第3話.一年の計は文化祭にあり!?
神の力を鍛錬した後は実践のみ!実践は一番の練習場所。ということで、初の神の力を持つ者との接触となります第3話。お楽しみください!
あれから数か月。外は枯れ葉が舞い、文化祭シーズンとなった。
「ふぁ~……、眠っ」
「おいこら、手を休めるな! 俺らが文化祭で一番のクラスになるんだろうがっ!!」
「うるさい、クズ」
「んだとぉ!? いいから黙って仕事をしろぉ~~~~!!」
僕のクラスでは夏休み明けの一週間の間に体育祭が行われるのだが、生憎いとこの結婚式があったために参加できなかった。決してさぼってはいない。
事故後、わざわざ休日を使ってお見舞いに来てくれた男友達が来てくれて、心配をかけてしまった事を償うために、クラスの出し物〔新喜劇〕で裏方に回り、脚本の手伝いをすることにした。
脚本の担当は僕を含め三人。
クラス1の文系最強女子&一年が誇る美女であり、小説家志望でマイペース、大方 美羽。
いつも仲良くしてもらってる眼鏡のかっこいい系男子。さらに美羽の幼馴染、勇木 翔。
そして、僕といったメンツだ。
「かける~、あんたが私の分もやってよぉ~」
「ふざけんな。だいたい私の分ってなんだよ。これは全員ですんの!」
「……え」
「なんだその絶望しきってる顔は……」
ため息交じりに一言を呟く翔は、一通り書き終わった原稿に目を通し、呆れたように僕に話しかけてくる。
「やっぱりこいつが書く文章は、面白さや真面目さがいい感じに混ざっててすっごく面白いんだよな。……ライトノベルって感じ?」
と言いながらそれを手渡してくる。
「うん、……すごく面白い。」
「だろ? それにあの美貌+まともな性格してたら……」
「かぁ~けぇ~るぅ~?? 今、何か言ったぁ~?」
かわいい声とは裏腹に、謎の威圧が僕らに圧し掛かってくる。
女の子って怖いなぁー。何か美羽さんの目光ってたよ……。 ってあれ?
「どうしたの翔くん、マネキンチャレンジ見たいなことをして……」
翔が視線を美羽に向けたとき、何故か彫像のように静止ていた。
諒は何かおかしいと直感的に判断し、何とかしていまにも起ころうとしている美羽を宥める。
「み、みはねさん? いったん落ち着こうよ? そんなに怒ってるとしわが増えるよ?」
「うるさい、あんたは黙っていなさい。これは私と翔の問題なんだから!」
「でも、その翔くんなんだか彫像みたいに動いてないから怒っても何にもならないよ」
「……あ」
「いったん落ち着いて。それから、ちゃんと話そうよ」
「そ、そうね。ごめんなさい、巻き込んじゃって」
ほんとにそうだよ。
「とりあえず、どうしようか……ってあれ?」
「どうしたの?」
「いや、これ文字通り固まってるんじゃ」
「はあっ!?」
何度かくすぐってみたり、突いてみたりしてみるが、動く気配はない。
(……さてはこの子、僕みたいに力があるな。これで思い当たる神話は……)
ゴルゴン。ギリシア神話に登場する頭部に生きている蛇が生えているというあの怪物。
英雄ペルセウスにより退治された、見ているものを石化できるという能力を持つ。
能力名称『邪眼』
「まさかこの子……」
「何? ねえ、翔どうしたの……答えてよ!!」
この中で解決できるのは僕しかいない。この子が仮にゴルゴンの力を持っているなら。もし伝説が本当なら......
