第5話. 夏休みって、ゆっくり過ごしたいよね?
今回から、振り返り夏休み編がスタート!初の章作りになりますが、温かい目で見てくれれば幸いです。
……起きろ。起きなさい。....起きろっつってんだろうがぁー!
「うわーーーーーーーーっ!」
「ひゃーーーーーーーっっ!!」
授業中の教室の中に混声の悲鳴が響き渡った。怒られている生徒・諒と、眼鏡をかけたスレンダーで清楚な20代女国語教師・添仁 日和が腹の底から出す歌い手のようなハリがある声に反応し、周りの寝ていた奴らががばっと勢いよく起きた。
「せ、先生っ?」
諒は落ち着いたのか話しかけるが、先生は腰を抜かして後ろに倒れ、床に頭を強打し、気絶していた。
「保健委員っ! 至急保健室に連れていってください!」
「……は、はいっ!!」
「諒っ!」
「な、なんですか委員長……?」
「お前も一応保健室へ同行して。俺は状況が分からないから説明できないが、お前はできるからな。」
「い、いぇっさー。……行ってきます」
委員長の迅速な対応により、場がざわつくことなく先生を保健室に送らせ、ついでに授業時間をさぼらせてくれた。感謝感激ありがとうっ!
「くれぐれも、さぼれるラッキー! ありがとうだなんて思うなよ?」
「は、はい……」
(はあっ。文化祭まであと少し。出し物の準備もいい感じだし、ゆっくりしてもいいかな。……そうだっ! 夏休みに会ったあの人たち元気にしてるかな…… えーっと、名前は確か……)
そして諒は、自分の夏に思いを馳せた。
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あの事故から完治した僕は、まったりと学校生活を送っていた。
友達とアニメやラノベの話をしたり、一学期早々、友達が先輩と起こした喧騒に何故か巻き込まれたり。
普通じゃ体験できないことをしたりと面白い事に出くわした。
……記憶の回想に入り浸っているところ、ヤツを引き連れた男性教師(担任)が現れた。
「あ、あれはまさかっ……!」
「うっぷ、見てるだけで吐き気が……」
「何なの? あの紙たちから出てくる狂気に満ちたオーラは……!」
「見えます。私たちが滅ぶ世界の光景が」
生徒たちの最大の敵にして、最恐のモノ。
そう、【宿題】だ。
更に体の不調を訴える生徒が急増した。
……この学校、進学校なだけあって、紙の量は少ないものの、表紙以外、表裏、余分な空白を作ることなくびっしりと問が詰まっている。
それまさしく
、
『生き地獄』
余りの多さに呆けている時、頭にあの声が響いた。
『おっはー。元気にしておるか? わしゃあ今、ポ〇モンのレート戦の真っ最中じゃよ』
『こっちはそれどころじゃねえんだよっ!!』
神をも殺めかねない殺気をだした諒は、魔王のようなただならぬ威圧をまき散らしていた。
近づいたらヤられる。
そんな雰囲気が鱗粉と化し、空気の中に混ざりこむ。
何かを感じ取ったのか、スサノオは、
『そ、そんなに怒らんくてもええやろ……』
『何っ!? ポケ〇ン? レート戦!? ふざけんじゃねえぞ、こっちは宿題地獄が待ってるんだよ!』
『……』
『なんだよ?』
『おっしゃ! レート上がった!!』
『聞いてんのか!?』
暫くの間、レート戦と宿題で、会話が悪い方向に盛り上がっていた。
そして、一時間目、二時間目……学校が終わるまで話をして、やっと会話が終わった。
帰宅する途中、宿題を終わらせる方法だけを考えていたのだが、突然スサノオから連絡があった。
『なあ、諒よ。力は鍛錬したほうがより身近になり、さらなる能力を解放させる。』
『……どういうことだよ』
『つまり、宿題に困っているのであれば、お前に与えられた力で攻略できる方法がある。』
『どんな能力だよ』
『ゾーンと呼ばれる、人に眠る最高の力。危険であるが、我と共に修行すれば、その力の一つ。時間の流れを操る力だ。』
『へえ。そいつはすげーや』
『もし修行したければ、夏休みに入ったとき、必要な荷物を身に着けた状態で我に話しかけよ。連れてきてやる』
『……』
『それでは。後はお前次第だ。』
ゾーンか。確かに凄そうな名前だな……。
よし、行ってみるか!!