗜みを、いや、こんな所に突撃してる時点で淑女もくそも無いか。
「ぐすっ……ひうっ……ぐすっ……」
「ご、ごめんて……」
「頭撫でて……」
「あ、はい」
なでなで……
「……私可愛くない?」
「いや、可愛いよ」
「嘘吐き! じゃあなんでそんなにネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲の完成度が低いのよぉ!」
「か、可愛いのと興奮するのは話が別だから……」
あとその単語も乙女としてどうかと……いや、もう何も言うまい。
「…………私の身体洗って」
「はい」
そう頼まれたので、彼女の身体を洗う。スク水の上からだけどちゃんと洗えてんのかな……。
しかし、そうやって洗っていくうちに、怒りもそれなりに洗い流せたようだ。シャンプーをしてやったら彼女は相好を崩した。気持ち良いのかな?
「お、終わったぞ」
「じゃあそこ座って。私が洗うから」
「え? いや、いいよ」
「私が洗うから」
断ったらまた怒りそうかな……
観念してバスチェアに座ると、彼女はまず背中を流してくれた。
「こんな身体じゃなかったらおっぱいで洗ってあげたのに……」
「ソープランドじゃねえか!」
どこで覚えてくるんだそういうの!!
そんな事を話しているうちに頭も洗い終わった。顔は流石に自分で洗って、風呂を出る。
二人共脱衣所で水着を脱いでから身体を拭き着替えなければいけないので、先に俺が上がってその後心愛が出る事にした。
「はあ、なんか休まった気がしn……」
「なにをしてるの?」
服を着て、脱衣所のドアを開けてリビングへと出ると、膨れっ面の雪がこちらを睨んでいた。
※1 JK――――「女子高生」の略。後述の「JS」は「女子小学生」の略であり、また、「女子中学生」「女子大学生」を表す「JC」「JD」という言葉もある。ただし、「JK」には「常識的に考えて」という意味もあるので注意が必要。
※2 ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲――――漫画「銀魂」に登場する大砲。先端に膨らみのある砲身と、その根元の両脇に存在するサイレンサーと思しき双球で構成されている。何故ここで心愛がこの兵器の名前を出したのかは不明である。