『お困りのようだな、明津諒。俺のことを忘れたとは言わせんぞ』
『ナイス! ちょうどいいところに来てくれたオッサン!」
『おっさ……まあいい。とりあえず、神の力の対処には同じ神の力が必要とされる。だがしかし、日本外の神の場合は、対処できたりできなかったり。そいつより力が上ならばなんとかなる』
『なるほど、賭けか』
『それにこの会話は神と繫がりがある者には聞こえる可能性がある。聞こえるのはお前の言葉だけだがな』
『……分かった。やってみる。やり方は教えなくていい。僕自身で考えてする』
『ほう。成長したな、相棒』
『うっせぇよ』
ここからは運の勝負。吉と出るか凶とでるか。
脳をフル活動させ、解決策を作り出す。
「これじゃない。これじゃない。これじゃない。……あった」
「はあ? 何言ってるのよさっきから。独り言ばっかり……」
「やっぱりあなた、ゴルゴンの石化能力持ってますね? 遺伝? それとも……」
「石化? 何言ってんのあんた。こんな時にふざけてんじゃないわよ!」
「助けたければ聞け。心の乱れだけでは解決できん。常に冷静に。そして、迅速で適切な対応をしなければこの先人を助けることなどできんぞ」
「……なにアンタ。急に口調変えて......え?」
翔ばかりしか捉えていなかったその顔は、僕を見るなり戸惑っていた。
それはそうだろう。その時の僕は、いつもの姿じゃない。
薄花色の髪に黄色掛かった目、白かった制服は和服の準礼装に変わり、怪しい雰囲気を出していた。
「俺はスサノオの力を持ちし者。俺は一度死んでいる」
「一度死んでるってどういうことよ! それにあの明津とかいう男はどこよ!」
「ここにいるぞ。失礼だが、背中に手を置きさせてもらう」
「ここってどこ……もしかしてアンタなの!?」
背中に手を置きさせてもらう行為。これは、心臓に近いところが気の集まりが良いためにする事。犯罪に当たりかねない痴漢行為でもある。
「は? 何すんの……ひゃうんっ!?」
彼を助け出すための策。それは、邪眼を発動させた分の気を取り出し、諒が持つ神の力で抗体を作る。
邪というのは陰陽の説で言い換えると、陰になる。
それに対し、諒がもつ神の力「陽」を合成させ、それで翔の石化を治すのだが……
「あ、あんっ…… はぁ、はぁ、はぁ」
そうだった。気を勢いよく取り出すと、なんか凄い快感を得れるらしい。集中して気づいてなかったけど、なんか凄いことになってる……。必要な分は取れたからさっさと合わせて
「ねえ、もっとして? 今の結構……よかった」
はい?
「いや、必要な分は取れたんでもうしませんよ?」
「ん。分かった……」
残念そうに、ため息を漏らしている美羽を見て少し興奮してた自分がいた。
「……起きたね、翔くん。体は大丈夫?」
「ああ、それより一つ気になることがあるんだが……」
「うん。なにかな?」
「なんで俺、保健室にいるんだろう。教室で原稿見てたのに」
……どうやってごまかそうか。美羽さんは原稿再確認しとくねって言ってたし。
「あのー、翔くんが急に倒れたから保健室いるんだよ?」
「そうなのかー」
「なんで倒れたか分かる?」
「んー、美羽と目を合わせたときになんか意識が……」
「好きになったんだ。で、その興奮で倒れたと」
「ち、ちげーよ!!」
「あれ? なにその何か隠してそうな言い方は?」
「……まあ、生きててよかった。死んだら後がねえもんな。俺、まだしたいこといっぱいあるし」
「まずは文化祭だね」
「そうだな」
神様の力を持つ者として、人を助けることをしっかりしていきたいな。と思った一日であった。
大方 美羽。ゴルゴンの力を持つ人間。あの子の元の気の量だと、力を使うだけでも体は重くなったり症状があるだろう。それだけが心配だ。
これから始まる文化祭にむけ、裏方として、盛り上げていきたいな。
――その日の夜、とある廃墟となった教会にて
「おーい、リヴァイア。飯、持ってきているか~~?」
「何よアンタ。私の食べ物を横取りする気なの?」
赤い髪を持つ黄金に輝く瞳を持った男と青色に染められた髪を持ち、服から露出している体には所々に傷がある女が口論している。
「せっかく私が手に入れた獲物をアンタが食べる権利なんてどこにもないのよ、ベヒーモス。ったく……」
「そんなこと言わないでくれよ。マイハニー」
どこかのコンビニで買ったであろう物が入っているそのビニール袋には、ビールや唐揚げ等が入っていた。
「アンタ、ろくにバイトしてないでしょ。ボスから連絡あったからね。隠してもわかってるんだよ?」
「……あの野郎……」
「働かせてもらってる人にあの野郎とか何言ってんの? 日本で私たちの主を見つけないといけないんだから、それまでにちゃんと人間界に馴染まないといけないのよ?」
「分かってるって」
そう言い、ビールを一気飲みするベヒーモスは昔の事を思い出した。
かつてリヴァイアと共に神として世界の調和を保っていたこと。
そして、神の長から調和の役割を別の奴に変えられ、暇になってしまった事。
とりあえず、何処かに行って俺らと一緒にいてくれる奴でも探すか。と言った軽率な考えで来たところが日本だったという事。
「そういえば、8月ぐらいにに此処の近くで何かしてた奴いたなー。何か日本の神も一緒にいた気がするけど、気のせいだろ」
「何々、そんな奴いたんだ。私も見てみたかったな~……」
「……ひょっとしてあいつなら」
黒く染まった宵闇に視線を移し、そういえばここの近くの学校で文化祭があったなと思い馳せ、二人は話たりしながら夜を過ごした。